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その拳にご注意を  作者: ろうろう
114/136

111話 踏んだ

32層を歩いていると唐突に、修の足元で『カチッ』と音が鳴った。


「あ」


修が足元を見ると、何かのスイッチがあった。

これが魔法陣ならそのまま踏み抜いてやったのだが、どうも様子は違いそうだ。

修から少し離れたところに魔法陣が浮き上がった

20層でポーラの言っていた魔物の出るトラップだろうか。


修がポーラを、『やっちゃった?』と言う目で見る。

ポーラは、『お気になさらずに』と言う顔で頷いた。

良くできた娘である。

あとで褒めて遣わそう。

そんな偉そうなことを考えながら、魔法陣を見つめる。


すると魔法陣の中から魔物が現れた。

マーマンだ。

レベル32のマーマンは、なんとノコギリエイを携えていた。

自分の体よりも長いノコギリエイの胴体を抱えて。

マーマンが駆けて来ると同時に、海からふんぞり返ったカイザーが、シャチに乗って運ばれてきた。

修はマーマンに向かって一歩進み出た。

自分で出した分の責任は取るつもりだ。

ポーラはそれを見て、カイザーに向きあう様に振り向いた。




修はマーマンを、カイザーをポーラ達が戦うようにする。


ノコギリエイは、大いに暴れていた。

マーマンはそれを必死に押し留めているように見える。


「あ」


と、思っていたら、マーマンの拘束を振り払って、ノコギリエイが修に向かって飛んで来た。

攻撃的だ。

逃がしたマーマンは、一瞬悲しげな顔をしたが、すぐに気を取り直して懐から魚を取り出した。

ダツだ。

取り出したダツを手裏剣の様に投げて来た。

それも、投げた矢先に新しいダツを取り出し、次々と。

かなりランクアップしている気がする。


「はぁっ!!」


修は迫るくダツとノコギリエイに対して、素早い突きを次々に繰り出しながら突進した。

北斗羅○撃っぽいが、あまりの突きの速度に軽く赤熱している。

しかし修は微塵も熱そうな顔はしない。

魚介類の群れを悉く塵に返し、更にはマーマンまで消滅させた。

醜く焼けただれるまでもない。


そして修が振り向くと、ポーラが舞っていた。

カイザーはちょうど、玉座から跳んだところだった。

そのカイザーに、ポーラが空中で襲い掛かっていた。

バイオレンス。


空中で技を放とうとしたカイザーに対し、その隙を与えず空中で斬撃を叩き込んだ。

着地するまでの間に、5発も。

オーバーキルである。

カイザーは着地する前に、その命の炎を燃やし尽くした。




「ごめんね」


修がポーラ達に謝った。

転移の魔法陣なら踏み砕いてやるのだが、スイッチは踏み砕いても意味は無い。

問題は無かったが、修は礼儀として謝っておいた。


「いえ、大丈夫です。お気になさらないでください」


ポーラは聖母の様だ。

そしてカファは気にした様子も見せない。


「うん」


修はほっと胸を撫で下ろした。

一瞬で悪気は失われてしまった。

もう少しは気にしろ。




そこからは特に描写する必要も無く、ボスまで辿り着いた。


「…あれ?」


いや、いなかった。

一面に海が広がり、何処を歩いても膝まで海に浸かる様になっている。

後で装備を磨いておかなければならない。

それはさておき、玉座型のシャチはいる。

だと言うのに、肝心のカイザーが居ない。


----------------------------


LV.32

ボス・カイザー


----------------------------


シャチを鑑定すると、ちゃんと出て来る。

修が不思議そうな顔で見ていると、シャチがすーっ、と近づいてきた。

そしてそのまま、シャチが突撃して来た。


「……む」


その巨体の体当たりをカファが受け止める。

流石に押されているが、しっかりと受け止めきった。

何と言う筋力か。


「おおっ!?」


そしてその瞬間、シャチの口の中からカイザーが飛び出してきた。

喰われてるんじゃねーか!!と突っ込みたくなる。

飛び出したカイザーは、そのままカファに猛攻を仕掛けて来る。


流石のカファも、シャチとカイザー二体の攻撃は厳しそうだ。

そこで、ポーラが飛び出した。

ちょろちょろと動き回るカイザーではなく、巨体故に突進しかしてこないシャチに向かって。


「せいっ!!」


気合と共に、疾風怒濤の勢いで攻撃を叩き込む。

その余りの勢いと攻撃力に、シャチの巨体が天に召された。

と、思った瞬間、すぐにシャチが体勢を整えた。

「自分、まだまだやれるッス!」と言った顔をしている。

一度確かに倒した筈だが、再生したのだ。

どこぞのパンダと同じく、このシャチはカイザーの一部なのかもしれない。


「交代!」


ポーラもそう判断したようで、シャチを燃やしてからカイザーに向けて駆けだした。

そしてカファに攻撃を仕掛けているカイザーに斬りこみ、隙を作る。

カファはその間にカイザーから一歩距離を取り、シャチに向かって駆けだした。


カイザーは、先ほどまでのイケイケから一転し、一気に追い詰められた。

攻撃しか能が無いのかもしれない。

超攻撃的なポーラさんに押されまくりだ。


シャチは何とかしてカイザーの援護に回ろうとしているが、カファが通せんぼしているので、それも叶わない。

ポーラ相手に後手後手に回るカイザーは、ちらりとシャチの様子を見て、増援が期待できぬことを悟った。

同時に、「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」と瞳を燃やして果敢にポーラに襲い掛かった。


「はぁっ!!」


真っ向から唐竹割を喰らった。

カイザーは死んだ。




迷宮から帰宅した。

ポーラとカファは相変わらず昼からも迷宮に向かった。

勤勉なことである。

もしくは肉の魔力かもしれない。


修もふらふらと歩いていると、ハルマと出会った。


「あ…」


何と言ったら良いのか。

修はハルマを慰めようと思ったところで気付いた。

晴れやかな顔をしている。

解決したのだろうか。


「こんにちわ」


修がハルマに声をかけた。

するとハルマは柔らかい笑みを浮かべた。


「ああ、昨日は世話になったわね」


昨日の悲壮感はそこには全く見当たらない。

あの問題を解決したと言うのだろうか。

だとしたら、一体どうやって。


「はい。…あの」


修がちらりとハルマに視線を投げかけた。

すると、ハルマは深く微笑んだ。


「ええ、大丈夫よ。私たちはもう大丈夫」


力強く言い切った。

一体どうやって解決したと言うのだろうか。

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