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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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123話 苦手

ポーラはそれ以降、寝ているナイアガライオンにゴッドソード・改を叩き込む様になった。

つまりは即死である。

全くもって酷い有り様である。


「……」


修は何も言わなかったが、普通に戦って勝てる様になるまではここで戦わせようと考えた。

武器に頼りすぎるのはよろしくない。


「苦手な物から目を逸らし、逃げ続ける一生に果たしてどんな意味があるものか…」


とツチノコさんも言っていたことだし。


しばらく戦っていたが、やはり改善はされる見込みは無い。

そのうちに『獅子殺し』でリュックがいっぱいになったので、帰った。




アルコールは一つも売らず、家に帰宅した。

荷物を置くと早速、訓練を始めることにする。


「よしポーラ、訓練だ」


修が早速扱きに入ることを宣言した。


「…はい」


ポーラもあの戦い方はよろしくないと考えていたのだろう。

大人しく頷いた。

カファは普通に対応していたので、しばらくお休みだ。




「よし、行くよ」


修は地に背をつけた、実に基本に忠実な酔拳の構えで言い放った。


「はい!」


ポーラの返事と共に、修がポーラに襲い掛かった。

地面に倒れているのに、猛烈な速度である。

正直気持ち悪い。


「よっ」


そして足払い。


「わっ!」


ポーラはあっさりこけた。

ライオンとは比べ物にならない速度なので、回避することすらできない。

これでも手加減はされているのだが。


ポーラが立ち上がり、また距離を取る。


「ほい」


そしてまた足払い。


「くぅっ!」


ポーラはお尻から地面に落ちた。

お尻を押さえながら立ち上がると、修がまた攻撃を仕掛ける。


「よいしょ」


上への攻撃と見せかけてまた足払い。


「あぅっ!」


すってんころりん。

ポーラは騙し討ちに弱いようだ。

というか、ちょっと視界に頼り過ぎている気がする。


「こう、もうちょっとね?感じるというかね?」


修は真後ろからの攻撃でも平気で対応できる。

自分では気にしたことは無いが、一体どういう理屈なのだろうか。


「…その、感じるとは…?」


ポーラは申し訳なさそうに聞いて来た。

あんな説明で分かるはずも無い。


「むむむむむ」


修は必死で考えてみた。

考えてみたが、『分かるものは分かる』と言う答えに落ち着いた。


「よし、とりあえず数をこなそうか」


そして修は考えることを止めた。


「はい」


付き合うポーラさんは大変だ。

その日は成果なく、ポーラも修も泥だらけになった。




獅子殺しは美味しかった。

しかしアルコール度数がとてつもなく高い気がする。

修は平気な顔で、カファも平気な顔だった。

が、ポーラには厳しいかもしれない。

しかし修に付き合って、ポーラは健気にも飲み続けた。


そしてポーラが突然止まった。


「ポーラ?」


気分でも悪くなったのだろうか。

声をかけてみたが、ポーラは反応しなかった。


「…ひっく」


しゃっくりしている。

修が声をかけても、反応を全く返さないのは珍しい。

と言うか初めてかもしれない。


「…ポーラ?」


再度声をかけると、ポーラはゆっくりと修の顔を見た。

顔が真っ赤だった。

目がとろんとしている。


「にゃあ」


ポーラの口から不思議な言葉が漏れた。


「え?!」


修もびっくりだ。


「うにゃぁぁ。にゃあにゃあ」


猫化した?!

犬科ではないというのか!

ポーラが鳴きながら、修にしがみ付いて来た。

修の腹の上で精いっぱい丸くなって、すりすりしてくる。

可愛い。


「……」


修がポーラの頭を撫でてみた。


「あっ、あぁ~ん!」


とても艶めかしい声をあげた。


「ええ?!」


頭を撫でたのに何故!?

修はまた愕然とした。


ポーラが引っ付いて離れなくなった。

離そうとすると、「シャーッ!」とか言い始める始末である。

ポーラさんは不思議がいっぱいだ。


結局、ポーラはその一日復活しなかった。

激しく体を擦りつけて来ていたが、すぐに眠りに落ちた。

それに酔った状態での激しい運動は危険なので、激しい運動はしない様にした。


ちなみに翌朝、ポーラの記憶は消えていた。

残ったのは二日酔いだけだった。




その日はポーラさんの看病に費やした。

とても辛そうだ。

夜になって容体が安定したので、修は獅子殺しを満載したリュックを担ぎ、親方の家に向かった。

獅子殺し飲み放題と聞いて、すぐ様ゴンザレスさん達も飛んできて、酒盛りが始まった。

獅子殺しは、日ごろ鍛えているおっさん達すらも、実に順調に殺していった。

そしておつまみを作ってくれていた女将さんが、何気に一番飲んでいた。

結局、最後まで生き残ったのも女将さんだった。

素晴らしい強さだ。




翌日からは訓練も再開した。

二日三日は、ポーラさんはやりたい放題されていたが、段々と避けれるようになってきた。


「出来る様になってきたね。どうやってるの?」


気になる修が聞いてみた。

もしかすると、修自身が説明できぬ原理が分かるかもしれない。


「風の音を…」


耳が良いから出来るのだ。

結局は身体能力が物を言うのだろうか。


まあどのような理由であれ対応できるならば問題はない。

そろそろ本番も試してみよう。

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