表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その拳にご注意を  作者: ろうろう
133/136

130話 遠距離

抜けてた!

ポーラも段々鍛えられてきたようで、多少激しい夜を過ごした翌日でも、元気だった。

この調子で進化してほしいものである。


38層に来た。

荒野だった。

何処からともなく風が吹き、オカヒジキ属っぽい植物が風に乗って、地面をコロコロ転がっている。

絶対それっぽい魔物が出て来る。

修は確信した。


そして魔物に出会った。


----------------------------


LV.38

ボイルド


----------------------------


何処からどう見てもハードボイルドな感じだ。

葉巻をくわえ、頭にはハット帽。

腰にベルトが巻かれ、リボルバーが吊られている。

鳩だが。


どう見ても鳩だ。

平和の象徴が、ハードボイルドな感じで立っている。


「……」


修が見つめていると、ボイルドがこちらに気付いた。

気づいてまずしたことは、駆け寄って来ることでも、羽をはためかせることでもなかった。


羽の先で、くいっとハットをあげてこちらを見て来た。

感情の読めぬ目でこちらを見ると、次に羽の先で葉巻を掴んだ。

どうやってるかは聞かないでほしい。

説明などできないのだ。


嘴から、ふぅー、と煙を吐いてから、こちらに向き直った。

そして抜き打ちの構え。


「ファイアーバースト」


修が火球をぶん投げた。

その瞬間、ボイルドの右の羽が霞んだ。

一瞬の早業で腰の銃っぽい何かを抜き、パンパンと弾を撃って来た。

火球に呑みこまれて、弾は全て燃え尽きた。

そして火球はそのままボイルドに着弾し、燃え盛った。


落としたのは『鳩肉』だった。

もう突っ込みは必要ないだろう。



二匹目に出会った。


「俺が行くよ」


何を撃って来るか気になって仕方ない修は、接近することを選んだ。


「はい」


ポーラは頷き、何をしてくるのかをじっと観察し始めた。


修が近づいて行っても、ボイルドは撃ってこなかった。

微動だにせずこちらを見続けている。

目を見ても、感情が全く読めない。


後五歩、というところまで近づいた時、ボイルドは動いた。

早業で腰の銃を抜き、パンパンと撃って来た。


「ほい」


修は平気な顔で、弾をキャッチした。

撃たれた経験は山ほどあるのでは分かるが、実弾よりも遅い。

そして手の中の物を見た。


「……豆?」


豆だった。

一口で食べれるような可愛らしい豆が。

こんなもん当たっても痛いくらいではないのか?

そう考えた修は、更に撃って来る弾をあえて受けてみた。


「むむ?」


衝撃を受ける。

豆なのに、結構威力がある。

これは素の体で受けたら、貫通するまではいかなくとも皮膚は貫くだろう。

豆とは思えぬ。

しかも当たった豆は砕け散った。


「セイッ!」


取りあえず、細首に逆水平チョップを叩き込んで倒しておいた。


「出来るだけ直線状には立たない方が良いでしょうね」


ポーラも見ていたが、辛うじて銃を抜くのを見れたくらいだ。

少なくとも弾は見えないので、修みたいにはキャッチは出来ない。

鎧越しでも直撃すれば、体勢は崩すことになるだろう。


「そうだね」


修も同意見だ。


「頼みますよ、カファ」


ポーラは動く肉壁、カファに前衛を託すことにした。

前回危ういところを救出してくれたことで、ポーラの中でカファの株は大いに上がっていた。


「……はぁ」


やる気ない返事だが、いつものことだ。




三匹目からは相談通りだ。


「行きますよ」


ポーラがカファに声をかけると、カファはちゃんと前に出て、ずんずんと歩き始めた。

ポーラはカファの影に隠れ、後ろに着いて行く。


やはりあと五歩、と言ったところでボイルドは銃を抜いた。

パンパンと撃ってきたが、火花が散っていないので火薬は使っていないはずだ。

一体どういう原理で。


カン!カン!と言い音を立てて、カファの盾が豆を弾き返した。

ボイルドは連射するが、あっさりと全て防ぎ切った。

リボルバーの装填数は六発。

発射音が六回なったところで、ポーラが飛び出した。


見ると、やはり弾が切れており、装填の動きを行っていた。

しかし回転式では装填に時間がかかる。

その隙を逃すポーラさんではない。

が、ボイルドが取り出したものを見て修は仰天した。


「ムーンクリップ?!」


スピードローダーを取り出し、迅速に装填した。


「?!」


ポーラの目の前で装填が完了した。

そして見事な早業で、ポーラに精進を合わせた。

パンパンパンパン!


「わっ!あっ!くっ!のっ!」


何とポーラは、必死の顔で弾を避けた。

やはり弾は見えないが、完全な第六感だ。

しかし四発が限界だった。

次は避けられない。

それを理解したポーラは、メテオドラゴンの剣をボイルドに向けてぶん投げた。

同時に、パン!と弾が撃たれる。


「ぐっ!」


ポーラの胴体に豆が激突し、ポーラが苦悶の顔を浮かべて衝撃に押される。

しかしぶん投げたメテオドラゴンの剣も、ボイルドに激突して、最後の一発は防いだ。

ポーラは体勢を崩しながらも、転がり込む様にカファの背後に隠れた。

カファもポーラの前身に合わせて前に出て来たので、すぐに隠れることが出来た。


ボイルドは残弾一発となったリボルバーを開き、迅速に装填し直そうとする。

そこに、カファが盾を振りかぶって、叩き付けた。


ゴイーン!と良い音が鳴った。

巨大な盾で頭部を殴打されたボイルドは、ぐらりと傾いた。

ハットも歪に凹んでいる。

そしてその隙を逃すポーラではない。


「っ!」


顔を歪めながらも飛び出し、ゴッドソード・改を叩き付ける。

ボイルドは一刀両断された。

流石の攻撃力だ。


「…助かりましたよ、カファ」


ポーラは深く息を吐きながら、まずメテオドラゴンの剣を回収した。

ここ数日、ポーラの中でカファの株が大いに上がっている。


「治療するよ」


修がポーラの元に歩み寄った。


「はい。お願いします」


ポーラは痛そうに腹を押さえていた。

鎧を緩めて、中に手を入れてから直接治療してあげた。




探索を続ける前に、反省会を開いた。


「…あれを避けるのは、難しいですね」


装填にあそこまで時間がかからないとは考えなかった。

もっと近づいてから出るべきかもしれないが、離れられたらどうしようもない。


「遠くから攻撃しようか」


修は接近戦を止めて、遠くからちくちく攻撃することを提案した。

チクチクとは言いながらも、メテオドラゴンの剣なら威力は十分だ。


「多少時間かかりますが…」


それでも、実際に叩き切るのとは速度が違う。


「安全第一だよ」


しかし修は戦いにはシビアだ。

避けられない物を喰らうよりも、時間をかけて進めた方が良い。


「はい。そうさせて頂きます」


ポーラも大人しく従うことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ