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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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59話 ええ、何があったのか分かりませんでした(by一般人)

ジューリョーは十両です

20層は、10層とそっくりの魔物がボスだった。

一回り大きくなっているが、基本は変わらない。

そして相変わらず、円の中からこちらにくいくいと手招きしてきている。


「シュウ様、ここは私が」


ポーラさんがやる気満々だ。


「うん。頑張ってね」


ポーラがどひょ、円の中に入った。

そのまま線の前に立ち、両手の剣を抜くポーラ。

反則にはならないらしい。

ジューリョーは満足げに頷き、もう一本の線の前に立った。

そして深く腰を落として両手を下げた。


『はっけよーい』


神様の声が響いた。

ポーラはそれに疑問を抱いた様子を見せない。

集中した目で、ジューリョーを睨み据える。


『のこった!』


声と同時に、ジューリョーがぶちかましを仕掛けて来る。


「はっ!」


ポーラは正面から受ける愚を犯さなかった。

大砲の様に突進してくるジューリョーよりさらに早く動き、横に回避した。

すれ違いざまに両手の剣を叩き付けた。


ジューリョーの分厚い筋肉は、それを受け切った。

体型からは信じられぬほどに機敏な動きでポーラに向き直り、ガトリングの様に張り手を放った。


「くっ!」


広い場所であれば、ポーラも容易く回避していただろう。

しかし、円の中は狭かった。

かと言って、この攻撃を受けてもはじき出されるだろう。


「?!」


突如、ジューリョーの視界からポーラが消えた。

ポーラは、見事な柔軟性で一気に上体を伏して、思い切ってジューリョーの懐に飛び込んだのだ。


「やっ!!」


窮屈な体勢のまま、連続で剣を叩き込む。

そして、すれ違う様にしてバッ!と離れる。


そして再びにらみ合う。

じりじりと間合いを詰めて来るジューリョーに、追い込まれない様にポーラも動き回る。

すると、突然ジューリョーの顔が驚愕に見開かれた。


「・・・・?っ!!」


訝しげにジューリョーを見ていたポーラは、慌てて目を逸らした。

致し方あるまい。

ジューリョーのつけていたまわしが、ポーラの攻撃により断たれていたのだ。


『決まり手は、もろだし~』


神の暢気な声が響いた。

不浄負けじゃないか。

ポーラは見てはならぬ物を見てしまった苦痛に歪んでいる。

ジューリョーはがっくりと膝をつき、ダンダンと悔しそうに地面を叩いていた。

それより早く直せ。


悔しさを呑みこんだジューリョーが、男らしく立ち上がり、扉を指差した。

次の階層への扉が開かれた。


「きゃあああっ!!」


ポーラは叫んで円から飛び出し、修の胸に飛びついた。

だから隠せと言うのに。

経験人数一人のポーラは、まだまだ乙女だった。

パオーンが揺れていた。


「・・・・・」


修は胸に顔を埋めるポーラの頭をよしよししながら、扉を潜った。

ジューリョーは最後まで直さなかった。

ポーラもジューリョーが見えなくなるまで、修に顔を押し付けたままだった。

修は、神に4発目を叩き込む覚悟を決めた。


ポーラが精神的ショックを受けてしまったので、迷宮から帰った。


忌々しい記憶を消す為か、この夜のポーラはとっても激しかったと述懐しておく。




清算していると、受付に話しかけられた。


「あの、シュウさん。あちらの方がお呼びです・・・」


「は?」


修は受付に指示された方向を見た。

壁にもたれ掛かった男が居た。

全身金色だった。

髪も髭も伸びまくり、金キラに輝いている。

鎧も一式、金色だ。

ゴールドセ○ントと言う単語が、修の頭の中をよぎった。


「・・・・・・・・・・」


修が見つめると、金キラが近づいて来た。


「初めまして、シュウです」


修は取りあえず挨拶をした。

すると、金キラも頭を下げて来た。


「お初にお目にかかる。某セイントと申す」


色々と大丈夫なのだろうか。

今まで気配を断っていたようで、金キラなのに人に気付かれていなかったようだ。

セイントが名乗ると、ギルドがざわめいた。


「『黄金騎士』だ」


そんな言葉が聞こえて来る。

有名人なのだろうか。


「貴君がドラゴンを倒したのだそうだな」


セイントが修の全身を興味深く眺めながら聞いて来た。


「はい」


修は当然の如く頷いた。

すると、セイントは修の目を見て好戦的に笑った。


「ふーむ。一手、手合せ願えぬか?」


こういう手合いは久しぶりだ。

修は傷心中のポーラを見たが、ポーラは頷いて来たので時間はあると判断した。


「は?・・・良いですけど」


頷いた。




どこで戦おうかと話していると、ファウスの使いが走って来た。

騎士団の訓練所を借りれるようだ。


「おお・・・」


訓練所には、人が沢山いた。

騎士団員は当然のこととして、ファウスやマテナ、カマンまで居る。

探索者も沢山いるし、見るからに民間人も沢山いた。

娯楽に飢えているのだろうか。


「オリハルコンじゃねーか・・・」「マジの『黄金騎士』かよ」


そんな声が聞こえて来る。

有名なのだろうか。


----------------------------


LV.67

セイント

獣人:♂

48


剣士LV.71


『探索者』


----------------------------


鑑定してみたが、確かにレベルは高い。

恐らくライオンの獣人だろう。

冷静に見ると、髪と髭がたてがみっぽい。

しかしオリハルコン一式は、眩しくて目に悪い。


「手加減は無用ぞ!では参る!」


セイントがオリハルコンの剣を抜き、叫んだ。

そう言われたので、修は無造作に近づいた。

観客には、修が消えたようにしか見えなかった。


「えい」


そしてデコピンした。

ボゴンッ!と音が鳴り、オリハルコンの額当てが凹んだ。


「ぐっはあああああああああああああああ!!!!」


セイントはその衝撃で、ごろごろと転がって行った。

8回転ぐらいして停止したが、立ち上がって来ることは無かった。


「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」


ギャラリーの皆さんは、一瞬前まで修の立っていた場所を見て、次にセイントが立っていた場所を見た。

最後に、倒れ伏すセイントを見た。

我に返った騎士団員が、慌てて介抱に走った。


指の形に凹んだオリハルコンを見て、蒼白になっていた。

セイントの息があることを確認して、次に容態を見た。

気絶しているだけだった。

が、しばらく目は覚まさないだろう。

騎士団員は、頭の上で大きく手をバッテンにした。

担架が走って来た。


「・・・あれぇ?」


そんな中、修は首を傾げていた。

思ったより弱かった。


「シュウ様!」


ポーラが修に駆けよった。

とっても嬉しそうな顔だった。


「「「えええええええええええええええええええええええええええ」」」


ギャラリーの叫びが爆発した。

突然の大合唱に、修はビクリと体を震わせた。

ポーラの受難が続きますね

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