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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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113話 誇りを取り戻せ

男性用Tバックを全て売り払った。

ギルドの受付のお姉さんの事務的な瞳が辛い。

とてもつらい。

魔物が落とす物なので変な意味は無いが、この冷たい目を見ると、邪推してしまいかねない。


修はそそくさとギルドを出た。

出たところで、声をかけられた。


「よう、久しぶりじゃねーか」


「あ、お久…ぶ、…り?」


修は脊髄反射で挨拶し返したが、途中で訝しげな顔になる。

「誰だっけ?」と書いてある。


そこに居たのは、ゴリラの獣人だった。


「…アスカンだ。あんときは世話になったな」


アスカンは多少傷ついた様子だったが、名乗ってくれた。

と言うか以前見た時よりも体が一回り大きい気がする。


「…ああ」


修はそんなことを思いながら頷いた。

顔にも体にも傷が沢山ついている。


アスカンがその視線を受け、ニヤリと笑った。


「あれから鍛え直してるんだぜ。…こいつとな」


アスカンがそういうと、その巨体の影から金ピカが現れた。


「久方ぶりだな、貴君」


セイントさんだ。

相変わらずのオリハルコン一式だ。

修のデコピンを喰らった額当てが治っている。

ちゃんと修理したのだろう。


「あ。お久しぶりです」


流石の修も覚えていた。

温泉に行くきっかけを作った人物でもあるのだ。

しかしセイントをよく見れば、アスカン同様一回り逞しくなっている気がする。


「…私もあれから修行を行った。が、貴君の境地にはたどり着けぬ。だが二人ならどうか、と言う話になったのだ」


どうも修行に行き詰っている時に出会ったらしい。


「くくく。まだまだ途中だがよ。一度確かめさせてくれねぇか?」


アスカンはそう言いながらも、自信に満ち溢れた笑みを浮かべた。

確かめるどころではなく、勝つ気なのだろう。

セイントも同様に、静かな自信を溢れさせている。


「…まあ、大丈夫ですけど」


修はおざなりに頷いた。


「『黄金騎士』と『黄金玉』だ!」「二人がかりか!?」


周りの人が騒ぎ始めた。

どこの人もお祭り騒ぎは大好きなのである。


「…場所だけ変えましょうか」


またファウスがすっ飛んでくる前に、修は慌てて二人を街の外まで連れて行った。




三人の速度に追いついて来れる人はいない。

ちなみにポーラは着いて来たが、カファは普通に帰宅した。

おかげで、審判役はポーラだ。


「では参る!」


「いくぜぇ!!」


二人が叫び武器を抜いた。

アスカンは前回の反省を活かしたのだろうか、金の球を振り回すことはせず、素晴らしい腕力でいきなり球を放り投げて来た

修が実に落ち着いて、弾き飛ばそうとしたところで、アスカンがニヤリと笑った。

次の瞬間、アスカンが光り輝いた。

その光量は凄まじく、修とポーラの目が真っ白になった。


「む!?」


しかし修は目が見えずとも、金の球を容易く受け止めた。


「…見事!!」


次の瞬間、セイントが凄まじい踏み込みと共に、修に向かって斬りかかって来た。

アスカンに背を向けていたことで、光に眼を焼かれなかったのだ。

その一刀は、手加減は一切されていない。

修は目が見えぬまま、オリハルコンの剣を真剣白刃取りした。


「ぬぅ!?…しかし!」


渾身の一撃をあっさりと防がれたセイントは、「流石は!」と言う意図を込めて唸った。

しかし次の瞬間、オリハルコンの剣が、爆炎を放った。


「お?!」


しかしそれすらも、修は超反応で反応して手を離した。

別に触っていても熱くは無いが、前回の反省を活かし、ある程度は善戦させてやるつもりだったのだ。

驚いたのは本当だし。


修はそのまま、セイントから間合いを取った。


「これまで避けるとは…!!」


「とんでもねぇ野郎だぜ…!!」


セイントも修から飛び離れ、アスカンの隣に立つ。


「だがそれでこそ!」「倒しがいがあるってもんだぁ!」


この二人は気が合うのかもしれない。

実に息ピッタリに叫んで、二人が修に襲い掛かる。


そして視力を取り戻した修は、二人の装備を鑑定した。


恐ろしい物を見つけた。

セイントには『爆炎の勝負パンツ』。

アスカンには『閃光のTバック』。

それも、武器ではない。

下半身に。

下半身に表示された。


「ーーーーーーッ!!」


修は愕然とした。

履いているのだ。

普通に履いているのだ。

中年のおっさん達が。

イケイケな女性用下着を。


何と言う覚悟か。

誇りさえ捨て去り、力を求めた武士もののふ達に、修の頬を涙が伝った。


そこまでして力が欲しい物なのか。

人はどこまで罪深い生き物なのか。


「力じゃ、力が生き物を狂わせるのじゃ…。修よ、お主は力に狂ってはならぬぞ」


ツチノコさんの言葉が修の脳裏を駆け巡った。


動揺に揺れる修に隙を見た二人が襲い掛かる。

アスカンの二つの金玉が、セイントの金色の剣が。

修の体に襲い掛かる。

しかしその攻撃は、修の体を通り抜ける様に外れた。


いや、攻撃は当たったのだ。

当たったというのに、手ごたえが全くなく、するりと体を滑ったように見えた。


「こ、この動きは!?」


「流水の、動き…!!」


セイントとアスカンはびっくりだ。

数多の戦士たちが身に着けようとした動きを、この年若き青年が行ったのだ。


流水の動きの前には、二人の攻撃は無意味だった。


「く、くおおおおおお!!」


セイントが斬りかかっても、爆炎を浴びせ掛けても。


「ううおりゃああああ!!」


アスカンが輝き、金玉をぶつけても。


修にはダメージを与えることは出来なかった。

修は流しに流し続け、そして遂に二人は力尽きた。


「…もう良いでしょう」


激しく呼吸を乱し、二人が膝をついたところで修は訴えた。

最早勝負はここまでだ、と修は彼らに背を向けた。

願わくば、人としてのプライドを取り戻してほしい。

具体的に言うと男物のパンツを履け。


「…待ってくれ」


「止めくらい、刺して行きな…!」


修はせめて痛みを知らず安らかに気絶できるように、二人にデコピンを叩き込んだ。


「…」


背に哀愁を漂わせながら歩く修を見るポーラさんの目は、終始キラキラしていた。

Left○Dead分からない人のために


①バイオハザードを想像してください

②ゾンビが全力で走ってきます。頑張りましょう

③他にも不思議な攻撃をしてくるゾンビが居ます

④味方は4人一組です

⑤一人だとすぐに死にます。協力して生き残りましょう。


バンシーの元ネタ


①道路の真ん中で泣いている女性が居ます

②ライトを消して近づきます

③ヘッドショットで瞬殺を狙いましょう

④失敗したら瞬殺させられます

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