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その拳にご注意を  作者: ろうろう
54/136

52話 開眼

無理っていったでしょう(逆切れ

15層では、ポーラにバーサクがかかってしまう。

修の精神衛生上、非常によろしくないので、この階層も急ぐことにする。


「・・・・・」


また一体のシャークヘッズが、鮫のたたきにされてしまった。

無言で剣を振り下ろし続けるポーラさんがとても怖い。


そしてボスを発見した。

----------------------------


LV.15

ボス・シャークヘッズ


水魔法Lv.9


----------------------------


「あら」


修は目を見張った。

今までのボスとは違う。

サイズが変わっていない。

しかし、代わりとばかりに、両手の子鮫だけが大きくなっている。

非常にアンバランスだ。

あの腕で支えることが出来るのだろうか。

思わずそんな心配をしてしまう。


「行きます!」


修の心配をよそに、ポーラが駆け出した。

やはりバーサクがかけられているのだろうか。

シャークヘッズも、6個の瞳をポーラに向けた。

右手の口からアクアシュートが放たれた。


「お」


修が感嘆した。

今までは一番大きな口からしか出していないかったのに。


「っ!」


しかし、ポーラは「邪魔だ」と言わんばかりに、盾であっさり殴り飛ばした。

ミラードラゴンの盾とは違って跳ね返せはしなかったが、その場で水になった。

この程度の魔法ならば問題ない。

それを見たシャークヘッズは、両足で地面を蹴った。

そしてポーラに向けて泳いでくる。


大きな口を三つも開いての突進は、中々に迫力があった。


「っく!!」


迫力だけでも無かった。

叩き落そうとしたポーラが悔しげに呻き、回避した。

二つの頭までは抑え込んでいたが、三つめの突撃までは叩き落せなかったのだ。

あの二の腕でしっかり支えれているらしい。

しかし、落せなかったとはいえ何度も剣でぶん殴られているのだ。

かなりのダメージを与えているだろう。


ポーラはシャークヘッズを飛ばせない様に、接近して近づく頭を攻撃し続けた。

危うくなりかければ離脱する。

完璧だった。


シャークヘッズは段々と弱って行く。

苦しげに呻くシャークヘッズは、同時に三つの口をポーラに向けた。


「っ?!」


次の瞬間、三つの口からアクアシュートが飛んで来た。

魔法の三連打だ。

流石に修も目を剥いた。

ポーラも一瞬驚いたが、二発は盾で、最後の一撃は間に合わぬと悟るや否や、剣で弾き返した。


シャークヘッズはそれを狙っていたのかもしれない。

大きく開けた口が、ポーラの持つ剣をガブリと噛んだ。


「っ!?」


剣が傷つくことは無いが、がっちりと歯を喰い込ませてポーラが振れぬように抑え込む。

そして、残った二つの頭でポーラに齧りつこうとした。

ポーラの判断は早かった。


あっさりと、剣を手放した。

そして噛みつきを回避するためか、シャークヘッズに盾をぶん投げ、腰から鞘を抜いた。

ドラゴンの素材でできた鞘を。


「やっ!」


そして、剣を齧っている頭をぶん殴った。

ベゴン!と良い音が鳴り、ぐらぐらと頭が揺れた。

その拍子に剣を取り落とす。

ポーラは、剣が地面に落ちるよりも早くに滑り込み、掴んだ。

更にはそのまま斬りあげる。

次いでとばかりに、鞘でもう一発ぶん殴っていた。


ポーラは何かに開眼したのだろうか。

盾を捨てたまま、剣と鞘の二刀流で戦い始めた。

超攻撃的だ。

ガンゴンと痛そうな音を響かせ、シャークヘッズをのしていく。

やがてボス・シャークヘッズは死んだ。


ポーラは、鮫肌を回収した後に盾を拾っていた。


「やりましたっ!!」


駆け寄ってきたポーラは、いつも以上に輝く笑顔を浮かべていた。


「お疲れ様。・・・盾、要る?」


修はポーラに聞いてみた。

先ほどの戦いは、とっても様になっていたのだ。


「・・・・・・暫く無しでもよいでしょうか?」


ポーラも自覚はあったのだろう。

買ったばかりのミスリルの盾は、哀れにも鮫肌と一緒にリュックに押し込められた。




16層に到着した後、再び15層に向かった。

ポーラのたっての願いだった。

開眼元になったシャークヘッズで試したいらしい。

狂戦士ポーラはまだまだ終わらない。


「・・・・・・・・・」


修の見つめる前で、ポーラは実に楽しそうに剣と鞘をぶん回していた。

盾も上手に使っていたが、こっちの方が様になっているのかもしれない。


「こちらの方が良いかもしれません!」


ポーラもやる気満々になって来ていた。


「・・・剣、二本使う?」


修はポーラに聞いてみた。

流石に鞘は持ちにくそうなのだ。

しかし、これにポーラは申し訳なさそうな顔をした。


「あまり重いのは・・・あ」


言いかけて途中で気付いた。

長物二本は重量的に厳しいが、とても軽いのがあった。

軽快のダマスカスソード。

売っていなくてよかった。

修とポーラは自宅に向かった。




盾を持たず、腰に鞘を二つぶら下げたポーラが暴れていた。

哀れな被害者は、やはりシャークヘッズだ。


「・・・・・・・・」


もう「うわぁ・・・」としか言えないような光景が広がっていた。

ポーラは、右手にドラゴンの剣を持ち、左手にダマスカスソードを持っていた。

ポーラが良い笑顔で、その二本の剣を振り回していた。


とはいっても、問題はある。

軽快のダマスカスソードでは魔法はどうしようもできないのだ。

通常時であれば、右手の剣で如何にかすれば良い。

が、緊急時に、咄嗟に左手を振ってしまうかもしれない。

胴体に魔法が当たれば跳ね返すだろうが、顔に当たったら流石にダメージを喰らってしまうだろう。


ポーラはその対策のために、15層に来ているのだ。

シャークヘッズに恨みがあるからでは、決してない。とは言い切れない。


アクアシュートが飛んでくる。


「っ!」


ポーラはダマスカスソードを握った左手の甲で、アクアシュートをぶん殴る。

何度も何度も反復していた。

そしてその数だけ、シャークヘッズが犠牲になった。


これは数日は通うだろうな。

修はそう思った。


ちなみに、ポーラに新しいスキルが着いていた。


----------------------------


LV.32

ポーラ

獣人:♀

17


剣士LV.35

二刀剣士LV.2


『探索者』

『○○○』


----------------------------


二刀流は別枠らしい。

しかし、LV.2なのだろうか。

その割には動きが良い気がするが。


『・・・・そちらは左手分ですよ』


どこかから神の声が聞こえて来た。

見ていたのか。

しかしいい働きだった。

修は虚空に頭を下げた。


『どういたしまして。では・・・』


神の声が聞こえなくなった。

そして突然礼をした修にポーラが不思議そうな顔を向けていた。

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