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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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101話 ビンタ一発入ります

サムハンは鼻血を出して倒れたようだ。

何と言う純情。

彼が主人公でもいいんじゃないだろうか。


介抱をしようとしたシャラとカリアは、更に悪化するとしてガザリーに追い出されていた。

良く絞った布で目を覆ったハンサムが、ガザリーの甲斐甲斐しい看護を受けていた。


「すまない、ガザリー…」


貧血気味のサムハンが、枕元でどっしりと座るガザリーに感謝の言葉を告げた。


「気にするな、仲間だろう」


ガザリーマジ兄貴。


「ガザリー…」


感極まったサムハンが呟いた。

こっぱずかしい空気の中、ガザリーが微笑んだ。


「ふっ。申し訳ないと思うのなら安静にして、体調を整えろ」


実に兄貴だ。

熱を持った布を新たに水に浸し、ぎゅっと絞ってまたサムハンの額に置く。


「…ああ。いつもすまない」


ガザリーはもう何も言わず、軽く鼻を鳴らしただけだった。


「ふっ」


二人の間に、心地良い雰囲気が流れる。

男同士、もう言葉は必要ないのだ。


それを草葉の陰から、シャラが見つめていた。

シャラは何故かはらはらしていた。

そのシャラの影で、カリアが象さんとらなければよかったかと爪を噛んでいる。

もう駄目かもしれない。




そんな喜劇を繰り広げたサムハン達は、数日逗留した。

サムハンとガザリーの間を危惧した乙女達が何とかしようと頑張っていたが、ガザリー兄貴の鉄のブロックに阻まれていた。

サムハンも、ガザリーの側にいれば安心して温泉に入れることを学習したため中々離れない。

それが、更に乙女達を焦燥させていく。

恐ろしい悪循環だ。


そんなことともあったが、普段はおおむね平和だ。

毎日、修とも手合わせをして、充実した温泉生活を送っていた。

そして数日後。


「また来るよ」


サムハンの肌が艶々していて、ハンサム度が増している。

眩しいばかりだ。

というか女性よりも美肌になっている。

一体どういうことなのだろうか。


「はい。またうちにも来てください」


修が笑顔でサムハンの手を取った。

こいつもむやみやたらに美肌だ。

乙女の敵である。


「ああ、その時はお世話になるよ」


サムハン達は帰って行った。




翌日には、修達も迷宮に潜った。

29層だ。


「あの野郎…」


これが魔物を見た時の修のセリフだった。

誰に向かって行ったかは説明する必要はないだろう。


----------------------------


LV.29

ドリマー


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そこに居たのは、スイマーだった。

海パンとキャップ、目にはご丁寧にゴーグルまで装着している。

普通に水泳している人間の見た目だ。

肌の色が土色なので人間ではないが。


そしてドリマーを見て修が呟いた理由があった。

ドリマーは、両手を伸ばして頭の上で重ねていた。

潜水している時の体勢と思ってもらってよい。

その体勢のまま、回り続けていた。

ご丁寧に、口で「ちゅいーん」とか言っている。

ドリルのつもりだろう。


「ファイアバースト!」


最早生かしてはおくまいと、修が火球を放った。


「ちゅいん!?」


ドリマーが気付いて、声を発した。

ムカつく。

ドリマーはその体勢のまま、腕の先端から地面に飛び込んだ。

手が地面に突き刺さった瞬間、ドリマーが本物のドリルの様に高速回転し、何と一瞬で土の中に消えてしまった。


「なん、だと…!」


避けられたのもショックなら、地面に潜ったのもショックだった。

そして僅か1秒後、地面から修に向けてドリマーが突撃して来た。

スゲー高速回転している。


「ちゅいーん!!」


超ムカつく。


「セイッ!!」


修は華麗なバックステップで突撃を回避し、手刀を叩き込んだ。

先端であわされた手ごと、胴体を真っ二つだ。

ドリマーは死んだ。


落としたのは、真っ二つにしたはずの『ゴーグル』だった。

海パンではなくて一安心だ。


「水泳にも、採掘にも使われます。鍛冶屋の方も使われるそうです」


ポーラ先生が教えてくれる。

何と言う高スペックゴーグルなのか。

こうして世界は便利になって行くのだろうか。




ドリマーは実にふざけた見た目だったが、普通に強かった。


「……う」


特にカファは苦労していた。

大盾をくぐって、地下から飛び出してくるのだ。

カファは大盾を手放して、慌てて飛びのいていた。

良い判断である。


足元から突然突っ込んで来るので、盾を使いにくいのだ。

大盾でなければまだ楽だったかもしれない。


そしてドリラーは攻撃を外せば、すぐにまた地面に潜るのだ。

攻撃のチャンスが少ない。


「ふっ!」


それでもポーラは、的確に攻撃を積み重ねていく。

積み重ねるとはいっても、攻撃力が攻撃力である。

一撃ぶつける度に、どんどんドリラーの動きが鈍って行く。

普通のPTならば大変だったかもしれない。




また、スパルタンなポーラさんが、カファを扱きの為に戦闘回数を増やした。

するとカファも段々慣れて来た。

今までのどっしりとした構えから、軽いステップを踏めるような体勢に変えたのだ。

修の回避を見て学習したのだろう。

おかげで、ドリマーが下から飛び出してきても落ち着いて回避することができるようになっていた。


そしてボス。


----------------------------


LV.29

ボス・ドリマー


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気を付けしていた。

腕の代わりか、髪がキャップを突き破って、ドリルの形状になっていた。

見れば、両手にもドリルみたいな手袋をつけていた。

そしてやはり「ちゅいーんちゅいーん」と呟いている。


「……よし」


修は神にビンタをすることを決めた。


とりあえず、予行練習としてボス・ドリマーもビンタで塵に返しておいた。


「…これくらいだな」


威力の感じを調整したのだ。

神のほっぺがヤバい。

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