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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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126話 もうあいつ一人で良い

カファは軽傷だった。

むしろサボリだった。

ポーラさんに燃やされかけて、慌てて立ち上がっていた。

威力は大したことが無いことが証明されたので、修とカファの訓練が始まってしまった。


まずは力の流し方を説明し、後は反復練習だ。


「はい」


修は実に軽い感じで、コツンと叩いて来るだけだが。


「ーッ!!」


受ける方は激震である。

上手く調整されているのか、衝撃はすぐに抜けていくが毎回背筋が凍る。

スタミナがガリガリと削られていくが、修は回復をしてからまた攻撃してくる。

余りのスパルタっぷりに、カファはポーラの訓練の方がマシだったと思ったくらいだ。

死に物狂いで頑張った結果、カファは何とか受け流すことが出来るようになった。


「大丈夫そうだね!」


修のお墨付きをもらったと同時に、カファは地面に突っ伏した。


「……」


最早一歩も動く気は無い!と体現する、見事な倒れっぷりだ。

しばらくはそっとしておこう。




次はポーラだ。

修とカファとの訓練を、不思議な物を見る目で見ていた。

『気』を使って受け流す感じなのだが、ポーラにはピンと来ない様だ。

カファはすぐに体得したのだが。

もしかすると、カファは既に悟りでも開いているのかもしれない。


「こうでしょうか…?」


ポーラが見よう見まねでカファの動きを再現する。

が、そんな動きでは、修の攻撃を喰らえば爆散してしまう。


修は何とか説明しようとしたが、出来なかった。

そもそも、修も教えられて身に着けたものではない。

必要に駆られて、自然と身に着けた物なのだ。


ちなみにカファは『何となく』で体現した。

常日頃から瞑想しているようなものだからこそ、理解できていたのかもしれない。


修は取りあえず、どこかの漫画で読んだ知識を伝えた。

丹田に力をためる、とかそれっぽいことだ。


「ここだよ、ここ」


修は、『丹田』と聞いて、首を傾げるポーラのお腹を突いた。

きゅっとくびれた腰を支えるお腹だ。

すらりとした曲線が実に素晴らしい。

毎日肉食ってるのに。


「やんっ!」


ポーラさんがくすぐったそうに身をよじった。

可愛らしい。

やん、とか言った割に、スゲー嬉しそうだ。


しかし今は訓練の時だ。

いちゃいちゃするのは後にしておこう。




色々と試行錯誤したが、全然伝わらない。

そこで、ふと思いついたことを試してみた。

手を繋いで、気を送ってみるのだ。


「こんな感じなんだけど、分かる?」


細心の注意を払い、少しずつ少しずつポーラに流し込んで見る。


「……あ、何となくですが…。温かい?」


修と繋いだ手が温かくなってきた気がする。

しかも、手からぽかぽかが広がって行く。


「それかもそれかも」


これならいけるかもしれない。

修がそう思った。

そして油断した。

ちょっと気が溢れすぎた。

ポーラの肌が一気に赤くなった。


「…!?」


そればかりか、ポーラさんが鼻血を出してしまった。

凄い勢いで顔を背けてしまった。

ごめんなさい。


ポーラさんに、無言でじっとりとにらまれると言う初めての体験に、修は申し訳なさで一杯だ。

しかしそのおかげで、ポーラも何となく理解できるようになった。

流石に攻撃とかに使うには未熟だが、防御として、攻撃を流せるくらいには会得してもらいたい。




そこからもポーラは苦戦した。

どうにかこうにか、感じ取れるくらいにはなったくらいだ。


今もポーラはうんうん唸って、気を集めようと頑張っている。

しかし全然捗っていない。

くじけそうなポーラが修に疑問を投げかけた。


「これでシュウ様のされたようなことが出来るのですか…?」


「うん。頑張ればできるよ」


ちょっと規模は違うけど、まあ出来ると言えば出来るのだ。


「…そうですか」


ポーラはやる気を奮い立たせて、うんうんと唸り始めた。




夜。

そういえばと思い、ちょっと気を込めてポーラさんにアレしてみた。

刺激が強すぎた。

ポーラさんが、またどえらいことになってしまったので、二度としないことを心に決めた。




八極拳とかでも訓練もしてみた。

震脚すると大地がヤバいので、出来るだけ軽くだ。


「がはっ!!」


それでもポーラさんが跳んだ。


「ああっ!?ポーラ!!」


犯人はお前だよ。

大事なかったので良かった。

おかげで、その後は寸止めになった。

修だけが、だが。


カファも引き続き、訓練の続投だ。

フル装備の上、盾を構えて修の体当たりを堪える。

体当たりとはいっても、気を通すのがメインだ。


カファは、迷宮では見せぬ顔で構えていたのが気になる。

そして修の細い体が盾に衝突するたびに、カファの眉が歪む。

痛くは無いが、衝撃がもんのすごい。

そして途轍もなく重い。




そして恐ろしいことに、この訓練は休憩中に行われていた。

修の、土木作業の休憩時間に。

そう、カマンから話を聞いて、宿増築を始めた親方達のお手伝いをし始めたのだ。


当然その間、修は迷宮に潜らない。

その為、ポーラとカファは、再び二人で潜り始めたのだ。


修が作業に出向くと、親方達も大喜びだ。


「おう、ボウズも来たか!」


歓声を持って出迎えられた。


基礎工事である。

地面を掘ったりならしたりと、地味な力仕事だが、超高性能重機、修が恐ろしい勢いで地面を掘り始める。

あんまりな速度に、トニーさんは呆然と見ていた。


「楽だなぁ、おい」


思わずつぶやきが漏れる。


「さぼってんじゃねぇよ!」


ゴンザレスさんが思わず叱咤するが。


「やることがねぇんだよ!」


そういうことである。

結論。


「もうあいつ一人でいいんじゃないかな」


一日で終わった。

組立は流石に修は出来ないが。


「木材が足りません!」


修がマッハで終わらせたので、素材が全然足りないのだ。


「ボウズを森に放り込め!」


放り込まれた。

丸太を持ち帰り、手刀で綺麗に切り出した。


「石が足りません!」


「ボウズを山に放り込め!」


放り込まれた。

岩を持ち帰り、手刀で切り出した。

慣れたものである。

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