45話 禁断の愛
いろいろあったが、無事に帰宅できた。
最後は、騎士団たちは皆、修に同情の視線を向けていたのが気になる。
ポーラは心配そうにしてくれたのが唯一の救いか。
この日のポーラはエロ衣装は着なかったが、そこかしこにキスの嵐を振らせてくれた。
まるで犬が慰めてくれているかのようだった。
しかしポーラがやると、とってもエロイ。
いっぱいお返しをしたら、燃えたポーラに情熱的に口を吸われた。
最高だった。
ちなみに秋刀魚は美味しかった。
翌日からまた迷宮に潜った。
12層は出来るだけ早く攻略しようと、出来るだけ修が前線に立つことにした。
時々はポーラも戦ったが、大半は修が進み出た。
そのかいあって、入って大した時間も必要なく、ボスを発見した。
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LV.12
ボス・マーマン
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ボス・マーマンは、今まで以上に生臭かった。
もしかして、獣人達をピンポイントに狙ってるのではないだろうか。
「じゃあ俺が行くよ」
もはや頭痛を感じているのか、苦しそうに眉を歪めるポーラを慮って、修が進み出る。
「・・・はい」
ポーラも今回ばかりは辛いようで、素直に頷いた。
修には考えがあった。
ボスは、普通の魔物と違う動きをする。
ポーラの事を考え、あまり時間はかける気はないが、それを見てみたいと思ったのだ。
ボス・マーマンはしょっぱなから違った。
巨大なタチウオをでろりと抜くのはいつも通りだが、更にもう片方の手を懐に入れた。
「お?」
最初から秋刀魚を投げて来るのかと思った。
が、マーマンは秋刀魚を持ちつつも、投げて来なかった。
逆手に構えて、二刀流の構えを取った。
「ほぉ・・・」
堂に入った構えだ。
しかし、持っているのは生魚。
修は、もうやっちまってもいいかな、と考えた。
マーマンは、タチウオを振りかぶって、ぺたぺた突進して来た。
生臭い物に触りたくない修は、虚空にデコピンをした。
タチウオの上半身が弾けとんだ。
「はいっ?!」
鼻を押さえていたポーラは驚愕した。
どういう理屈かは全く分からないが、修は蹴りを虚空に飛ばせる。
それがまさかデコピンまで飛ばせるとは。
しかし、ポーラが愕然としたのも一瞬だ。
ポーラの中で、また『シュウ様素敵ですポイント』が上がった。
ちょろい。
一方タチウオを失ったマーマンは、魚介類の眼でタチウオの消えた手をじっと見た。
不気味である。
そして次に、また懐に手を突っ込んだ。
でろりと。
明らかに間違ったサイズの秋刀魚が出て来た。
「「え・・・・?」」
修とポーラがはもった。
たぶんおそらくきっと、切り札なのだろう。
しかし、こんなに長い秋刀魚見たことない。
長いのに、タチウオと違ってピシっとしている。
マーマンは、秋刀魚を振りかぶって再び修に駆けて来る。
「・・・」
もういいかな。
修はそう考え、マーマンに向けて腕を伸ばした。
そして、指をパッチンと鳴らした。
その瞬間、マーマンの上半身が吹き飛んだ。
「なっ?!」
ポーラは更に愕然とした。
今のは魔法だろうか?
しかしそれにしてもシュウ様素敵過ぎます。
またポイントが跳ねあがった。
最早エンディングを迎えていてもおかしくない好感度だというのに。
「うっし」
修は指パッチンの効果を見て頷いた。
これは、友人に教わった技なのだ。
オタク友達が笑いながら「こんな技を使うキャラがいてさ」と冗談でパチパチ指を鳴らしていたのだ。
友人に勧められるまま、修も真似をした。
コンクリが割れた。
友人はドン引きしていたが、修は気付かずにテンションをあげていた。
「じゃあいこうか」
秋刀魚を回収してポーラに呼びかける。
「はい!」
ポーラは目をキラキラさせて駆け寄ってきた。
13層は、足場はしっかりしていた。
何故かしっとりしているが。
しかし、匂いは普通だ。
「ここは大丈夫かな?」
念のため、修はポーラに確認した
「はい」
ポーラは、ほっとした顔で頷いた。
二人で探索を進めた。
13層では、中々魔物に遭遇しなかった。
が、体感的には半分ほど探索を進めた頃に、遂に遭遇した。
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LV.13
ツインスネイク
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大きな蛇だった。
全長は、5Mはあるだろう。
その蛇には尻尾が無かった。
両端に、顔があった。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
ツインスネイクは修とポーラの見つめる中、二人に気付いた様子も見せていなかった。
そして、二つの唇を重ね合わせていた。
赤い舌を伸ばして、チロチロと情熱的に舐めあっている。
どう見てもイチャイチャしている。
修とポーラは、何と言っていいのか分からなかった。
「・・・・禁断の愛?」
修は、ふと思いついた言葉を呟いた。
「・・・かもしれません」
ポーラも胡乱に頷いた。
その声で、ツインスネイクは二人に気付いた。
ハッ!と二つの顔がこっちを見たと思うと、一つの頭が、もう一つの頭を庇う様に進み出た。
爬虫類の眼なのに、強い意志を感じさせる力でキッと睨み付けて来る。
もう一つの頭は、ガクガク震えていた。
「・・・ええ?」
どう見ても、怯える彼女を守る彼氏の図だった。
とはいっても体は一つだろう、と言う突っ込みすら躊躇させる雰囲気があった。
しかも、向かってこない。
「・・・行こうか」
修には、これを殺すほどの残虐さは無かった。
「・・・はい」
ポーラも同様の様だった。
距離を取ってすれ違っても、ツインスネイクはこちらを睨み付けて来るだけだった。
そして、修とポーラが視界から消えた時、二つの頭はまるで無事を祝い合うかの様に絡み合った。
13層はイチャコラ空間だった。
全く萌えないが。
実にあっさり、ボスまで辿り着いた。
ボスまであんなんだったらどうしよう。
修とポーラは心の奥底からそう思った。
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LV.13
ボス・ツインスネイク
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「ええっ?!」
見た瞬間、修は叫んだ。
一つの頭が、一つの頭を飲んでた。
ウロボロス状態。
一体、愛し合う二人の間に何があったのだろうか。
しかし好都合だ。
これならただの魔物にしか見えない。
「ズェイッ!!」
修は二人の仲が戻る前に、遠距離から蹴りを放った。
ボス・ツインスネイクは細切れになった。




