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その拳にご注意を  作者: ろうろう
12/136

10話 選択とご褒美と

修たちは、二層でしばらく戦った。

ポピーも、当然のことながら


「セイッ!!」


で即死だったが、ポーラはブルーラビットよりも多少時間がかかっていた。

しかし、手慣れて来たのか、同じくらいの時間で倒せるようになっていた。

暫くの探索で、リュックが猪の皮でいっぱいなった。


「よし、そろそろ帰ろうか」


それを確認して、修がポーラに話しかけた。


「はい」


ポーラも異議はないようで、素直に頷いた。

二人で入り口まで戻りながら、ふと修が呟いた。


「しかし帰るのはめんどくさいね」


ポーラが目を丸くした。


「え?」


修も不思議そうに首を傾げた。


「ん?」


ポーラは、すぐにいつものアレだと気付いた。


「あ。えーっと、帰るときはすぐです。二層に居るので、一層への扉を潜れば、外に出るか一層に戻るか選べます」


ポーラの説明を聞いて、修は感嘆した。


「・・・それは便利」


ポーラは頷き返し、続けて言った。

恐らく、これも知らないのだろうと思った。


「はい。・・・あと、潜る時も、到達階層まで一気に潜れます。PTリーダーのご主人様がいらっしゃれば、ですけど」


修は感心しきりだった。


「至れり尽くせりだね」


思わず呟くと、ポーラは曖昧に頷いた。


「・・・はぁ」


この世界に生きるポーラにとっては当然のことであったのだ。

何と言ったらいいのか悩んでいるうちに、修はさくっと頭を切り替えたようだ。


「それじゃあ帰ろうか」


「はい」


ポーラの言う通り、扉を掴むと頭の中に何か出て来た。

便利だなぁ、と思いながら、迷宮の外に出たいと念じると、その通り、突如入り口に転移した。




受付は何人もいるようで、初めて見る顔だった。

どっさりと素材を渡すと、受付は少し目を見張った。

しかし手慣れた様子で換金作業を行ってくれた。


「はい。換金できました。こちらが報酬です」


「ありがとうございます」


ブルーラビットよりも高かった。

ギルドを出てもまだ夕暮れ時だったため、修がポーラに語り掛けた。


「食材買って帰ろうか」


「あっ。ご主人様はお先に休まれていてください。私が買って参りますので」


ポーラはしっかりと言ってきた。

奴隷としての矜持があるのだろうか。

しかし、修は首を振った。


「いや、いっしょに行くよ」


「は、はぁ。・・・・すいません」



ポーラは何故か頭を下げて来た。

気を使ってもらったと勘違いしたようだ。

勿論それもあるが、それだけでもない。

修もいろいろ見て回りたいのだ。

苦笑していった。


「俺が行きたいんだから、謝る必要はないよ」


「は、はい」




カマン商会に行って、ポーラが食材を見繕っているうちに、カマンを訪ねた。

しかし、残念ながら不在の様だった。

仕方なくポーラの元に戻ると、食材を決め終えたようだった。


ポーラのリュックに満載された食材を見て、修は呟いた。


「たくさん買ったねぇ」


ちなみに、半分受け持とうとしたが、断固として断られた。

ポーラは頷いた。


「はい。ご主人様はたくさん食べて下さいますので」


何だか無駄飯ぐらいだと言われたような気がして、修が苦笑いした。


「ははは・・・ごめん」


ポーラは修が勘違いしたことに気付いたようで、慌てて口を開いた。


「あっ!違います!う、嬉しいんです・・・。ですから・・・・」


「そっか。ごめんよ」


修も自分の勘違いに気付いて、素直に頭を下げた。


「・・・はい」


ポーラはほっと胸を撫で下ろしていた。


二人で無言で歩いていると、正面から数人の女性がきゃいきゃいと騒ぎながら歩いて来た。

すれ違ったその時に、ポーラの瞳が女性の首に光るネックレスを捕えていた。

修は、それを目ざとく見つけた。


「・・・欲しいの?」


ポーラに話しかけると、ポーラは少し意識を飛ばしていたようで、慌てた様子で言った。


「・・・え?あ!いえ、その・・・・」


正直に言えば欲しいが、奴隷の身分でそんなものをねだるわけにもいかない。

意を決して断ろうとしたが、その前に修が何でもないことの様に呟いた。


「いいよ。今日は結構稼げたし」


「で、ですが。その・・・・」


ポーラの決心がぐらぐら揺らいだ。


「ほら、あそこにお店あるよ」


そんなポーラの手を引いて、装飾店と思われる店に向かってずんずんと歩き始めた。


「あ・・・・・・・・」


ポーラは結局装飾店に連れ込まれた。




きらきらと輝く金属と宝石の中で、ポーラは視線をせわしなく動かしていた。


「ほ、本当に、よろしいのでしょうか・・・・?」


恐る恐る修に問いかけると、修はにこやかに笑った。


「いいよいいよ。ポーラは美人なんだから。もっと綺麗になると嬉しい」


ポーラの頬が紅色に染まった。


「・・・・・ありがとうございます」


「じゃあ好きなのを選んで」


修はそう言って、端っこに逃げた。


「はっ、はい」


修は女性だらけの店の雰囲気に押されたのだ。

しかし、修も女性の様な見た目だ。

あまり違和感は無かった。

もっとも、女性にしては背が高めだが。

ポーラはふらふらと、女性たちの中に紛れて行った。




無心で壁と一体化していた修の元に、ポーラが現れた。


「あっ、あの」


「ん?決まった?」


修が精神的擬態を解いた。

ポーラの手には、三つのアクセサリーがあった。

どれもチョーカー型だった。


「ここまでは決めたのですが・・・。宜しければ、ご主人様に選んで頂けると、その・・・・」


OH!!

修は心の中で呻いた。

この展開は知っている。

アニメや漫画で何度か見た展開だった。

外すとビンタコースだ。


「う~んう~ん」


修は冷や汗をかきながら必死に見つめた。

どれも、動き易さを重視したものだった。

激しく動いても邪魔にならない様に、チョーカーを選んだのだろう。

もしかすると犬だからかもしれない、と微かに思いもしたが、雑念を振り払って必死に選んだ。


しかし、修が見ても、どれも似たデザインだった。

ちらりとポーラを覗き見ると、期待するような瞳でこちらを見ていた、


「・・・・・・・・・」


修は心臓の鼓動を激しく感じた。

何度も何度もポーラの首にチョーカーを合わせて、似合うかどうか調べた。

どれも似合っていた。

ならばとばかりに、ポーラの反応を伺う。


(これかっ!!)


「これかな」


一つを指差した。

真っ黒なチョーカーで、中心に銀の飾りが輝いている。

小さな飾りだが、品の良さを感じるものだった。


「ありがとうございますっ!!」


正解だったようだ。

修は全身の力を、溜め息と共に吐き出した。



購入したチョーカーを修に着けてもらったポーラは、上機嫌だった。


「~~~~~~♪」


リュックに荷物を満載だと言うのに、鼻歌を歌いながら踊る様な足取りだった。

豊満な胸がぷるんぷるんと震えて、男の視線を釘づけにしていたが、気付く様子も無い。

尻尾もパタパタと激しく動いていた。



その日の夕食は、やけに気合が入ってた。

丁寧なのはいつも通りだが、なんだかそういう気を感じた。


夜にベッドで横になった頃に、またポーラが現れた。

称号を変えてみた。

何にとは言わないが、ポーラはとても乱れた。


ポーラは結局、修のベッドで力尽きた。

すーすーと安らかに寝息を立てるポーラを見て、こっそりポーラのベッドは必要なかったのではないかと思い始めた。



そして、寝る前に鑑定をしてみると、レベルが上がっていた。


----------------------------


LV.10

カンザキ シュウ

人間:♂

18


拳士LV.■■

経験値獲得アップLV.3

攻撃魔法LV.3

回復魔法LV.3


鑑定

状態異常無効

称号変更


『探索者』

『拳を極めし者』

『神を殴りし者』

『ご主人様』


所有物


ポーラ


----------------------------


----------------------------


LV.4

ポーラ

獣人:♀

17


剣士LV.5


『○○○』

『探索者』

『奴隷』



カンザキ シュウ


----------------------------


ポーラの上りが凄かった。

恐らく、そのおかげでポピーを倒す速度が上がったのだろう。

スキルによっても、上がりやすさが違うのかもしれない。

ポーラの称号を戻して、修も目を閉じた。

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