58話 神様逃げて
この時間、私はもう寝ているでしょう
19層を、修は一人で歩いていた。
流石のポーラも、この階層に来ることだけは頑として拒否した。
致し方あるまい。
後で知ったが、ハイドワームは女性のご不浄に興奮するとびっきりの変態紳士だった。
修は、ポーラを宥めるのにどれだけ時間が必要だったかを考え、一人決意した。
次に会ったら、神をぶん殴ると。
象さんがついているため、ハイドワームの守備範囲外の修は、ハイドワームに遭遇することは全く無かった。
注意深く地面の下に意識を伸ばすと、確かに魔物の気配を感じる。
恐らく、あの変態紳士共が潜んでいるのだ。
しかし、動く様子は全く見せない。
敵意も見せないし、気配を隠すのが異常に上手い。
これは気付けないだろう。
「あれ?」
そして歩いていると、宝箱を発見した。
罠だろうか。
「・・・・・・」
修は宝箱に近づいた。
コンコンと叩いても、やはりわからない。
掴み上げて振ってみても、箱の重量しか感じない。
一体どういう仕組みなのだろうか。
罠ならぶっ潰せばいいや。
脳筋的思考回路で、修は宝箱を開いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
宝箱だった。
宝箱だったのだが。
『衝撃のシルクパンツ』
どういうことだろうか。
修は一度天井を向き、ふー、っと一度ため息を吐いた。
そしてもう一度見た。
『衝撃のシルクパンツ』
夢では無かった。
一体全体どういうことだろうか。
シルクパンツ。
ここまではまだいいだろう。
シルクのパンツを穿いて、迷宮で倒れてしまった女性の品だろう。
衝撃って何だ。
女性用パンツで何の衝撃だというのだ。
いや、確かにこのパンツの存在に衝撃を受けたが。
修は取りあえず、神へは二発拳を叩き込むことを決めた。
シルクパンツが汚れていないかを慎重に慎重に調べ、綺麗であることを確認してからようやくリュックに詰め込んだ。
流石に染み付きならば持って帰らなかった。
修は変態紳士ではないのだ。
帰って、売ろう。
そう心に決めた。
扉を発見した。
しかし、ボスは居なかった。
修は瞑想した。
意識を地の底に潜らせる。
奥に奥に潜らせる。
すると、居た。50Mは地下だろう。
そんなところに魔物の気配を感じた。
まさか女性のご不浄を行わなければ出てこないのだろうか。
男性だけのPTなら詰みそうだ。
「ぬんっ!!」
修は地面を殴った。
三度、必殺技の発動だ。
ベレブロビラヘ□ンテパンチの効果で、地下50Mに居た変態紳士は地上に打ち上げられた。
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LV.19
ボス・ハイドワーム
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やはり居た。
そして、やはりド級の変態だった。
頭に、女性用下着を被っていた。
「セェェェイッ!!!」
もはや天井に叩き付けられて息絶えるだけの哀れな変態紳士に、修は拳をお見舞いした。
後には、女性用下着×5が残った。
ポーラが処分するわけだった。
修はそれらを放置した。
20層に足を踏み入れて、修は帰宅した。
「終わったよ、ポーラ」
ようやく落ち着てくれたポーラに、修が報告した。
「お疲れ様です。・・・申し訳ございません」
ポーラは心底安堵した様子だった。
ボスのことなど、要らぬことは言わない方が良いだろう。
「いや、ポーラは来なくて良かったよ・・・」
ポーラがもしあれを見たら、また正気に戻させるのに時間が必要になるだろう。
修はそう判断した。
「・・・そうですか」
どこか遠い目をする修に、ポーラは頷いた。
何かがあったことは理解したのだろうが、ポーラも余計な質問はしてこなかった。
「ところで、これ何か分かる?『衝撃のシルクパンツ』っていうんだけど」
修は、『衝撃のシルクパンツ』を取り出した。
「・・・・・・・売りましょう」
ポーラの眼が初めは驚愕に見開かれた。
その後は、なぜか微笑んだ。
「うん。それは良いんだけどね。どういう効果かなって」
修がポーラ先生に効果を聞いたが、ポーラは微笑みを深めて首を振った。
「売りましょう」
微笑みの裏に般若が見える。
修は恐れ戦いた。
「・・・はい」
『衝撃のシルクパンツ』は、ポーラに奪われて売られた。
修の同行は許されなかった。
とても高く売れたらしいことだけは分かった。
この世には、知ってはならないことがある。
修はまた一つ賢くなった。
ポーラと共に20層に入った。
「ここからはまた新たなトラップがあります。魔物が出現するそうです」
ポーラ先生の一言を聞いた後、20層を歩いていた。
20層には魔物は居なかった。
代わりに、そこかしこに宝箱があった。
これはどうみても。
「罠だよね・・・」
修が呟いた。
「恐らく・・・」
ポーラも頷いた。
20層は、ミミックルームだった。
戦わずして、奥まで行けるだろう。
しかし、逆に本物の宝箱もあるかもしれない。
そう考えた修は、片っ端から開けた。
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LV.20
トラップゴースト
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案の定だった。
「セイッ!」
修はグーパンを叩き込んだ。
目につく箱は全て開けたが、結局、本物の宝箱は無かった。
そして意外なことに、トラップゴーストはポーラと相性が良かった。
「むっ・・・」
と言うか、ポーラの攻撃が全然効いていなかった。
ダマスカスソードでは半透明な体を素通りするが、多少効いている様だ。
ドラゴンの剣でも同じく素通りしたが、こちらの方がダメージは与えられていそうだった。
ドラゴンスゲー。
ポーラもトラップゴーストの攻撃は全て回避していたが、非常に時間がかかる。
結局修がグーパンで仕留めた。
「・・・バングルの効果でしょうね」
ポーラがバングルを撫でながら呟いていた。
魔よけ的な効果の結果だろう。
普通の人は大変だ。
代わりに、トラップゴーストは魔法に滅茶苦茶弱かった。
それはもう可哀想なくらいに弱かった。
シュート系でも、どれか一発当てれば死んでいた。
一長一短である。
そしてボスを発見した。
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LV.20
ジューリョー
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修は、神への三発目を決意した。
フルコンボだドン!
朝起きた時から、ようやく平常運転が再開しますね。
あー眠い眠い




