03話 修、選ぶ
しばらくぶつぶつと呟いていた神は、頭を切り替えたようだ。
やけくそ気味にテンションを高くして叫んだ。
「では、神様特典プレゼントの時間です!」
修もおざなりに拍手をしておいた。
「お~」
神は虚空にカードを作りだすと、修に手渡した。
「この中から選んでください。修さんは特別に6個選んでもらいます」
カードを受け取りながら、修が首を傾げた。
「他の人は何個だったの?」
「基本3個ですね。むかつく奴は0個です」
神は何でもないことの様に言い放った。
むかつく奴が居たんだな、と修は思った。
「ふ~ん・・・・」
修がカードを見た。
大体は、見れば内容が分かった。
体力アップ
攻撃力アップ
防御力アップ
魔力アップ
知力アップ
経験値獲得アップ
・
・
・
攻撃魔法
回復魔法
・
・
・
修が目を丸くした。
「魔法!!魔法もあるんだ!!」
激しく心を揺さぶる単語だった。
神は修と額を突き合わせるようにして、丁寧に解説していく。
「はい、あります。攻撃と回復で分かれていますよ。物によってはレベルもありますよ。このアップ系とかはそうですね」
うんうんと頷きながらも、魔法から目を離さない。
「へぇ~。魔法は欲しいなぁ」
修の心の中で、魔法は決まっていた。
後四つ。
続けて見ていく。
「鑑定?これは?」
神は揉み手をせんばかりの顔をした。
「修さんはお目が高い!これは私特製の鑑定ですからね。武器鑑定から人物鑑定まで全部網羅していますよ!異世界から来た修さんにはおすすめの一品です!」
食べられるものが分かるのか。
それはとても大事なことだ、と修は思った。
「じゃあこれは貰うよ」
三つめも決定した。
「はい!!」
更に進めていく。
伝説の剣
伝説の槍
伝説の槌
・
・
・
修は思わず、神を見た。
「伝説、いっぱいあるんだ・・・」
どこか残念そうな顔で言う。
「人によって得意な武器変わりますから。ちなみに伝説の剣が一番人気です」
神はあっさりと言い切った。
修はあまり深く悩むことなく、読み飛ばしていった。
「う~ん、武器はいいや」
神はこっそり思った。
(ですよねー)
神をぶん殴れるほどの拳があるのだ。
ぶっちゃけ魔法も必要あるまい。
読み進める中で、気になる単語があった。
修は神に問いかけた。
「状態異常無効?これは?」
神はすらすらと口を開く。
「麻痺とか毒とかあるんですよ。魔物とか薬とかで喰らいますね。修さん素手ですよね?あれば結構便利だと思いますけど」
そういうと、修はあっさりと決めた。
「じゃあこれも」
神も素直に頷いた。
「はい」
4つはすぐに決まったが、残りはなかなか決まらなかった。
「あと二個かぁ・・・・・経験値獲得アップってどうなの?」
修はその中で、気になったものを聞いて行くことにした。
「そのままですね。LVあったでしょう?それが上がりやすくなりますね。あ、ちなみにPTメンバーにも効果出ますよ。早く強くなりたいならお勧めですね」
もっとも修さんにはあまり必要ないかもしれませんが、と神が呟く。
しかし、修の心の琴線に引っかかったようだ。
「PTもあるんだ・・・。ん~・・・。じゃあこれにするよ」
多少悩んだ結果、修は経験値獲得アップに決めた。
神はこっそり安心した。攻撃力アップを選ばれても、これ以上あげようが無い。
あと一つを探しているうちに、不思議な物を見つけた。
「称号変更って何?」
「ああ、カードに載ってる奴ですよ。修さんでいうと、『拳を極めし者』とか、・・・・・・・・・・・・・『神を殴りし者』です。」
神は最後は悲しそうな顔をして呟いた。
「どんな効果?」
修は気にせず問いかけると、神も一度目を閉じて切り替えた。
「ん~、自分の称号とか、PTメンバーの称号を変えれるんですよ。称号って、いわば自己紹介みたいなものですね。一番上にあるのだけが人に見えるんですよ」
「ふ~ん」
まだあまりぱっと来ない様だ。
まあ当然だろう。
実際、あまり大きな効果を得られるスキルではないのだ。
「あとですね、称号によっては、性格が変わったりもします。犯罪系に多いですね。泥棒したらそういう称号がついて、一気に悪い行動とかしたくなっちゃいます。そう言う時にこれがあると、パパッと変えて更生もすぐですね。ははは」
「ん~~~~~。じゃあ一応、これもお願い」
修は悩んだが、他に良いと思えるものは無かった。
と言うより、心の中は魔法で一杯だった。
「はい了解です。経験値獲得アップ、攻撃魔法、回復魔法、鑑定、状態異常無効、称号変更の六個ですね!いいですか?行きますよ?」
神が修に確認を取る。
「お願い」
修も躊躇わず頷いた。
「んむむ・・・・!はい、出来ました!カードのご確認をどうぞ!」
神が多少唸るだけで終わったらしい。
修は言われるままに、カードを出す。
「『カードオープン』」
----------------------------
LV.1
カンザキ シュウ
人間:♂
18
拳士LV.■■
経験値獲得アップLV.1
攻撃魔法LV.1
回復魔法LV.1
鑑定
状態異常無効
称号変更
『神を殴りし者』
『拳を極めし者』
----------------------------
要望通りの物がついて居た。
「うん、出来てる!」
修は満足そうに頷いた。
「はい、ありがとうございましたー!後ですね、さっき称号でもちらっと言いましたが、このカード自体が身分証明にもなるんですよ」
神が自慢げに言い放つ。
「うん」
修は面白そうに頷いた。
「見えるのは性別、種族、年齢と称号くらいですね。実際他人から見ると、こうなります」
----------------------------
カンザキ シュウ
人間:♂
18
『神を殴りし者』
----------------------------
レベルやスキルは非表示になるらしい。
「ふむふむ」
「修さんの鑑定なら、全部見えますけどね。それ以外の人には基本無理です。よっぽど高位の人物鑑定じゃないと無理ですね。まあ普通居ないです。死ぬとカードが出て来るので、賞金首とかもそれで確認できます。あ、死ねば全部開示されちゃいます。後ろ暗いことした後はお気をつけて。・・・あと、無用なトラブルを避けるなら、『神を殴りし者』の称号は適当に変えておいた方が良いかもしれませんね」
修は、ふーん、と呟いた後首を傾げた。
「『拳を極めし者』に変えたほうがいい?」
神は真顔になった。
両手を頬に添えると、頬の痛みを思い出した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いえ。止めておきましょう。こうしておきましょう」
神がササッと手を動かした。
----------------------------
LV.1
カンザキ シュウ
人間:♂
18
『探索者』
----------------------------
それにより変化したカードを見て、修が目を丸くした。
「『探索者』?」
神が頷いた。
「修さん迷宮潜りますよね?迷宮潜るとこれがつくんですよ」
修は感心した風な顔をした。
「なるほどー」
「あとはそうですね、本来称号を変えれるのは専用の場所だけですが、称号変更を持った修さんなら好きに変えれるくらいでしょうかね。あ、赤の他人のは無理ですが、PTメンバーの称号なら変えれます」
「分かった。ありがとう」
修が頷くと、神は基本的な世界の説明を軽く済ませた。
そして、
「はい、では送りますね?もう後は好きにやっちゃってください。ぶっちゃけ修さんのパンチがあれば何でもできると思いますよ!あと人を殺す気がないなら手加減してくださいね?あのパンチでドラゴン死にますからね?マジで」
神は最後にぶっちゃけた。
未だ頬は、リンゴの様に真っ赤だった。
「ありがとう!取りあえず魔法を頑張ってみるよ!」
修は頷いた。
しかし、意識は魔法に向いているようだった。
「分かりました。魔法は使おうと思ったら頭の中に魔法名が出ますからね。詠唱はいりません。神様特典なので。ただし、レベルにあった魔法しか使えませんからね」
神が言うと、修がふんふんと頷いた。
「分かった」
最後に神は、再びゴッドスマイルを浮かべた。
「では幸運を」
最後の最後に神々しく言い放つと同時に、修の体が消えた。
頬が腫れていなければ完璧だったに違いない。