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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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127話 やはりキング

温泉宿を作った。

おかげで修は建築作業を覚えた。

まだまだ一人では無理だが、指示を貰えればある程度の作業はこなすことが出来るようになった。

脳みそがスポンジなので、吸収も早いのだ。


工事の間にも、時々は修がソロで36層に向かい、酒を確保してどんちゃん騒ぎまでしていた。

温泉も入れるし、素晴らしい労働環境だ。




ある日、修は街中でファウスと出会った。

美人のお姉さんを伴っている。

その顔には、何だか見覚えがあった。


「こんにちわ」


修が声をかけると、ファウスの隣にいるお姉さんがこちらを見た。

やはり見たことがある顔のつくりだ。

ファウスともよく似ている。


「おお、シュウ殿!久しぶりだな!」


そういえば、ファウスと会うのは久しぶりな気がする。


「お久しぶりです」


修は頭を下げた後、ちらりとお姉さんを見た。

その視線を見て、ファウスがお姉さんを紹介してくれた。


「ああ、ラティーナと言う。私の妹だ。マテナの母だな」


マテナの母だった。

なるほどよく似た顔だ。

将来、マテナはこうなるのだろうということが良く分かる。


「初めまして、ラティーナです。お噂はかねがねお聞きしております」


ラティーナは微笑を浮かべて、丁寧に自己紹介してくれた。


「初めまして。修です」


修も頭を下げ返した。

ラティーナは、微笑を多少申し訳なさそうに崩した。


「娘がご迷惑をおかけしているようで…」


ラティーナは、娘やファウスから、修について色々と聞いているのだ。

先日も口紅を貰ったと駆け込んできて、化粧の仕方を教えてくれとせがんで来た。


「いえいえそんな」


修としてはあまりお世話をしたと言う感覚は無い。

近所の子供と遊んであげている気分だ。


「至らぬことがあれば、叱ってあげてくださいね」


ラティーナはしっかりした母親の様だ。


「大丈夫ですよ。マテナちゃんはしっかりした子ですから」


修がまさしく近所のお兄さんのセリフを吐いた。

迷惑そうにしていないことを理解して、ラティーナはほっと安堵の息を吐いた。


「そう言って頂けると…」


そこからはファウスを置いてけぼりにした会話が始まった。


「口紅を頂いたのでしょう?あの子ったら、化粧をするんだって張り切ってしまって」


娘の姿を思い出し、ラティーナは微笑みをたたえて呟いた。

昔教えてやろうとしたら、嫌がって逃げ出したというのに。


「あー。ごめんなさい」


迷惑をかけてしまったのかと、修は頭を掻きながら謝った。


「いえいえ、良いのです。今のうちから練習しておくのも良いでしょうし」


今も、使用人に教わっていることだろう。

まだあまりうまくいっていないので、頑張っているのだ。

置いてけぼりのファウスがようやく一言放った。


「将来はお前に似て美人になるだろうしな」


ラティーナは恥ずかしそうに頬を染めた。


「まあ、お兄様ったら…」


兄妹仲も良いようで、何よりだ。




話しに花を咲かせていたが、途中でファウスが口を挟んだ。


「む。すまないが、そろそろ時間でな」


「はい。お忙しいので?」


多少話し込んでいたが、余り長時間は話していない気がする。


「最近忙しくてな。ゼガンの街で色々と問題があったらしくて、支援で少々な」


すっごい心当たりがある。

カマンも、ファウスには言わないでいてくれたのだ。


「あー。頑張ってください」


そして修は丸投げした。


「ああ。では、またな」


「失礼しますね」


ファウスとラティーナは去って行った。




そして更に街を彷徨う。

彷徨うとはいっても、ちゃんと予定はある。

親方達に差し入れを買うのだ。


「…ん?」


暗い路地裏に気配を感じた。

この先は袋小路で、いつも人の気配がしないと言うのに。

興味を持った修は、気配を辿って歩いて行った。


「こ、これは!?」


そこで愕然とした。

ひっそりとした露店があった。

エロい物を取り扱っている店が。

そして店主も愕然とした。


(キ、キング?!)


この店主は修を知っていた。

忘れもしないあの衝撃。

店にそっち系の下着を売りにいった時、美しい毛並みの亜人の美少女に堂々とエロ下着を購入させていた男だ。

しかも一体どこまで仕込んだのか、美少女は恥ずかしがる様子も見せていなかった。

年若い少女の受けた調教内容を想像し、興奮した物だ。

まあ実際に恥辱を受けていたのは修なのだが。


店主は戦慄と同時に、納得した。

この男ならばあるいは。

稀にしか開かぬこの場所を探り当てることが出来るのではないか。


(ここを見つけるとは、流石だッ!!)


修は、変態に凄く感心された。


そして修も愕然としていた。


(何と言う…!!)


エロ一色。

いっそ清々しい程の露店だ。

網からストッキングまで、更にはOバックまで存在する。

どれもこれも、スケスケで向こう側が見えているほどだ。


「ぬぅ…!!」


しかもスク水っぽいのまである。

修は唸った。


(…やはり!!)


店主も心の中で唸った。

仕入れたばかりの、不思議な造りの水着を一瞬で看過している。

実に恐ろしい男だ。


修は悩んだ。

悩みに悩んだ。

店主は待った。

固唾を飲んで、ひたすら待った。


そして修は、色々買った。

丈が短すぎるピンクのエプロンとか、全身網々とか、Oバックとか。

スク水もどきも当然だ。

そればかりか、ポーラが持っていない一式を揃えた。

道具はちょっと清潔感が怖いので、未購入だ。


「…ください」


今夜が楽しみで仕方がない。

濡れたら透ける水着って。

すぐにスケスケになってしまうではないか。


「…毎度」


店主は無表情を貫き通した。

しかし心の奥底では。


(恐ろしい男だ…!)


戦慄していた。


今夜も、あの少女はどえらい目にあうのだろう。

店主は心の中で修に敬礼した。


全てリュックに詰め込み、それだけでも足りずに外からは見えない袋も貰った。



夜。

やはりポーラさんはきゃんきゃん鳴いた。

すぐに叫び声になり、最後に咆哮に変わったが、外に漏れ出ることは無い。

安心安心。

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