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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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47話 光った

14層でしばらく戦った。

ハンマーテイルの尻尾はかさばるので、あまり長時間は戦え無さそうだ。

しかしそれにしても、ポーラは随分強くなったように感じる。

ミラードラゴン効果は本当に凄い。

またしてもハンマーテイルを仕留めたポーラに、修が声をかけた。


「まだまだ余裕だね」


ポーラも実感しているようで、頷いた。


「はい。しばらくは問題ないと思います」


ポーラもまだまだ余裕がある。

常に警戒ばかりしている訳でもなく、今晩は何を着ようかと考えるくらいの余裕まであった。

だからこそだろうか。


「あ」


突然、ポーラの足元が光った。


「あっ?!」


ポーラはやらかしたことに気付いて、叫んだ。

次の瞬間、修とポーラは光に包まれて、消えた。




「・・・魔法陣かな?」


魔法陣にひっかかったのだ。

10層以上にはあるのだが、すっかり存在を忘れていた。


「はい。・・・すいません」


ポーラは気の毒なほどに落ち込んだ。

注意していなかった修も悪いし、実際注意していても無駄だっただろう。


「いや、大丈夫だよ」


修はポーラを慰めた。


「はい・・・」


しかし、ポーラはしょんぼりしたままだった。

耳も尻尾も、力無く項垂れている。


今は何を言っても無駄だろう。

そう判断した修は、話題を変えることにした。


「全部倒さないと駄目なんだっけ?」


とても広い空間だったが、周りに何もいない。

魔物が居なければ倒すこともできないのだが。

修は若干不安になった。


「はい」


ポーラが頷くと、突然、三つの光が輝いた。

光が収まると、三体のハンマーテイルが出現していた。


ハンマーテイルが三体纏めて駆けて来た。


「まあ、やろうか」


三体一では、ポーラでも危ういかもしれない。

修はそう判断して、構えた。


「はい」


ポーラも剣を抜いて構えた。

戦闘モードに顔が変わっていた。


まずは修が駆け出した。

ポーラも遅れて駆け出したが、修とはグングン離される。


「・・・」


ポーラは初めは追いつこうとしていたが、すぐに無理だと判断した。

悔しげに歯を食いしばりながら、スタミナを維持できる速度に落とした。

あっという間にハンマーテイルに肉薄した修は、まず一体目に目標を定めた。

とんでもない速度で肉薄した修に、ハンマーテイルは慌てて飛んだ。


「セイッ!」


回転するまでもなく、その顔面に拳が突き刺さった。

ハンマーテイルの前歯ごと、顔が粉砕した。

それをみて、残りのハンマーテイルは敵わぬと悟ったのだろう。

残り二体は修を迂回して、ポーラに向けて駆けた。


二体が同時に飛んだ。


「くっ!」


ポーラは急停止し、盾を構えて後ろに飛んだ。

一体は前転し、ポーラの居た場所に尻尾を叩き付けた。

尻尾の形に地面が陥没した。

ハンマーテイルの尻尾は凶悪だった。


もう一体は、前転できなかった。


「ゲット!」


空中で、修に尻尾を捕まれていたのだ。


「はっ!」


修はそのままハンマーテイルを振りまわした。

哀れなハンマーテイルは、何もできずに空中を振り回された挙句、地面に叩き付けられた。

その衝撃で、尻尾と胴体がさよならした。

ばかりか、胴体が挽肉になった。

修も大概えぐかった。


「はぁっ!」


それを見たポーラは、もう一体に集中した。

まず地面にめり込んだ尻尾を踏んだ。

尻尾を抜こうとしていたハンマーテイルが、びっくりした顔をした。

必死に引き抜こうとしたところ、ポーラが剣を逆手に持ち、尻尾の根元に剣を叩き付けた。


尻尾が切られた。

ポーラは学んではいけないことを学んでしまった。

ハンマーテイルは引き抜こうとした勢いで、後ろにごろごろと転がった。

ポーラは転がるハンマーテイルを追撃した。

既に名前の元になった武器を失った、哀れなビーバーに。


尻尾を失い、跳ぶことすらできなくなったハンマーテイルは、必死にピョンピョン跳ねてポーラに齧りつこうとする。

悉く撃ち落された。

ぱっと見、とても残虐なシーンだった。

そして、ポーラがハンマーテイルを仕留めた。


「これでいいのかな?」


修が尻尾を回収してポーラに問いかけた。


「はい・・・」


ポーラはまだ落ち込んでいた。

八つ当たりをしていたのだろうか。


「お」


すぐに光に包まれた。

次の瞬間、修とポーラは元の場所に立っていた。


ポーラの足元を見ると、魔法陣が隠されていた。

文字の色も黒で、目立たない様に工夫されていた。

これは気付くのは難しいだろう。


ポーラのテンションがとっても落ちていたので、帰ることにした。

清算中も、買い物中も、食事中もポーラの耳はしんなりしていた。

ビーバーの尻尾は美味しかった。


修は久々にお風呂を作り、一番風呂をポーラに譲ってあげた。

ついでにとろとろになったポーラの体と頭をしっかり洗ってやった。


寝る前もエロイことをする前に、撫でまわしてやった。

撫でて撫でて撫でまわすと、ポーラも段々はぁはぁと荒い息を吐いて怪しい瞳をし始めた。

後はたっぷり楽しんだ。

久々に称号を変えると、ポーラはとことん乱れた。

良い気晴らしになったのだろう。


翌朝、ポーラはいつも通りになっていた。

割とちょろい。


しかしポーラが体力を使いすぎたので、この日は迷宮はお休みだ。

あまりじっとしていないポーラを捕まえて、一日まったりした。

抱き寄せて優しく頭を撫でていると、ポーラはすぐうとうとしはじめたので、とても可愛かった。

そのまま修の腕の中で眠り始め、修も昼寝をしようとしたところで、ポーラが寝言を言った。


「く、くぅ~ん」


犬じゃないか。

修は心の奥底からそう思い、愕然とした。

お陰で目が覚めてしまったので、ポーラの寝顔を楽しんだ。

残念ながら、もう寝言は言わなかった。


ちなみに、寝起きのポーラに寝言を教えると、とても恥ずかしそうにしていた。

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