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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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54話 季節感がおかしい

ボス・バーサクラッコが駆けて来た。


「行きます!」


ポーラも一言叫んで迎え撃ちにかかった。

バーサクラッコがシャコ貝を持ち上げ、ポーラに殴りかかる。


「はっ!」


シャコ貝如き何のその。

石と同じく、ポーラはシャコ貝を叩き割った。

罪のないシャコ貝は、哀れにもでろりと中身をぶちまけた。

しかし、バーサクラッコは怯まなかった。

なんと、溢れ出たシャコガイの中身に食いついたのだ。

じゅるりと音を鳴らして丸呑みにする。


「・・・・・・」


さしものポーラも、呆気にとられてそれを見た。

当然、修も呆然と見つめている。

二人の視線の前で、バーサクラッコは恍惚とした顔を浮かべた。

と、思いきや、突然眼と口をカッと開いた。

「キターッ!!」と言う幻聴が、確かに修には聞こえた。


益々血走った眼で、バーサクラッコがポーラを見る。

俊敏に脇のポケットから石を取り出し、ポーラに殴り掛かった。

隙が無い!


「せっ!」


ポーラは石を砕いた。

ついでに、首筋に数発叩き込む。


「?!」


石を失ってもなお、バーサクラッコは構わずに殴り掛かってきた。

握られた拳も、中々に威力がありそうだ。

しかし、ポーラはひらりと身をかわす。

バーサクラッコの拳が、ぶぉん!と空を切る。


「ふっ!!」


ポーラは気を取り直して、反撃した。

バーサクラッコは殴られながらでも襲い掛かってくるので、攻め切ることはしない。

適度な間合いを保ってザクザクと攻める。

やがてバーサクラッコは息絶えた。


「やりました!」


ポーラが貝をリュックにしまってから修の元に駆けて来た。


「お疲れ様」


修は尻尾を振るポーラを撫でてやりながら、決して貝は食べないことを心に決めた。




そのまま次の階層に来た。

17層は、途轍もなく広かった。


「・・・広いね」


ポーラも迷宮の大きさに目を丸くしていた。


「そうですね・・・」


いきなりここまで大きくなるとは。

もしかすると、魔物も巨大なのではないだろうか。


「大きな魔物が出たりするのかな?」


ポーラ先生に聞いてみた。


「はい。恐らくですが・・・」


流石ポーラ先生は物知りだった。

修が知らなすぎるだけであるが。


歩いてみたが、何処も広い。

そして、遂に魔物と遭遇した。

やはり、とても大きな魔物だった。

素で3Mはあるだろう。


----------------------------


LV.17

アクィナス


----------------------------


それはまるで馬の様だった。

そして全身が紫だった。

顔も無い。

手足が細く、まるで割り箸が突き刺さっているかのように見える。

まごう事なき、茄子だった。


アクィナス⇒アキナス⇒秋茄子

そんな思考が修の頭に流れた。

いくらなんでも、神は遊び過ぎである。

しかも、お盆じゃねぇのかよ。




「ふんっ!!」


神への突っ込みを拳に乗せ、修は唐突に地面を叩いた。

迷宮が悲鳴をあげた気がするが、気のせいだろう。


「な、何を?」


修の突然の奇行に、ポーラも若干引き気味だ。

アクィナスも修たちに気付いて、棒のような手足をシャカシャカ動かして接近して来た。


「・・来ます!」


修が動かないことで、ポーラは困ってしまった。

いつも一匹目は修が抹殺していたので、今回もそうだと思っていたのだ。

しかし修は動かない。

ポーラが迎え撃とうとしたところで。


突然、アクィナスが真下から突き上げられたかのように跳んだ。

遥か彼方の天井に激突し、消滅した。


「・・・・は?」


ポーラは何が起きたのか理解できなかった。


修の必殺技の一つだ。

これも友人が教えてくれた。

地面を殴り、三秒後に敵は吹き飛ぶのだ。

原理は良く分からないが、修には出来た。

友人はドン引きしていた。

これぞまさしく、真・ベレブ□ビラヘレンテパンチ。

友人が、「実は三秒後に相手を蹴るだけなんだ」とネタばらしをする直前、コンクリを空高くに打ち上げた技だ。


「ふぅ・・・」


久々に使った必殺技により憂さを晴らした修は、立ち上がった。

そしてそれにより、修が何かを行ったことをポーラは理解した。


「す、素敵です!シュウ様!!」


『シュウ様素敵ですポイント』がまた上がってしまった。

もうそろそろ天元突破しているだろう。


落としたアイテムも、紫だった。

『茄子』

修はまたイラっとした。




二体目と遭遇した。


「ファイアランス!!」


とても香ばしい匂いがした。

醤油を垂らしたくなる匂いだった。

今晩の夕食は決まりだ。




三体目は、ポーラの出番だ。


「行きます!」


ポーラは果敢に巨体に突進する。

アクィナスは突進しかできないようだ。

むしろそれ以外をしてきたらビビる。

しかし、意外にも早い。

さしものポーラでも、これを正面から叩き返すことはしないようだ。

突進をひらりと回避し、避け様に棒の様な前足に剣を叩き付ける。


「せいっ!!」


ガギィッ!と鈍い音が鳴った。

ちゃんと固いらしい。

修は少し安心した。

突進を避けられたアクィナスは、機敏な動きでポーラに向き直る。

どうやって機敏に動いたかは、見ていた修にも説明が出来ない程に複雑な動きだった。

ただ一つ言えることは、アクィナスに関節はない。

とにかく不思議な動きだった。


しかし、突進しかできないのではどうしようもない。

時々速度を緩めたりしてフェイントを挟んでいるが、今のポーラは実に落ち着いて回避している。


「やっ!」


そして遂に、アクィナスの足が折れた。

茄子なのに何故か、ずしん!と重々しい音を鳴らして、アクィナスは地に倒れた。

あとはもう言わずとも分かる、ポーラさん劇場の始まりだった。

ひたすら事務的に、ガンガンと二本の剣をアクィナスの胴体に叩き付けていた。

茄子のたたきが出来てしまう。

修がそう心配している間にも、アクィナスは死んだ。


「やりました!」


ポーラが茄子を持って駆け寄って来る。


そこからも探索を進めた。

広いが、魔物自体は少なかった。

アクィナスはボスまでちょろかったので、省く。

今夜は茄子パーティーだ!

必殺技は、某ラッコが主人公の漫画のアライグマ的な生き物が使う必殺技です。

ぼ○ぼ○

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