表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その拳にご注意を  作者: ろうろう
123/136

120話 お年頃

修の伝えた、リップへの対策方法は実に効果的だった様だ。

探索者の、特に女性は手鏡を持ち歩くようになった。

小さな鏡でも、奴は自分にトリップ出来るようだ。


女性達は、公然と手鏡を持ち歩けることが出来て大喜びだ。

出来るだけ身軽にするのが基本であるため、泣く泣く置いていた鏡を持ち歩ける。

実に素晴らしいことだ。

ちょくちょくお色直しができるし。


そんな話はさておき、修は一人で歩いていた。

女将さんに口紅を届けるのだ。

親方も喜んでくれるだろう。


「あ、シュウ様!」


可愛らしい声が、修の足を止めた。

修は御近所の優しいお兄さんの微笑をたたえて振り向いた。


「マテナちゃん。こんにちわ」


そこにはマテナが居た。

少し遠くから声をかけて来たようで、駆け寄ってきている。

SPさん達も大変だ。


修の目の前で停止したマテナが、キラキラと輝く眼で修を見上げて来た。


「こんにちわ!今日はお一人ですか?」


同時に油断ならぬ光も灯して、修の周囲を仰ぎ見る。

乳魔人ポーラさんでも探しているのだろうか。


「うん。ちょっとお届け物をしようとね」


修が一人だと分かると、マテナの顔がゆるんだ。

しかしお届け物、と聞いて不思議そうな顔を浮かべた。


「お届け物ですか?」


探索者の修がわざわざお届け物。

位が高い人に何か送るのだろうか。


「うん。これなんだけどね」


修が小袋を取り出し、中身をマテナに見せた。


「…口紅ですか?」


多様な色の口紅が入っていた。

そして口紅を送る相手と言えば、女性だ。

マテナの顔がこわばり、見る見るうちに警戒心を引き上げて行く。


「うん。いつもお世話になってる人の奥さんにね」


敵ではなさそうだ、とマテナがほっと安堵の息を吐いた。


「そうなんですか」


恐れていた事態ではないと分かると、今度は口紅に興味が向いた。

お化粧はしたことがある。

あるとはいっても、メイドさんや母にしてもらったことくらいだ。

自分ではしたことは無いし、ましてや口紅は使ったことは無い


興味深そうに、じーっと口紅を見つける。


「…マテナちゃんも欲しい?」


修がマテナに問いかけた。


「え!あの、つけたことが無くて…」


催促したかのように思われたのだろうか。

マテナは頬を恥ずかしげに赤く染めながら、あわあわと言い訳を口に出した。


「確かにマテナちゃんにはまだ早いかもねぇ」


が、修のセリフでカチンと来た。

マテナは立派なレディのつもりなのだ。


「…ください!」


声を大にして、催促した。


「うん?…はい」


修は多少びっくりした様だが、大人しく渡した。

あまり目立たぬ、薄いピンクの物だ。

12歳にどぎつい赤はちょっとね。


受け取ったそれを、マテナがむむむむ、と難しい顔で睨み付けていた。


「……」


しかしすぐに、意を決した。

女は度胸!と言わんばかりに、豪快に唇にひいた。

そして修に顔を見せつけた。


「ど、どうですか?!」


修は苦笑した。


「ふふふ。ちょっとはみ出てるね」


鏡も見ずに、しかも初めての口紅だ。

当然のことだろう。

むしろちょっとで済んで御の字だ。


「ええ!?」


マテナは慌てて口紅を取ろうとしたが、下手にすると伸びてしまう。

修が、俊敏にマテナの口に布を押し当てた。


「ほら、じっとしてて」


そして丁寧に紅を取って行く。

何故か手慣れている気がするが、気にしてはいけない。


「あ、あぅぅ」


急激な大接近に、マテナは嬉し恥ずかしで、真っ赤になってしまった。


「ほら、綺麗になった。お家でお母さんに教えてもらうといいかもね」


すぐに離れた修が、お兄さんスマイルを浮かべながらマテナの頭を撫でてあげた。


「は、はい…。あの、ありがとうございました!」


真っ赤な顔のマテナは、礼もそこそこに、修に背を向けて走り出した。

恥ずかしかったのだ。


「気を付けてねー」


修はひらひらと、マテナの口を拭った布を振って見送った。


ちなみに、マテナは帰って早速、母親に聞いた。

が、やっぱりと言うべきかまだあまり似合わない。

まだまだ可愛らしい顔なのだ。

マテナが修から口紅を貰ったと知ったファウスは、ガッツポーズだ。




翌日に35層を進めた。

そして見つけたボスは、やはり美形である。


----------------------------


LV.35

ボス・リップ


----------------------------


しかし男ではない。

女だった

開襟シャツとズボンは変わらなかったが、バインバインのボインボインだった。

真っ赤な唇を、艶めかしい舌をなぞっていた。


「…ッ!」


溢れ出す色気。

修は思わず、ごくりと唾を飲んだ。

その修の視界を遮る様に、ポーラが進み出た。

むしろ完璧に遮っていた。


「…私が」


冷えた声だった。


「…はい」


修は実に素直に、背を向けた。


ボス・リップは、「お嬢ちゃん、お姉さんとイイコトしない?」と言う目でポーラを見つめて来た。

ポーラは実に忌々しそうにボス・リップを見つめ返すと、カファの背を軽く叩いた。


「……」


カファが進み出る。

当然大盾を構えている。

ボス・リップは、「あら、そちらがお相手かしら?」と言う目で、カファを見た。


その瞬間、ボス・リップはハートを撃ち抜かれた顔をした。

お尻をぷりぷりと振りながら駆け寄りつつも、ズボンの腰に指を突っ込んだ。

指が引き抜かれた時、するりとパンツが出て来た。

紐パンだったのだ。


更に走りながらシャツをパージして、ポーラさんと比べても劣らぬ胸をばいんばいん揺らして、一直線に鏡に映った自分に駆けて来る。

そして盾の抱き付く前に。


「はああああああっ!!」


ポーラさんが咆え、ゴッドーソード・改を振り抜いた。

何故か神々しい光が輝き、光の軌跡が5メートルほど伸びた。

光が消えた時には、ボス・リップは消滅していた。


「エクス○リバーッ?!」


規模は小さいが、どこぞの宝具みたいな感じだ。

ゴッドソードにこんな機能が!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ