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その拳にご注意を  作者: ろうろう
59/136

57話 紳士

限界にチャレンジ

ポーラの言った通りだった。

グラスパンダサンは、体をいくら傷つけても倒れはしなかったが、サングラスを叩き割ると即死した。

何と儚い生き物なのだろうか。

しかし、顔の防御はしっかりしている。

普通ならば倒すことは難しい、のかも知れない。


「はぁっ!!」


しかし、ポーラは二刀流である。

二本の剣で延々と顔面狙い。

グラスパンダサンは防御で手一杯で、反撃する余裕も無い。

そうするうちに、段々とガードを掻い潜ったポーラの剣がグラスパンダサンのサングラスを叩き割る。

ここもまだまだ余裕はあるだろう。


攻略法が分かれば最早敵ではない。

実にあっさりと、ボスまで到着した。


----------------------------


LV.18

ボス・グラスパンダサン


----------------------------


「ほぉ・・・」


ボス・グラスパンダサンは、サイズは今までのグラスパンダサンと変わりはしなかった。

しかし、鋭角なサングラスをかけていた。

とってもファンキーである。

それだけでもない。

何と、武器を持っていた。

竹槍を。

止めに、竹槍の端っこをガジガジと齧っていた。

武器ではなく、食料なのだろうか。


「では、行ってきます」


ポーラが、お食事中のグラスパンダサンに駆けた。

グラスパンダサンもポーラに気付き、食事の手を取りやめた。

そして、竹槍を構える。

やはり武器だったようだ。

喰ってたが。


短くなっているとはいえ、リーチはまだグラスパンダサンに優位がある。

実に鋭く、ポーラに向けて突きを放った。


「ふっ!」


ポーラは、左手のダマスカスソードで竹槍を真上に弾いた。

そして肉薄する。

グラスパンダサンの眼がキラリと輝いた。

いや、見えなかったが、そう感じた。

グラスパンダサンは、弾き飛ばされた竹槍を、その勢いを維持したまま器用に回転させて、真下から掬い上げる様にして、石突をポーラに叩き込んだ。

ちょっと齧りすぎてギザギザになっている、危険な石突だ。


「くっ!」


ポーラは右手の剣で、石突を受け止めた。

しかしかなりの力があったのだろう。

受け止めたポーラは、上に飛ばされた。

浮いたポーラに、グラスパンダサンが今度こそ先端を向けた。

怒涛の勢いで突きを連発する。

戦上手ではないか。


「わっ!このっ!」


ポーラは空中で両手の剣を振り回して迎え撃つ。

しかし、体勢が不十分なこともあり、いくつかの攻撃がポーラにぶつかった。

鎧が鎧である。

何故か火花が散っていたが、ポーラにはダメージは無い。

しかしぶつかるたびに体勢を崩してしまう。


何とか着地したポーラは、しかし、大きく体勢を崩していた。

そのポーラの顔にめがけて、グラスパンダサンは渾身の突きを見舞った。


「っ!!」


ポーラはクソ度胸を持っていた。

集中に集中を重ねて、額で竹槍を迎え撃った。

やはり、ドラゴンの素材で出来ているためか、額当てで竹槍を受け止めることが出来た。


「~~~~~~~っ!!」


ポーラは首に力を込めて迎え撃ったが、勢いに飛ばされて後ろに飛ぶ。

一方のグラスパンダサンも、流石に渾身の一撃を受けられて体勢を崩していた。


ポーラが着地した。

歯を食いしばったまま、グラスパンダサンに斬りかかる。

ちょっと涙目だった。

やはり、痛い物は痛いのだろう。


ポーラは、受け止めることはせず、剣で受け流すことにしたようだ。

しっかりと反省している。

体重を込めた剣戟の数合で竹槍を粉砕し、後は一方的だった。


「やりましたっ!」


苦戦した分、倒した後にはほっと溜息を吐いていた。

やはり、ボスは強いのだろう。

ポーラでも油断は禁物だ。

修がポーラに歩み寄った。


「お疲れ様。頭見せて」


ポーラが額当てを外すと、赤く腫れていた。


「・・・すいません。お願いします」


修は回復魔法をかけてやった。

ちなみに、修のデコピンよりは腫れていなかった。

幾つか攻撃を喰らった胴体部は、大丈夫な様だ。

直撃は無く、カス当たりばっかりだったのが幸いだったのだろう。

それも、ポーラの実力と言うべきだろうが。




そのまま19層に向かった。

19層も、普通の迷宮だった。

しかし、ここは不思議だった。


全く魔物と遭遇しない。

ポーラも鼻を鳴らしているが、見当たらないようだ。

スムーズに進むのは良いことだろう。

しかし、とても不思議だ。


「・・・なんだろうね?」


修は歩きながら、ポーラに話しかけた。


「分かりませんね・・・」


ポーラも不思議そうに首を傾げていた。



しばし歩いていると、突然ポーラが声をあげた。


「・・・あ」


修がポーラを見た。


「ん?」


何か発見したのだろうか。

修には気配は察知できていないが。


「ちょっと・・・・すいません」


ポーラがもじもじしている。

修は頷いた。

お花摘みだ。


迷宮には当然トイレなどない。

用を足すには、当然迷宮の中でするしかない。

おっきい方は流石にそうは無いが、小さい方は迷宮の隅でするのが基本だ。


ここで面白いのが、迷宮の魔物は紳士であるということだ。

戦闘中に用を足す馬鹿は居ないが、用を足している時に魔物は現れないのだ。

当然注意は払うが、何故かそういうことらしい。

ポーラはそそくさと修の視界から消えた。




「・・・ふぅ」


ポーラが安堵の息を吐いた。

迷宮で用を足しても、何故かすぐに跡は消える。

消えなければどえらいことになっているだろうが。


すっきりしたポーラが立ち上がろうとした。

そこで、ふと何かの気配を感じた。


「・・・・・・・・・・・・?」


ポーラは足元を見た。

さっきまでご不浄をなさっていた所を。

まだ湿ったそこに、何かが居た。

地面から、目がついている、ミミズっぽい何かが飛び出している。

それは何故か、湿った地面に体を擦りつけていた。


「・・・・・・・・・」


ポーラは頭の中が真っ白になった。

ポーラとそれの目があった。

それは、「おおっと、これはお恥ずかしいところを見せちまったな!」と言わんばかりに、ポーラにウィンクした。


ポーラの悲鳴が迷宮に響いた。




「ポーラ?!」


一瞬後に、修が姿を現した。

半分穿きかけのポーラが涙目で狂乱していた。

その足元に居る物を、修は見つけた。

今まで全く気配を感じなかった。

実に恐ろしいスニーキングスキルである


----------------------------


LV.19

ハイドワーム


----------------------------


魔物だった。

ハイドワームは、「おおっといけねぇ!」と言わんばかりの眼をした後、地面の中に消えた。


「こ、ころっ!!殺っ!!殺すっ!!殺すぅぅぅぅぅ!!!」


ポーラがバーサクにかかってしまった。

あられもない恰好のまま、涙目で剣を振りかぶっている。

いいからズボンも履きなさい。


「ぬんっ!!」


修が地面を叩いた。

気配は今覚えた。

必殺のベレブロビ□ヘレンテパンチを地面にお見舞いした。

きっかり三秒後、地面からハイドワームが打ち上げられた。


「くたばれえええええええええええええええええ!!!!」


ポーラは吹き飛び、絶命寸前のハイドワームに襲い掛かった。


悪は滅びた。

ドロップアイテムもポーラに処分されたので、何だったかは分からない。


結論。

迷宮には紳士と、変態紳士が居る。

明日からはペース落とします。

流石にマジです。

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