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その拳にご注意を  作者: ろうろう
32/136

30話 四散

『ポーラさん串刺し劇場』は続いた。

九層も全く問題なく探索を進めと、あっさりとボスを発見した。


----------------------------


LV.9

ボス・ドグー


土魔法LV.5


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最早特に何も言うことは無い。


「行きます」


ポーラが駆け出した。

巨大なドグーも地面を滑ってポーラに肉薄する。

ドグーのスライディングを、ポーラは躱しざまに剣を叩き付ける。


「せっ!」


短いドグーの首に、的確に剣が叩き込まれる。

ポーラも段々エグイ攻撃をするようになってきていた。

しかしその分ダメージは大きいようで、ドグーの体が大きく震えた。


一度通り過ぎたドグーは、そのままターンを決めて再びポーラに向けて滑って来る。

次いで、ドグーは飛んだ。

またトリプルアクセルで体当たりを仕掛けて来るドグーに、ポーラは正面から突きを叩き込む。


「っ!」


ギギィ!!と固い物が擦れる音が鳴った。

ボスだけあり、串刺しにはならなかった。

が、ドグーは弾き飛ばされた。

ポーラも流石に体勢を崩していた。


再び間合いが開けると、ドグーは警戒したのだろうか。

ポーラの周りを、隙を伺う様に滑り始めた。

しばし様子を伺っていたポーラは、中々近づいてこないドグーに向けて駆けだした。


「はっ!」


慌てて避けようとしたドグーに、連続で剣を叩き込む。

ドグーはぶるぶると体を震わせて、苦し紛れにアースシュートを放つ。

ポーラは容易く盾で弾き飛ばした。

ドグーはその隙に、辛うじて距離を取った。


ポーラには敵わぬと判断したのだろうか。

ドグーは、修に向けて滑って来た。


「む」


近づいたら、即デストロイに向かって滑り始めたドグーは、しかしその前にポーラが再び肉薄した。

無防備な背中に、連続で剣を叩き込まれた。

見る見るうちに動きの鈍くなるドグーの空虚な瞳が、赤く明滅し始めた。

修はとても嫌な予感がした。

その予感に従うままに、修は叫んだ。


「ポーラッ!」


ポーラは、修の叫びに反応した。


「ッ?!」


何がなんだかよく分からない顔のまま、ドグーから飛び離れ、顔を盾で覆って体を縮めた。

その瞬間、ドグーの瞳が真っ赤に輝いた。

そして、爆発した。


「~~~~~~~~~っ!!」


ポーラはその爆風に押されて、更に後ろに弾き飛ばされた。

鎧や盾に、いくつものドグーの破片が衝突する。


「かぁっ!!」


修は迫りくる爆風とドグーの破片に向けて気合を吐いた。

気合の勢いに押されて、それらは明後日の方向に吹き飛んだ。


「ポーラ!」


爆心地に粘土が出現したが、修はそれには目もくれず慌ててポーラに向けて駆けだした。

ポーラはもぞもぞと立ち上がった。


「だ、いじょうぶ、です・・・」


修が怪我の確認をした。

外傷は無かったが、爆発の衝撃と、地面に叩き付けられた衝撃で苦しそうにしている。

鎧を脱がせて回復魔法をかけてやると、苦しそうな顔が段々と安らかになって行った。


「もう、大丈夫です。ありがとうございます」


回復しきったポーラが回復を止めて頭を下げた。


「そう?痛かったら言うんだよ?」


修は心配そうにポーラに言った。


「はい。・・・申し訳ありません・・・」


ポーラは悔しそうに頭を下げて来た。

辛うじて直撃はしなかったとはいえ、爆発に巻き込まれたのを不覚に感じたのだろう。


「いや、仕方ないよ。まさか爆発するとはねぇ」


修はポーラを慰めるように言った。

修も明滅するドグーの目を見て嫌な予感を感じただけなのだ。

位置的にその目を見れなかったポーラに気付けと言うのは酷だろう。


「はい・・・」


ポーラはしょんぼりと耳と尻尾を垂らして項垂れた。


「油断は禁物だね」


修はポーラの頭を撫でながら呟いた。


「はい」


ポーラも気持ちを切り替えようとしたのだろう、強い口調で返事を返してきた。

十層に足を踏み入れてから帰ることにした。

ポーラは大丈夫だと言ったが、一応様子を見ておいた方が良いだろうと判断したのだ。


ポーラをベッドに押し込めて、休ませた。

もしかして、ポーラのベッドをしっかりと使ったのは今回が初めてではなかろうか。

そんなことを考えながら、修は出来合いの物を買いに出かけた。

未だに食べ物は良く分からないが、食べられる物なら何でも喰えるのだ。

出来るだけ美味しそうなものを買って帰ることにした。

考えれば、一人で街を歩くのは初めてかもしれない。

夕食時までもまだ余裕があったので、修はいろいろ見て回ることにした。


もの珍しそうに色々な店見て回る中、修は気になるものを見つけた。


「・・・?」


ドラム缶の様なものだった。

店の人に聞くと、寸胴鍋の様なものだった。

本当に人が一人、入れるようなサイズだ。

余程巨大な店でしか使用しないだろう。


「これください!」


修はそれを購入した

木板や石材も買い込み、寸胴鍋の中に放り込む。

修は巨大な寸胴鍋を軽く肩に乗せながら食べ物を買って帰った。

人々が目を丸くしてその様を見ていたが、気にもしなかった。


修が帰宅すると、ポーラも部屋から出て来た。

申し訳さなそうな顔は、修の持つ寸胴鍋を見て固まった。


「何か、作られるのでしょうか・・・?」


二人暮らしでは明らかにオーバースペックなそれを見て、ポーラは呆気にとられていた。


「違う違う。こっちはまあ後でね」


そう言って、修は上機嫌に寸胴鍋を置いた。

不思議そうな顔のポーラの背を押し、二人で食事を取った。


その後はまたポーラを寝室に押し込み、修は一人で洗濯場に居た。

ポーラが洗濯に使っている木桶が置いてある場所とは反対に、まず買ってきた石を組む。

その上に寸胴鍋を設置し、鍋の底に木板を敷いた。


「さて、行けるか・・・」


修は寸胴鍋の中に、アクアシュートを叩き込み続けた。

レベルが上がっている効果か、鍋が一杯になってもまだ魔法は使えそうだ。

次に、鍋の下側からファイアシュートを連続で叩き込む。


「むぅ・・・」


一瞬の火力は高いのだが、すぐに燃え尽きてしまう。

魔力が枯れるまで放ち続けたが、ぬるま湯で打ち止めになった。


薪を買おう。

魔法の間違った使い方をした修は、そう決意した。

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