12話 その拳に何の意味が
アクセス数がおかしいです。
私がNINJA博物館で遊んでいる間に何があったの?(((( ;゜Д゜))))
高価な武器を手に入れたことで、ポーラの戦力が急上昇した。
魔物を倒すペースが一気にぐっと縮まった。
今までは早朝に迷宮に向かい、昼前に清算に戻っていたのだが、昼までに二回も清算に戻るようになった。
受付に顔を覚えられたようで、目を丸くして清算していた。
その分儲かった。
二層では全く問題ないことが分かったので、先に進むことにした。
「今日から三層行ってみようか」
「はい。問題ありません」
三層も、見た目は全く同じだった。
少し歩くと魔物の気配があった。
修とポーラが身構えると、『ぐるるるるぅぅぅぅ』と獣の唸り声が聞こえて来た。
そして姿を現したものは、犬だった。
垂れ耳の中型犬くらいの大きさだった。
姿かたちだけを見れば、とてもかわいかった。
しかし、目がギラギラと輝いている。
口からだらだらと涎が溢れている。
そして喉から、『ぐるるるるぅぅぅぅ』と鳴りつづけている。
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LV.3
グルードッグ
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グルー?
と言うか口開いているのに鳴いてる。
もしかして、と修は思い、ポーラに話しかけた。
「あの鳴き声ってさ」
「はい。何故かずっと鳴っているそうです」
ポーラが油断なくグルードッグを見つめながら呟いた。
修は重々しく頷いた。
そんな予感がしていた。
グルードッグがこちらに気付いた。
涎を垂れ流しながら走って来た。
実に汚い。
「まずは魔法を試してみるよ」
修が前に進み出て、グルードッグに手を向ける。
「はい」
ポーラは一歩後ろに下がった。
「ファイアーシュート!」
修の手から火球が飛んだ。
走っていたグルードッグに正面からぶつかり、あっという間に火だるまになった。
めらめらと全身が燃え上がると、こてんと倒れて、ばたばたと手足を動かしていた。
すぐに燃え尽きる様にして消えた。
後に残るのは、皮一枚。
「・・・犬の皮ね」
鑑定するまでも無いだろう。
修はそれを拾ってリュックに詰めた。
「はい」
ポーラも当然のこと、と言った風に頷いた。
「よし、次はコレでやるよ」
修は拳を打ち合わせて呟いた。
何故か、ガギンッ!と金属を打ち合わせた様な音が響いた。
「・・・・はい。お気を付けください」
ポーラは何かを諦めたような顔で頷いた。
グルードッグが飛んだ。
大きな口を開いて、牙だらけの口を修に突き立てようとする。
『ぐるるるるぅぅぅぅ!!』
「セイッ!」
鼻頭に正拳が突き刺さった。
グルードッグは犬の皮になった。
「うん」
修は何でもないことの様に頷き、犬の皮を回収した。
「・・・・・・お見事です」
ポーラは諦めたような顔で、取りあえず賛辞しておいた。
「じゃあ次はポーラやってみて」
修がそういうと、途端にポーラの顔がキリッと引き締まった。
「はい」
次のグルードッグもすぐに見つけた。
涎を撒き散らして走り寄ってくるグルードッグに、ポーラも駆け出した。
グルードッグが突如身を伏せた。
近くにいると、一瞬消えたように感じるだろう。
グルードッグはそのまま、ポーラに飛びかかった。
「ふっ!」
しかし、ポーラは華麗に身をかわした。
修との戦いで、この動作は見知っていた。
余裕を持って二発、グルードッグに剣を叩き込む。
ポーラの後方に着地したグルードッグは方向転換すると、再びポーラに向かって走り寄る。
ポーラは腰を落としてグルードッグに備える。
グルードッグが身を伏せた。
ポーラが回避をしようとしたが、グルードッグは身を伏せたままだった。
タイミングをずらし、グルードッグが今度こそ飛んだ。
「っ!!」
ポーラは横っ飛びに回避した。
回避だけが精いっぱいで、攻撃する余裕は無かった。
再びグルードッグがポーラに向かって駆けて来る。
ポーラはまた腰を落とし、グルードッグを注意して睨み付ける。
グルードッグはまた身を伏せた。
ポーラも、今度は動かなかった。
グルードッグは次の瞬間、横に回転した。
長い尻尾をピーンと伸ばして、ポーラの足を刈りに来たのだ。
「わっ!」
ポーラは腰を落としていたが、慌てて飛んで躱した。
しかし、着地すると流石に体勢が崩れた。
その隙を狙い、グルードッグがポーラに向かって飛びかかってくる。
「くっ!」
ポーラは咄嗟に、盾でグルードッグの顔をぶん殴った。
ガチン!と盾の向こう側からグルードッグの牙が打ち鳴らされる音が響く。
ポーラはグルードッグの突撃の勢いを何とか反らした。
再び両者の距離が開けた。
グルードッグの行動パターンはそれくらいだったのだろう。
ポーラは落ち着いてすべての攻撃を回避する。
まずは相手の行動を避けることに重点を置いたのだろう。
慣れて来ると、また一撃、二撃と剣を叩き込み始めた。
ポーラが十発ほど叩き込んだ。
ポピーなら猪の皮になっている頃だ。
グルードッグが、突然すっくと立ち上がる。
二本の後ろ足で。
「なんとぉっ?!」
修が目を剥いて叫んだ。
更にグルードッグは、前足で、シュッシュッと虚空を殴り始めた。
どう見てもジャブだった。
「ええっ?!」
修はあんぐりと口を開けてグルードッグのジャブを見つめた。
グルードッグは二足のまま、じりじりとポーラに詰め寄った。
そして間合いに入った瞬間、四足に戻り、飛びかかって噛みつきを行った。
「えぇぇぇぇ・・・・・・」
修の眉が歪んだ。
二足とジャブの意味はなんだったのだろうか。
グルードッグは、カウンターの二発で犬の皮になった。
修が複雑な顔で呟いた。
「なんか、凄かったね・・・・」
ポーラは生真面目な顔で頷いた。
「はい。不思議な動きが多かったです。ですが次からは大丈夫です」
最初こそ見知らぬ動きに翻弄されたが、落ち着いていれば出遅れても回避できることは良く分かった。
しかし、修が求めているのはそういうことではない。
「・・・うん。あの、立ったのってさ」
ポーラは頷いた。
「アレは威嚇だそうです。実際に殴ってくることは無いそうです」
「・・・・そう」
修は複雑な顔のまま頷いた。
ポーラの自信通り、グルードッグ相手に被弾することも無く探索が行えた。
犬の皮がリュックに満載になったところで切り上げた。
犬の皮は、やはり猪の皮よりも高かった。