49話 とても怖かった(by修)
頭と両手が鮫の男。
久々に見たシャークヘッズに、ポーラがめらめらと闘志を燃やした。
「シュウ様、ここは私が!」
修はその熱意に押された。
「はい・・・」
しかも何故か敬語だった。
仕方あるまい。
今のポーラはどこか怖いんだもの。
修は一人、心の中でそう言い訳をした。
シャークヘッズは、ポーラにとってはある意味因縁の相手である。
当時は、シャークヘッズの動きが全く見えなかった。
しかし今ならば。
今ならばヤれる!!
そんな殺意を燃やすポーラに、シャークヘッズも気付いて少し後ずさりした。
しかし殺意の波動に目覚めたポーラがじりじりと獲物を追い込むかのように間合いを詰めると、シャークヘッズも観念したかのように構えた。
シャークヘッズの一番大きな口が開き、中から特大な水の塊が飛んだ。
アクアシュートだ。
「っ!」
しかしポーラは盾を構えて突進した。
この盾があるのだから、魔法など怖くは無い。
水球が盾にぶつかり、明後日の方向に飛んで行った。
シャークヘッズは驚愕した様だ。
その隙に肉薄したポーラが剣を叩き込んだ。
「せいっ!!」
あ、うつった。
修はこっそりそう思った。
ポーラの気合と共に、三連続の剣戟が叩き込まれる。
全部顔面狙い。
しかも目狙いだった。
ポーラさんマジ恐ろしい。
鼻っ面と両目に剣を叩き込まれたシャークヘッズは、苦しげに後ずさった。
ポーラは更に攻撃を仕掛けようとする。
そこに、両手の子鮫が襲い掛かって来た。
頭とは別の意思を持っているのか知れない。
「せいっ!!」
ポーラはまた叫んだ。
両手を剣で叩き落し、更に余分に一発首筋に叩き込む。
まったく容赦していない。
しかも顔もマジだ。
美人のマジな顔は本当に怖い。
修はそんなことを考えていた。
頭と両手で必死にポーラを攻撃しようとするシャークヘッズに、ポーラは悉く剣を叩き込んで抑え込む。
後ずさっても間合いを詰める。
鬼の様な猛攻だった。
シャークヘッズは苦し紛れに、顔面を斬られながらも口を大きく開けた。
そして、口からアクアシュートを放とうとした。
「はっ!!」
そこにポーラが盾を叩き込んだ。
魔法を跳ね返す盾を、発射直後に。
アクアシュートは、口から放たれることなくシャークヘッズの体内に放たれた。
ぼこんっ!とシャークヘッズの体が膨れた。
「うわぁ・・・・」
膨らんだシャークヘッズが動きを止めた。
修が思わず目を背けた。
「はっ!!」
ポーラはそれでも攻撃の手を緩めなかった。
親の仇を目にしたかのようである。
膨らんだシャークヘッズの胴体に剣を突き刺した。
剣は、シャークヘッズを貫通した。
血は出なかったが、代わりにぴゅー、と水が吹き出した。
アクアシュート分だろう。
「・・・水漏れ」
どこかシュールな光景だった。
シャークヘッズはがくりと力尽きた。
後には鮫肌が残される。
「シュウ様っ!!やりましたっ!!」
先ほどまでとは同一人物とは思えぬ可愛らしい顔で、ポーラが駆け寄ってきた。
「・・・お疲れ様」
修は若干引きながらも、ポーラの頭を撫でてやった。
ポーラは尻尾をぱたぱた鳴らして喜んだ。
修は、何の気なしにその尻尾を掴んだ。
「ひゃんっ!!」
ポーラが可愛らしく鳴いて跳ねた。
「わっ、ごめん!」
痛かったのだろうか。
修は慌てて尻尾を離して謝った。
ポーラは掴まれた尻尾を押さえ、もじもじとした後、ちらりと上目遣いで修を見つめた。
「・・・シュウ様、大胆です・・・」
ポッ、と頬を染めてボソリと呟いた。
尻尾を掴むことに、一体どう意味があったのだろうか。
修は後で聞くことを心に決め、先に進んだ。
そこからも、ポーラは戦い続けた。
修は止めることもできず、狂戦士の如く勢いで戦い続けた。
一度ポーラが接近してしまえば、シャークヘッズは何もできずに果てる。
しかし、ある一体のシャークヘッズは、ポーラに接近される前に、跳んだ。
修に見せた時の様に、まるで空中を泳ぐようにしてポーラに迫る。
三つの口を大きく開き、どの口が本命かを悟られぬようにして突撃してくる。
「せぇあああああっ!!!」
ポーラが大きく叫んだ。
まず両手の鮫を叩き落し、頭頂部の鮫に唐竹割を叩き込む。
それも、3度も。
一息に、5連続の剣戟だ。
分からなければ、全部止めればいいのだ。
全ての攻撃を叩き落されたシャークヘッズは、地面に叩き付けられた。
5連続の攻撃で、大ダメージを追っているのだろうか、起き上ろうとする姿も遅い。
そんなシャークヘッズに、ポーラが更に襲い掛かる。
無言で事務的に、ガンガンと剣を振り下ろす姿に、修は恐怖した。
シャークヘッズは死んだ。
次の瞬間、ポーラはパッと花が咲いた様な笑顔を浮かべた。
「やりましたっ!」
「うん・・・」
女って怖い。
修は心からそう思った。
リュックがいっぱいになったので帰った。
ポーラはシャークヘッズがヤレて、実に満足そうに微笑んでいる。
実に恐ろしい娘である。
料理中も、ふんふん~♪と鼻歌まで歌う上機嫌っぷりである。
修は、ポーラを怒らせない様心に決めた。
ポーラが修に怒ることなど、そう起きることは無いが。
この日の夜のポーラは、下着として機能していない下着を着た。
大事なところを隠していない。
しかし、お互いにとてもハッスルした。
そして修は寝ていた。
夢も見ない程、深く。
「・・・・・修さん。修さん」
どこかから声が聞こえた。
とっても遠い声だった。
「・・・ん?」
修は目を開けた。
不思議空間だった。
たぶん、夢の中だ、と修は結論付けた。
つまり、呼んでいるのは神だ。
修は起き上がり、声の方向を見た。
居た。
めっちゃ遠くに神が居た。
両手をメガホンの様にして叫んでいた。
「起きましたねー!!今から行きますねー!!」
そう叫んだあと、ゴッドダッシュをして走り寄って来た。
実に美しいフォームだった。
髪の動きさえ計算され尽くされていそうだ。
修は、神が近くまで来るのを待った。
そして近づいた時に、聞いた。
「何であんな遠くから?」
実に不思議そうな顔だった。
神はゴッドスマイルを浮かべた。
今日の笑顔は完璧だった。
「殴られたくありませんから」
とてもいい笑顔で、言った。
「・・・すいません」
修は謝った。
このペースはもう無理ですね。
明日からは普通に日に1~2回更新になります。
そしてギャグも次回に




