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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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62話 再びのハンサム

到着してまずしたことは、宿を取ることだ。

流石にベッドで寝たい。

そして宿を取った後は、買い物だ。

消耗品は勿論のこと、非常食を買い込んだ。

修たちの居た街と違う非常食が多々あったので、ポーラ先生がいちいち材料を聞いていた。

そして、いくつかの物はスルーしていた。

一体何の魔物の食材を使っていると言うのだろうか。

そしてポーラは、調味料も購入していた。

青空クッキングとはいえ、ポーラがちゃんと味付けはしてくれているのだ。

とてもありがたいことである。


その後はギルドに向かった。

折角この街まで来たのだから、サムハン達に会うのだ。

正直な話、カリアにだけは会いたくなかったが。


時間帯が良かったのだろう、少し待つだけで、サムハン達がギルドに現れた。

4人のリュックはぱんぱんに膨れ上がっている。

これは大量だろう。

修とポーラは、サムハン達が清算を終えたのを見計らって彼らに歩み寄った。


「・・・ん?シュウ君、ポーラ君!」


サムハンがいの一番に気付いた。

気配を察知していたわけでもないのに、修が挨拶をする前に気付かれてしまった。

流石ハンサムは格が違った。


「お久しぶりです」


修とポーラがサムハン達に挨拶をした。


「お久しぶりです!」


ポーラを見たシャラがパッと顔を明るくした。

何だか懐いているような気がする。

シャラの方が年上なのだが、師匠的な扱いになったのだろうか。


「シ・ュ・ウ・く・ん。お久しぶり」


カリアは相変わらずだった。

パッと見は男には見えない。

しかし、知っている修には、とてもではないがお近づきにはなれない。


「ひっ!?・・・お、お久しぶりです、カリアさん」


若干の恐怖を隠し切れぬ顔で、まるで親分を前にした三下の様に垂直に腰を曲げた。


「くふふふふふふふふ」


カリアは怪しい含み笑いをするだけだった。

修はカリアの視線を全身に感じ取り、恐怖に体を震わせた。


「久しぶりだな。また護衛か?」


ガザリー(27:♂)が渋い声で最後を締めくくった。

カリアの発生させていた恐ろしい雰囲気を締め出す雰囲気だ。

実に頼りになるおっさんだった。


修は安堵の息を吐いた。


「・・・いえ、今日は通りすがりです。温泉に行こうかなって思ってまして」


四人とも意外そうに目を丸くした。


「へぇ・・・。温泉かぁ」


サムハンがポツリと呟いた。


「気持ちいいらしいですね」


シャラが期待する声でサムハンに向かって言うと、


「余裕が出来たら、いつか俺達も行こうか」


サムハンは笑顔を浮かべて乗った。

実にハンサムなことである。


「はい!」


シャラは当然嬉しそうに笑い。


「良いわねぇ」


カリアも嬉しそうに微笑んだ。

一体どうするつもりなのだ。


「うむ・・・。また偶にはいいだろう」


ガザリーも渋く頷いた。

思わず着いて行きたくなるような兄貴っぽさだ。




立ち話もアレなので、場所を移した。

が、すぐに、シャラがポーラに頼み込んで、二人で訓練に向かった。

シャラはかなり成長したのだろう。

以前よりも自信にあふれている。

そしてきっと、今頃ポーラに凹まされているのだ。


頼れる兄貴、カザリーは二人の訓練の見学に行った。

万が一、怪我をしてしまった時の為の保険だろう。

カザリーは口には出さなかったが、そういうことだ。

実に頼れる。


そしてサムハンとカリア、修が話し合っていた。

カリアはサムハンの隣の席に座ってくれたので、修は心の底から安堵できた。


「もう21層か!」


サムハンが驚愕に眼を見開いて叫んだ。

カリアも感心した顔を浮かべている。


「入ったばかりですけどね」


修は照れ笑いを浮かべながら呟いたが、サムハンは首を横に振った。


「いや、それでも大したものだよ。・・・とんでもないペースだが、大丈夫かい?」


そして、顔に心配を滲ませて問いかけて来た。

やはりハンサムだ。


「そろそろ、ボスだとポーラが苦労するようになってきましたね・・・。ちょっとペースを緩めないと駄目かもしれないです」


修は正直に言った。

ポーラも、雑魚戦ならばまだ余裕があるのだが、ボスでは危うい場面が増えて来た。

この温泉旅行のもう一つの目的は、この旅の間に少しでもポーラを鍛えることである。

騒ぎが収まるのを待つ、温泉に入る、ポーラを鍛える。

修が考えたとは思えぬ、一石三鳥の作戦だ!


サムハンは、修が考えなしに進めているのではないと言うことを知って安堵した。


「うん。安全は大事だね」


そこで、黙って聞いていたカリアが口を開いた。


「・・・シュウ君はどうなのかしら?」


「ぶっちゃけまだまだ余裕だと思いますね」


修はぶっちゃけた。


「あらあらそれは・・・」


カリアが呆れた様な顔で呟いた。

『自信過剰なこと』と顔に書いてあったので、自信の根拠も合わせて言うことにする。


「ドラゴンも倒せましたしね。あれが78だったから、少なくともそこまでは・・・」


「・・・ちょっと待ってくれ」


カリアの呆れ顔が凍り、サムハンが片手を伸ばして修を静止した。


「はい?」


首を傾げる修に、サムハンは脂汗を流し始めながら問いかけて来た。

カリアもマジの眼で修を見つめて来ていた。


「ドラゴンとは、先日迷宮から出て来た、ドラゴンかい?」


「はい」


修があっさりと頷いた。


「・・・誰かが一人で倒したって話を聞いたんだけど・・・」


カリアが呻くように呟いたが、修はそれを拾ってあっさりと呟いた。


「あ、俺ですそれ」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」


二人とも黙ってしまった。


「・・・シュウ君」


サムハンがいち早く硬直から抜け出した。


「はい?」


修がドラゴンを倒したなら、とても気になることがあるのだ。


「その、少し前なのだがね。『黄金騎士』セイントさんが、ドラゴンを倒した人に会いに行くって言って、この街に立ち寄ったんだが・・・」


そう、オリハルコン一式に身を包んだ。

探索者の憧れの男だ。

サムハンも先日初めて見れて、興奮した。


「手合せしましたね」


憧れと友人が戦っていたらしい。

サムハンはそれだけで気が遠くなりそうだった。

ちなみにカリアはまだ帰ってきていない。


「ちなみに、結果は?」


流石に、セイントさんに勝てる訳はないだろうとは思う。

しかし、ドラゴンを倒したと考えるとどうなのだろうか。

サムハンは、セイントのレベルを知らないので、何とも言えなかった。


「勝ちましたね」


修は実にあっさりと言った。

「こうですよ、こう」と言って、虚空にデコピンをした。

何故か、空気が悲鳴のような音を立てた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シュウ君」


サムハンは立ち上がった。


「はい?」


修が驚いてサムハンを見る。


「ちょっと、訓練をお願いしても良いかな?」


サムハンの眼はマジだった。

カリアも慌てて立ち上がった。


「は?はぁ・・・大丈夫ですけど」


どうせポーラとも訓練しているのだ。

今から纏めてやればいいや、と考えた。



そこからポーラとシャラが訓練しているところに向かった。

シャラはポーラに軽くあしらわれていたようだ。

そこに修たち三人が合流する。


ポーラが手も足も出ないことが判明し、話し合った結果。

五対一になった。

修対その他である。


そして1分後。

5人全員が額を腫らして倒れていた。


「・・・・・・・・・・・なる、ほど・・・」


額が腫れていても、サムハンはハンサムだった。

むしろどことなく、可愛らしさが出ている。

一体どういう原理なのだろうか。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


シャラは、ポーラとの訓練で体力を使っていたためだろうか。

ばったりと倒れた後、ピクリとも反応していなかった。


「・・・・・・・・・・・むちゃ、くちゃ、ね・・・・」


カリアは姐さんオーラを維持していた。

流石は本職のお方だ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・むむぅ・・・・・」


ガザリーの額の腫れは、凄く痛々しく見えた。

何だか、歴戦の勇者が傷を負った時の雰囲気を感じる。

「ここは任せて先に行け!」とか言いそうな雰囲気を感じる。

額を腫らしているだけだが。


「・・・・・さ、流石です、シュウ様」


ポーラは随分慣れたもので、まだ余裕があった。

額を腫らして涙目だったが。




その日の晩、久々のベッドで二人は横になっていた。

ちなみにポーラさんも流石にエロ衣装は持ってきていなかったので、普通の裸だった。

ポーラの寝息を聞きながら、修は考えた。

最近、神が現れない。

もしかすると、殴られる気配を察知して、ほとぼりが冷めるまで現れないつもりではないだろうか。

修は念じた。

(神を殴りに行けますように)

そう念じたまま、寝た。

実に器用なことである。

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