124話 酒盛り達の集い
あけましておめでとうございます
訓練をある程度進めることで、ポーラもある程度は対応できるようになった。
そもそも、修相手に戦っていたのだ。
ライオンごときの酔拳など相手にはなるまい。
成果を見るために、36層に。
相変わらず酒瓶を抱えて爆睡しているライオンを発見した。
ポーラはすらりと剣を抜き放った。
「行きます」
カファは伴わず、一人でだ。
弱点は克服せねばならないのだ。
ポーラの脳に、辛い訓練風景が流れた。
来る日も来る日も足払い。
何度腰を強打したことか。
ようやく足払いを避けれるようになったら、足以外も狙われ、最後にはまた足払いだ。
鎧ではもとより、家でも訓練は続いた。
何度修にパンツを見せてしまったことだろうか。
見られても大丈夫なように、お気に入りのパンツを履いていた程だ。
「頑張ってね」
修の声援を受け、ポーラ出撃。
「はい!」
ゴッドソード・改は封印し、メテオドラゴンの剣一本だ。
ポーラは御挨拶とばかりに、たてがみを燃やしてやった。
ハッ!とナイアガライオンが目を覚まし、まずはリバース。
たてがみが燃え尽き、雌ライオンになっていたがくじける様子は無い。
いい感じでアルコールを介抱したナイアガライオンが、ポーラに目標を定めた。
そして流れるような動きで襲い掛かる。
一切のよどみなく、流麗な動きでポーラに襲い掛かる。
「っ!っ!っ!」
当たれば洒落にならない、ライオンの猫パンチを紙一重で回避し、あるいは逸らす。
防御は大丈夫そうだ。
ポーラのピンと立ったお耳がライオンに向き、ピクピク動いている。
可愛い。
「やっ!!」
そして反撃。
ライオンの動きに割り込む様にではなく、動いた先に剣がある、と言う見事な見切りの攻撃だった。
その一撃はポーラの目測通り、ナイアガライオンに直撃した。
「!」
ポーラの顔が、一瞬喜色に染まった。
が、すぐに表情を引き締め直し、油断なく構えた。
でも尻尾がパタパタ鳴っている。
後で撫でてあげよう。
ポーラとライオンの動きは、良くできた演武の様だ。
ライオンの動きに合わせた攻撃を続けているから、そう見えるのだろう。
速度ではなく技で制圧する。
ポーラも強くなったものだ。
修は、「儂が育てた」と言わんばかりの顔でうんうん頷いていた。
確かに貴方が育てています。
そう時間はかからぬうちに、ポーラはライオンを仕留めた。
この調子ならば大丈夫だろう。
しかし、訓練からは酔拳は消えはしない。
もっともっと慣れてもらわなければ。
達成感に満たされた顔のポーラが駆け戻って来た。
「よし、大丈夫そうだね」
修が手を伸ばすと、ポーラは目を細めて頭を差し出してきた。
修の手がポーラの頭に乗せられ、なでなでが始まる。
「はい!」
ポーラさんがとても元気のいい返事をする。
尻尾も、ばっふんばっふん鳴っている。
嬉しそうで何よりです。
この階層は、カファは出番は無かった。
カファは防げるのは分かっているので、ポーラの訓練に充てるのだ。
ゴッドソード・改は封印して、一本で戦うので時間はかかったが。
それでも普通の探索者よりも早いかもしれない。
ポーラの攻撃力は、それほど圧倒的なのだ。
しかしドロップの瓶は嵩張る。
おかげで、この日もボスまで辿り着けなかった。
ギルドで少し『獅子殺し』を売ってみた。
とても高く売れたし、食材を求めている人たちが目の色を変えていた。
とても人気らしい。
納得の美味しさではある。
リュック一つ分を売ったのだが、残り二つも売らないかとチラチラされてしまった。
残したものは、修の胃に消えます。
修も独り占めするわけではない。
「カファも飲む?」
「……はい」
修が聞くと、カファも一瓶持って引きこもった。
意外に好きなのかもしれない。
修は、残りを持って家を出た。
先日は親方達と楽しんだので、カマンの屋敷に足を運ぶのだ。
当然の如くポーラさんもついて来た。
「おお!獅子殺しですか!」
カマンは大喜びだった。
沢山あるので、メイドさんズや使用人の方たちとも楽しむことになった。
とはいっても、流石に全員が全員獅子殺しを楽しむわけではない。
他の酒も沢山準備し、宴会が開かれた。
みんな大喜びだ。
一番いい席で、大人の楽しみをしているのは、カマンと修だ。
「いやー、やはり美味い酒は良いのですなぁ」
自分の限界を知っているカマンは、今回はセーブしているようだ。
酔いつぶれることも無く、酒の味を楽しんでる。
「ですよねぇ。ササッ、もう一杯」
そして底なしの修も、カマンにペースを合わせて飲んでいる。
本気を出すと、すぐに酒が無くなってしまうからだ。
調達は何時でも出来るが。
「おお。申し訳ありませんな。シュウさんもどうぞ」
修がカマンのグラスを満たすと、カマンも修に注ぎ返してくれる。
「ありがとうございます」
実に落ち着いた空気で、世間話を続けていた。
ポーラは、メイドさん達と飲んでいた。
飲んでいると言うか、囲まれていた。
皆が良い感じで酔っぱらっている。
「これを、買って頂いたんです」
ポーラが指輪をはめている指を、嬉しそうに恥ずかしそうに出した。
「「「まあ!!まあまあまあ!!」」」
メイドさん達は目を丸くして、口を両手で覆って騒ぎ出した。
「もう私、嬉しくて嬉しく…」
ポーラは、涙を滲ませながら呟き、指輪をさすった。
メイドさん達もうっとりと空を見上げた。
「素敵よねぇ」「私も欲しいわ」「まず相手を見つけないと…」
また他のメイドさんは、目ざとくポーラの腕に輝くバングルを見て問いかけた。
「ねぇねぇ、それは?」
「これですか?これは、シュウ様とお揃いなんです」
ポーラは、今度はバングルをさすりながら嬉しそうにはにかんだ。
「キャー!」「素敵!!」「見せて見せて!!」
メイドさんの黄色い悲鳴が響き、ポーラのバングルに群がった。
「ってこれ、ミスリル!?」
中の一人が気付いて、叫んだ。
ミスリルと聞いて、他のメイドさん達も絶句した。
クソ高いはずだ。
「はい…」
ポーラは多少申し訳なさそうにしながらも、嬉しさを押さえきれない顔で頷いた。
高い物を買ってもらえると、それだけ大事にしてもらえているという実感があるのだ。
「うわぁっ、すっごい人ねぇ」
メイドさんは感心したように呟いた。
「はい。本当に、凄い御方です…」
ポーラは心の奥底から頷いた。
ここまでは良かった
ここまでは。
しばし時間が経った。
そこには、どんちゃん騒ぎが繰り広げられていた。。
皆が皆テンションが高く、無礼講状態になっている。
メイドさんや使用人が主だ。
使用人の一人が、真っ赤な顔で一人のメイドさんの前に立った。
酒に酔っていることはそうだが、それだけではない感じだ。
「俺、実はずっとあなたのことが!」
嬉し恥ずかしの展開が始まった。
「え?!う、嬉しい…。私もずっと好きでした」
メイドさんも嬉しそうに笑い、まさかのOKを出した。
その瞬間、場が最大限に盛り上がった。
「いいぞいいぞ!!」「ヒューッ!!」「キース!キース!キース!」
駄目なノリが繰り広げられていた。
更にポーラさんとメイドさん達の集まりでは。
ポーラを中心に、メイドさん達が取り囲んでいた。
メイドさんは全員鼻息も荒く、ギラギラと目を輝かせていた。
「で!で!?」
ポーラの正面に座りメイドさんが、ポーラを催促する。
「あの、XXXがXXXでXXXでして…」
ポーラが恥ずかしそうに呟いた。
猥談である。
「キャー!!大胆っ!!それでそれで!?」
メイドさん達はめっちゃ盛り上がっていた。
全員の瞳が、爛々と輝いている。
「はい。私がXXXすると、シュウ様がXXXでXXXして、私はもうXXXしてしまって…」
ポーラが思い出しながらぽつぽつと呟くと、興味と興奮で盛り上がっていたメイドさんズが少し引いた。
「そ、それはすごいわね…」
ゴクリと喉を鳴らし、数人のメイドさんは『そんなことできるの?!』と驚愕している。
「そこからも、シュウ様はXXXでXXXでXXXで…。私がXXXになっても許して頂けなくて…」
ポーラは止まらない。
シュウの性癖が白日の下に!
「そ、そんなになるまで!?」
メイドさんズは、今度ははっきりと引いた。
「ええ、うそぉ…」「し、死んじゃわない?」等と呟いている。
「最後にはXXXXXXになってしまって…。最後まで意識を保っていられないのです…。どうすればいいでしょうか?」
最後には相談になっていた。
メイドさん達は唸った。
「……む、難しいわね」「ちょっと、私達には、早いかなー…」
思った以上にハードすぎる性活に、妙案など浮かばなかった。
むしろ良くそこまで覚えて入れたものだと感心する位だ。
「…シュウ様はまだまだ余裕がおありなのです…。不甲斐ないばかりで…」
ポーラは痛恨の顔で呟いた。
「…そこまで出来れば大したものだと思うんだけど」
が、メイドさんズの魂の籠った返答を喰らった。
そこからは逆に、お相手のいるメイドさん達に相談を受けていた。
奇想天外なプレイ内容を教えてもらう内に、ポーラを尊敬の目で見る様になり始めた。
その日以降、ポーラは『師匠』と呼ばれるようになった。
今年もよろしくお願いします