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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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108話 大人って汚い

修は不思議空間で目を覚ました。

もう慣れっこだ。

修は実に落ち着いて神を探すと、やはり遠くにいる神が近くにやって来た。


「ねぇねぇ!ゴッドソードはどうしたの!?」


修はまず真っ先に前回見たゴッドソードの事を聞いた。

どう見ても聖剣と言う見た目のアレが気になって仕方がない。

神はゴッドスマイルを浮かべた。

が、自慢したい気持ちを隠し切れず、あまり神々しいとは言えない笑みだった。


「ふふ…。地上に送りましたよ」


「えー!!」


修が非常に残念そうに眉を寄せた。


「もっと見たかったなぁ…。チョーかっこよかったよアレ…」


修が悔しそうに呟くと、神のテンションが超上がった。


「でっすよねー!?もぉー修さんだから特別に、ちょっと見せてあげますよ」


見せたくて見せたくて仕方が無かったのだ。


「マジで!?お願いお願い!!」


修の顔がパッと輝いた。


「ふふふふ。特別ですよ?…んんん……はい!」


神が少し唸ると、手の中にゴッドソードが出現した。

前回作ったのは地上に送ってあるので、新しく作ったのだ。

悩みに悩んだすえに決定したデザインは、忘れる訳も無い。


「うおおおおおおお!!やっぱかっちょえええええええ!!」


修がキラキラと瞳を輝かせる。

ゴッドーソードもキラキラだ。


「ふはははははは!!もっと!もっと褒めてください!!ぶははははははは!!」


神のテンションが突き抜けた。


「ちょ、ちょっと触らせてもらっても良い…?」


修がもじもじとしながら神をちらちらした。


「んもぉ~、しょうがないですねぇ修さんは。ちょっとだけですよ?」


神はすげぇ嬉しそうな笑顔で、指で「ちょっとだけ」のジェスチャーをしつつ、修にゴッドソードを手渡した。


「わーい!ありがとう!!」


修はゴッドソードを受け取ると、ぶんぶんと振り始めた。


「すっげぇ軽い!!何これ何これ!!何で出来てるの?」


ちゃんと手加減はしている。

最初全力で振ろうとして、折れかけたのに気づいて慌てて調整したのだ。

神は気づいていないので一安心だ。

修にとってはおもちゃだ。


「ふふ。私のゴッドパワーですよ。この世に斬れぬものはありませんとも」


神は自信に満ち溢れた顔で言った。

さっき折れかけたけどな。


「うおおおおおおおおおお!!」


それでも修にとっては良いおもちゃだ。

キラキラした剣状の物を触れれば満足なのだ。

おこちゃま。


「凄いでしょう?これがあれば無敵ですよ!」


神が鼻息も荒く言い放った。

剣が強くても、無敵にはなれません。


「でも使いにくいよね」


修はあっさりと言った。

戦闘には冷静だった。


「え”!?」


神の笑顔が固まった。

修は神に、この剣の駄目さを伝えて言ってあげた。


「ほら、こういうのとかさ。実際に使うと邪魔なんだよね」


刀身のデザインから。


「柄も大きすぎるよ。ちょっとバランスが」


柄の形も。


「剣の重心がちょっと…」


あまつさえ剣自体にも。


もうやめてあげて!と言いたくなるくらいフルボッコだ。

玩具と実剣は違うのだ。


「……しょ、象徴ですから……。その……」


神は息も絶え絶えの様子だ。

さっきは無敵って言ってたじゃないか。


「使いやすいのは作らないの?」


修の無邪気な瞳が神を苛む。


「…そうですね。作っておきましょうか。ええ、あくまでサンプルですけどね?」


神のお勉強が始まった。




そして出来上がった。


「ほらほら。こういうのが使いやすいんだよ」


実にシンプルな造りになっていた。

神が意地で不思議な模様とかをつけていたが、剣事態の形は普通だ。

ちょっと神々しいけど。


「………」


神もやはり、格好良くないのが不満そうだ。


「十分カッコいいと思うよ?それにほら、使う人のこと考えないと」


修が実にそれらしいことを言った。

前に作っていたゴッドソードは、どう見ても儀礼剣だ。

ゴテゴテして使いにく。


「…確かにそうですね…」


神もようやく、剣を使う人がいることを思い出した。

修は、神があまり気に入っていないことを良いことに、突如とんでもないことを言い放った。


「ねぇねぇ。これ貰えない?」


神は仰天だ。


「ええ!?いくら修さんでもこれはちょっと…」


というか修に渡しても使い道が無い。

この男であれば、剣で出来ることは、全て手刀で賄うだろう。

クレイジー。


「…ホッケーマスク」


修がぼそりと呟くと、凄く心当たりのある神がビクリと震えた。


「前、イカの話も聞いたよね。あれも作ったのかな?」


修が虚空を見つめて呟いた。

神の頬を冷たい汗が伝った。

凄く作る気満々だったのだ。


神は脅迫に屈した。


「……あとで送ります」


ぼそりと呟いた。


「ありがとう!大丈夫だよ!変なことには使わないから!」


「…はい」


神は凹んでいるが、気にしてはいけない。

この僅か一時間後に、逆に許可を得たとして、嬉々としてイカの魔物を作り始めたのだから。

強かである。




そして朝。


「おはよう、ポーラ」


「おはようございます、シュウ様」


今日も朝からポーラは美人だ。

挨拶をした後、軽くキスまでしてくれる。

実に素晴らしい朝だ。

二人揃って大きく伸びをした。

ポーラさんの伸び方は犬っぽい。

お尻をこっちに突き出すとは。

朝からご所望なのだろうか。


修がお相手仕ろうかと悩んでいると、突然。


「…ん?」


天井から神々しい光が振って来た。


「えええええ?!」


ポーラさん仰天。


光は修の手元にまで落ちた後、何故か荘厳な音楽が流れ始めた。

更に純白の羽がハラハラと落ちて来たかと思うと、剣がゆっくりと落ちて来た。

何か、『ラーラー』とか変な音が。

剣が修の手元に落ちると、光とか音は消えた。

羽はそのままだった。

掃除しないと。


「しゅ、シュウ…さま…?」


ポーラは震える声だ。


「そ、それは…?い、今のは…?」


ポーラさんは何が起きたのか理解できていない様だ。

修も、神を知らなかったら混乱していたかもしれない。

神はこうして、元祖ゴッドソードも地上に降ろしたのだろうか。


修は悩んだ。

神と友達なんだ、と言うのは流石に不味いのかもしれない。

その為、修はポーラに指を突き出し、ぐるぐる回し始めた。


「ポーラは何も見なかったー。ポーラは何も見なかったー」


ポーラの目が一瞬でトリップした。


「…ワタシタハナニモミナカッタ…」


感情の宿らない目で呟き始めた。

ツチノコさんにこの術を習っていなかったら危ないところであった。

ありがとう、ツチノコさん。


「ふぅ。危ないところだった…」


修はゴッドソード・改をベッドの下に隠した。

エロ本か。

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