19話 かつてない危機
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ありがとうございます。
胃が治ったら今度は普通に風邪をひいて喉が痛いです。
私の体はどこか痛くなっていないと駄目なのでしょうか
ポーラは、あっという間にステッキウッドに慣れたようだ。
修が攻撃すると花を咲かす間もなく息絶えるが、ポーラが相手ならば悲願を果たすことが出来ている。
修も鬼ではないので、ステッキウッドの相手は全面的にポーラに任せることにした。
「はぁっ!!」
とはいっても、一方的に殴りつづけられている。
果たしてどちらが幸せなのだろうか。
ステッキウッドは最後の力で花を咲かせ、それを散らせて、がくりと項垂れた。
木片は大きくてかさばるので、清算に戻るのが早くなった。
ギルドに入ると、何やら騒がしかった。
見るからに位が高い騎士っぽい人達がギルドに居た。
ギルドだけでなく、外も騒がしかった。
商人や冒険者達が忙しそうに歩き回っている。
食材を買いにカマンの商会を訪れると、待っていましたと言わんばかりに中に誘われた。
カマンは動きやすい旅装束に身を包んでいた。
馬車も幾つも準備してあり、急ピッチで荷物が運び込まれていた。
忙しく指示を出していたカマンが、近づく修に気付いて駆け寄って来た。
「シュウさん、しばらくお時間はありますかな?急で申し訳ありませんが、護衛をお願いしたいのですが・・・」
早速切り出してきた。
本当に忙しそうだ。
「護衛ですか?・・・・はい、大丈夫ですよ」
迷宮しか潜っていないので、他の街に行けるなら行ってみたくもあった。
修がポーラを見ると、ポーラも頷いたので問題は無いだろう。
そう判断し、引き受けることにした。
「有難うございます!ご存知かもしれませんが、新たに迷宮が見つかったのですよ」
ポーラは納得顔をした。
皆が忙しくしていた理由が良く分かった。
「あ、そうなんですか。だからみんな忙しそうに?」
「ええ、その通りです。森の中で見つかりましてな。ここから三日ほどの距離なのですよ」
しかも森の中。
街に行くことは無さそうだ、と少し残念に思った。
「はいはい」
それを隠して修は首肯する。
「聞いたところによると、中々古そうでしてな。急いで行かねば手遅れになるかもしれません。ある程度の物は揃えておりますので、今日中に出発したいのですが・・・」
カマンは多少申し訳なさそうに申し出て来た。
「あー、はい。大丈夫です」
ポーラに目配せして、二人で頷いた。
「いや、すいませんな・・・」
「はい。では少々お待ちください」
頭を下げて来るカマンに、修とポーラは急いで自宅に向かった。
早足で自宅に向かう最中、修はポーラに質問した。
「手遅れって何なのかな?」
「はい。迷宮を放っておくと、当然迷宮は魔力を得られません。その結果、迷宮が餓死するのです。それだけなら良いのですが、最後に強大な魔物が出て来ることがあるそうです。魔物は魔力を得るまで暴れて、また新たな迷宮を作るそうなのです。大変危険です」
ポーラは予測していたかのようにすらすらと答えた。
「なるほど」
魔物が溢れ出すと、普通の人は大変だろう。
修は納得顔で頷いた。
迷宮へは、大部隊で移動していた。
探索者や商人は勿論、騎士団まで居る。
そんな中で、カマンの商会はかなりの大きさの様で、三分の一は占めていた。
修とポーラも、カマンの準備した馬車の一つに揺られていた。
森の中をのんびりと進むうちに、修は呟いた。
「・・・護衛の意味は無いんじゃないかな」
「そうですね、これだけ人がいると魔物もよりつかないでしょう」
ポーラものんびりとした様子で頷いた。
(カマンさん、気を使ってくれたのかな)
修はポーラを抱き寄せて、もふもふしながら考えた。
ポーラはびっくりした顔をしたが、すぐに嬉しそうにはにかんだ。
そして夜。
修はカマンに誘われて夕食を共にした。
昼とは違い、カマンはたくさん酒を飲んだ。
夜も深まりつつあり、メイド達も後片付けに離れて行った。
気付けばポーラも席を外しており、酔いが回ったカマンと修の二人きりだった。
「ーという訳なのですよ!はっはっは!!」
酔っぱらったカマンが長々と修に話を続けていた。
「なるほどー」
修は興味深そうに頷いていた。
若い頃の苦労話から、店を大きくした話など。
神様の話よりためになった。
「・・・うーむしかしシュウさん、細いですなぁ。まるで女性の様です」
赤ら顔のカマンがとろんとした目で修の体をジロジロと眺める。
修は、そんじょそこらの一般人にすら負けそうに見せる程に細い。
「でも結構鍛えてますよ?・・・ほら」
修は上半身を晒した。
確かに細いが、途轍もなく引き締まっている。
皮膚一枚下には恐ろしい密度の筋肉が蓄えられている。
「ほほぉぉ。これはこれは見事な物ですな。私など・・・ほら、この有り様です」
カマンは感心したように修の体を眺めた後、ふらふらと立ち上がって上半身を晒した。
突き出た腹にたるんだ肉。
明らかな中年太りの体だった。
修は苦笑いした。
「・・・むぉ?」
カマンがぐらりとバランスを崩した。
酔いが回った状態で急に動いたせいか、ぐらりと体が傾いた。
「おっと」
修が慌てて受け止めた。
脂肪塗れの体はかなりの重量だったが、揺るぎもせずに受け止める。
「お水をー」
そこにポーラが現れた。
何故か途中で言葉を区切り、ガタッ、と音が鳴った。
修がポーラを見た。
ポーラが愕然とした顔をして、足元に木桶を落としていた。
水が入っていたのだろう、中身が溢れていた。
「ん?ポーラ、落したよ?」
修がポーラに言った。
が、ポーラは呆然とした顔で修とカマンを見つめていた。
段々と、顔が蒼白になっていた。
カマンは全く気付いていなかった。
「むぉぉ。本当に逞しいですなぁ」
修の細い腕をさすっていた。
「うへっ!カマンさんくすぐったいです!」
修が飛び上がった。
「・・・ごしゅ、じんさま・・・・・・?」
ポーラは蒼白な顔で、呆然と呟いた。
「ん?何?」
修が再びポーラを見る。
ポーラは血の気をなくし、カタカタと震えていた。
修は訝しげにポーラを見た。
そして、自分が抱えて居るカマンを見た。
修は冷静に考えた。
修は上半身裸。
カマンも上半身裸。
上半身の男同士が、抱き合っているように見えるだろう。
しかもカマンは、修の腕を撫でている。
修は、ポーラの考えに気付いた。
「はっ?!」
慌ててポーラに説明をしようとした。
が、ポーラが悲壮な顔で、肉付きの良い自分の尻を押さえて叫んだ。
「わっ、私もこちらでも出来ます!!ご主人様さえお望みならばやってみせますっ!!」
「何をいってるのかなっ?!」
修が裏返った声で叫んだ。
ポーラは悔しげに眉を歪めた。
「・・逆ですか?ですが私には・・・・・・」
そのまま自分の股間を見て悔しげに歯を食いしばった。
すぐに、ハッ!と顔を持ち上げた。
自慢の尻尾を持ち上げて叫んだ。
「ッ!!し、尻尾がありますっ!!!」
「それで何を!?」
修は愕然とした。
「これならご主人様のおし「待ってっ!!」」
ポーラの叫びを、途中で遮った。
最後まで聞くと、間違いなく不幸になる確信があった。
しかし、ポーラは悲痛な顔でぎりぎりと歯を食いしばっていた。
「私はご主人様のためならば、どんなことでもする覚悟があります!!太いと思われるかもしれませんが、濡らせばそうでもありませんから!!」
尻尾を持ったまま、じりじりと詰め寄ってくる。
「待てっ!尻尾を降ろせ!その恐ろしい考えを今すぐ捨てるんだ!」
修が怯えた顔でポーラに向かって叫び、じりじりと後ずさった。
「カマンさん、何とか言って!!」」
カマンに助けを求めると、
「ZZZZ」
カマンは幸せそうな顔で寝息を立てていた。
「カマンさぁぁぁぁぁぁんっ!?」
修は叫び、カマンを放り出そうとした。
が、寝ているカマンは修の腰に抱き付いていた。
「だ、大丈夫です!最初は痛いかもしれませんが・・・!」
慌ててカマンを引きはがそうとする修に、ポーラが、いらん覚悟に瞳を燃やして飛びかかって来た。
「うっ、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!?!?!?」
修は、かつてない危機に叫んだ。
・・・┌(^o^ ┐)┐
ポーラのこれがやりたかったんです。




