48話 お久しぶりです
再び14層に足を踏み入れた。
一日ゆっくりしたので、ポーラも元気いっぱいだった。
「はぁっ!」
ポーラは案の定、ハンマーテイルの攻撃を回避後、尻尾を切断している。
実に恐ろしいが、そのおかげでサクサクと倒せている。
最初は残虐な光景だと思っていた修も、だんだん慣れて来た。
そうこうしているうちに、ボスを発見した。
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LV.14
ボス・ハンマーテイル
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「行きます!」
ポーラがやる気満々で駆けて行った。
「がんばってね」
その背中に、修が声援を送る。
「はい!」
ポーラも元気に返事を返してきた。
さてボス・ハンマーテイルは何をしてくるかと修は見つめていた。
ハンマーテイルはいつも通り、ポーラに向けて駆けて来る。
攻撃が当たる間合いになっても、ハンマーテイルは上空に跳ばなかった。
代わりに、尻尾を地面に叩き付けて、飛んで来た。
「おお!」
修は感嘆した。
普通のハンマーテイルの切り札ではないか。
「っ!」
ポーラも、巨大なハンマーテイルの突進を受けるのは厳しいと判断したのだろう。
横に飛んで回避した。
避け様に、わき腹に剣を叩き込むことも忘れない。
ぶるりと震えたハンマーテイルは、しかし華麗に着地した。
再びポーラと向き合うと、尻尾を地面に叩き付けてまた突進した。
尻尾ハンマーで攻撃はしてこない。
またポーラはひらりと回避し、わき腹に攻撃を叩き込む。
また着地したハンマーテイルは、今度はすぐには跳ばなかった。
ポーラのことを警戒したのだろう。
じりじりと間合いを調整している。
暫くにらみ合いが続いたが、ポーラが踏み込もうとした瞬間、ハンマーテイルは動いた。
横回転だ。
尻尾をウチワの様にして、ポーラに向けてフルスイングしてきた。
「っ!」
ポーラはそれを回避した。
が、風圧に押されて後ろに飛ばされた。
ハンマーテイルは俊敏に体勢を整えると、尻尾を地面に叩き付けた。
未だ空中に居るポーラに向けての突進だ。
「むっ」
大丈夫だろうか、と修は心配してポーラを見つめる。
ポーラも空中で、その動きを見つめていた。
空中で姿勢を整えると、盾を構えた。
そしてハンマーテイルが直撃する瞬間、ポーラは下からハンマーテイルの腹に蹴りを叩き込んだ。
「はっ!」
蹴りの反動を利用した、ポーラは、空中で後ろに倒れ込む様な姿勢になった。
ハンマーテイルが、ポーラの構える盾を掠めて、ポーラの上を跳んで行った。
ポーラはその体勢から、器用に空中で姿勢を整えて足から着地した。
そして、着地したばかりで背を向けているハンマーテイルに向けて突進する。
「ふっ!」
ポーラが剣を振り下ろす。
しかし、ハンマーテイルはそれを察知したのだろう。
ポーラに背を向けたまま、地面に尻尾を叩き付けてポーラから逃げる様に跳んだ。
ポーラの剣が空を斬った。
「ほぉ」
修が思わず呻いた。
ハンマーテイルは賢い様だ。
ポーラもそう考えたのだろう。
迂闊に斬りかかることはせず、ハンマーテイルの様子を伺い始めた。
ハンマーテイルもポーラと向き合い、にらみ合いを続ける。
と、そこで突然ハンマーテイルが口を開いた。
「・・・?」
ポーラが訝しげにハンマーテイルを見つめた。
次の瞬間、ドンッ!と言う音と共に、ハンマーテイルの前歯が飛んで来た。
「ええええええええええ?!」
修が目を見開いて叫んだ。
「わっ?!」
ポーラも慌てて屈んで回避した。
そこに、ハンマーテイルが飛びかかった。
ハンマーテイルの飛ばした筈の前歯が、再び生えているのをポーラは見た。
「ぐっ!」
ポーラは飛びかかって来るハンマーテイルの前歯に盾を合わせ、不意打ちに備える。
そうしながら、横っ飛びに飛びながら剣を振る。
ポーラの攻撃は、回避を優先したために、ハンマーテイルの体に掠った程度だった。
ハンマーテイルは振り返り、ポーラに向けて前歯を飛ばす。
ドンッ!ドンッ!と思い音が響く。
連続射出も可能なのだ。
「くぅっ!」
ポーラも盾でそれを迎え撃つ。
盾に前歯がぶつかるたびに、ガン!ギン!と固い音が響いた。
そして再びハンマーテイルが跳んでくる。
「ふっ!」
ポーラはそれを見越していた。
美しい足で、ハンマーテイルよりも高く跳んだ。
「おおぅ!?」
まさかの大跳躍に修も驚愕した。
ハンマーテイルも驚愕した。
突然視界から消えたように感じたのだ。
「はっ!!」
そして上空から、ポーラは無防備な尻尾の付け根に剣を叩き込んだ。
ハンマーテイルの尻尾がパージしてしまった。
空中でバランスを失ったハンマーテイルが、地面に転がり落ちる。
そこに、華麗に着地したポーラが襲い掛かる。
後は一方的だった。
苦し紛れに前歯を射出するが、盾で受けられる。
その隙に攻撃しようにも、推進力として使用していた尻尾は失われているのだ。
最早どうしようも無い。
やがて、ボス・ハンマーテイルは力尽きた。
「いや、びっくりしたね」
尻尾を回収しているポーラに、修が話しかけた。
「はい。まさか飛ばせるとは・・・」
ポーラも考え込む様に答えて来た。
やはり、迷宮は不思議がいっぱいだ。
予想もつかぬ攻撃をしてくることを心の隅に置いておくことにした。
次の階層に向かった。
15層は、地面がぬかるんでいた。
「・・・またか」
修がとても嫌な予感を覚えた。
「・・・・・・」
ポーラも、マーマンの臭いを思い出して嫌そうにしていた。
少し進むと、やはり沼があった。
しかし匂いが違う。
生臭いと言うよりも、磯臭い。
マーマンよりは余程ましだった。
ポーラもこれなら耐えられるようで、ほっと安堵していた。
そして魔物が現れた。
「あー、そういえば」
修は魔物を見て納得顔をした。
「・・・・・・・・」
ポーラも、今思い出しました、と言った顔をした。
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LV.15
シャークヘッズ
水魔法Lv.9
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はぐれで倒した、懐かしき魔物だった。




