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その拳にご注意を  作者: ろうろう
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98話 スメル

28層に来た。

川も無ければ草も生えていない。

実に普通の迷宮と言ったところだ。


少し歩くと、変なのを発見した。


「あれ…」


修はそれを見て目を丸くした。


「む」


ポーラは剣を抜く準備をしていた。

と言うことは敵だろうか。

しかしどう見ても、卵だった。

それも、かなりでかい。

ダチョウの卵の5倍はあるだろう。


----------------------------


LV.28

エッグバード


----------------------------


鳥の卵らしい。

しかし、卵に何が出来ると言うのか。


焼き卵にしていいのか修が悩んでいると、卵が揺れた。


「…お?」


まさか孵るのだろうか。

ヒナが敵なのだろうか。

修がそう思った時、卵がすっくと立ちあがった。


「え!?」


そう、卵から細い足が二本、生えている。

しかもその足で、こちらにむけてスタコラと駆けて来る。


「ええええええええええ?」


焼き殺す間に、どんな攻撃をしてくるのかを見てみたくなった。

修は一人進み出た。

歩く怪奇卵が修に駆け寄って来る。

目もどこかについているのだろうか。


「……」


修がじっとエッグバードを見つめていると、次の瞬間。

卵の、上半分がパカッと開いた。

そして、中に居た鳥が鋭い嘴を突き出してきた。

卵の中には、大きな鳥が居た。


「成鳥じゃねーか!!」


修の突っ込みで、エッグバードは殻ごと四散した。

そしてドロップアイテムは『有精卵』だった。

もう子供までいるのか!

有精卵は小さかったが。



二匹目に、ファイアバーストを叩き込んだ。

燃え卵の出来上がりだった。

その威力は凄まじく、殻ごと燃やし尽くしていた。

さすがの上位魔法だ。




三匹目は、カファとポーラの出番である。


スッタカター!と軽快に駆けて来るエッグバードの正面にカファが立つ。

そして殻が開き、中の鳥が嘴を伸ばして襲い掛かって来る。

カファの盾とエッグバードの嘴がぶつかり、ガッギーン!と良い音が響く。


カファは微動だにしない。

全然余裕だ。

しかし威力は大したことは無いが、連続で突っついて来る。

カファはそれを平気な顔で受け続ける。


「せっ!!」


突っつきの間を縫う様に、ポーラがカファの背中から飛び出した。

コンビネーションの練習は大事なのである。

突っつきの為に飛び出している鳥の首を刈るコースで放たれた剣戟に対し、エッグバードは俊敏に首をひっこめ、更には卵の殻を被った。

卵の殻に、それだけの強度と自信があるのだ。


バギィ!という音が響き、卵の殻が砕けた。

ポーラの持つ剣が、実にあっさりと卵の殻を割ってしまったのだ。

とても薄かったし。


更には中の鳥に着火した。

エッグバードは、「コケーッ!!」とか言いそうな顔をしていた。

ゴロゴロと地面を転がり暴れまわる。

何と、暴れている間にも、卵の殻がパキパキと音を立てて復活していくではないか。

一体どういう生態なのだろうか。


あっという間に殻を復活させたエッグバードは、殻の中に籠った。

本体が燃えながら。

セルフ蒸し焼きだ。


すぐに、小さな有精卵が転がった。

真の馬鹿だ。


有精卵は割れやすいので、あまり動かない予定の修が回収しておいた。


エッグバードは、自慢の防御力を誇る殻も意味が無く、必殺の嘴連続攻撃もあっさりと防がれる。

最早敵ではない。

サクサクと進み、ボスまで辿り着いた。


----------------------------


LV.28

ボス・エッグバード


----------------------------


でけぇ。

マジででかい卵が鎮座している。

ボスを目にしたポーラが剣を抜いた。


「カファ」


声をかけられたカファは、やれやれ仕方ないと言う空気を隠しもせずに駆け出した。


「……はぁ」


やる気がない。

仕事はきちんとするので問題はない。

サボればポーラ教官に炙られるし。


やはり巨大な卵から、細長い足が伸びてスタコラさっさと駆け寄って来る。

実に軽快だ。

体が重くは無いのだろうか。

カファが盾を構えた。


「……」


エッグバードが嘴を突き出してきた。

ガギーンギーン!と、金属音が連続で響いた。

カファ多少目を見開き、腰を落としてて耐える体勢を整える。


「ま、まさか!」


修はその瞬間を見た。

連続で突ついたのでは、断じてない。

首が二本、伸びていたのだ。


「双子だとぉ!?」


卵の中にもう一匹いる。

二羽の嘴が、連続でカファに襲い掛かる。


カファはひたすらにそれを受け続けていた。

カファの防御力は大したもので、二羽分の攻撃を受けてもびくともしていない。

それはエッグバードにも分かったのだろう。

ポーラが斬りかかろうとしたタイミングで、唐突にエッグバードが一歩離れた。

次に卵が開いた時、グチャッ!という音がした。


「くさっ!!」


修が叫んで鼻を摘まんだ。


「うぅっ!!」


更に鼻の敏感なポーラは、苦悶の表情を浮かべてカファから飛び離れた。

エッグバードが、突然卵を投げつけて来たのだ。

それがカファの盾にぶつかり、割れた。

中は普通に腐っていて、素敵な刺激臭が広がったのだ。


とはいっても、カファは実に平気な顔だ。

こいつには嗅覚が無いのだろうかと問い詰めたくなるくらいの無表情だ。

揺るぎもしないカファを見て、エッグバードは脅威を覚えたのだろうか。


また卵が開いた。

次に飛び出たのは、羽だった。


「えっ?!」


修が驚愕した。

エッグバードは、バッサバッサと羽を羽ばたかせると、ふわりと空中に浮いた。


「飛んだー!?」


エッグバードは、その巨体を支えて空を舞った。

空中を自由自在に旋回し、獲物を狙うハゲタカの様にカファの上空を旋回する。


「……」


カファは落ち着いて、エッグバードを見上げていた。

突如、カファが大盾を上に構えた。

その瞬間、びちゃっ!と音がした。

糞だった。

何処から出したのだろうか。

しかしその糞の臭いこと臭いこと。

全く関係ないが、ポーラさんはとても甘い匂いがする。

修が毎日嗅いでいるので間違いない。


「ぐはっ!!」


修は普通に咽た。


「うぐぐぐぐっ!!」


ポーラは修の後ろにまで転がりみ、蒼白な顔をして呻いていた。

しかしカファの鉄面皮は揺るぎもしなかった。

じーっと空を旋回するエッグバードを見つめる。


また効果なしと悟ったエッグバードは、果敢に攻撃して来た。

糞と、卵で。

それが雨あられとカファに降り注ぎ、カファの全身をでろでろにする。

その直前、修が叫んだ。


「ファイアバースト!!」


それらが悪臭を発する前に、修が燃やし尽くした。

更には、上空を旋回するエッグバードすらも炎に包みこむ。


「あっぢゃああああああああああああああ」


燃えていないカファが、凄い顔をして地面をごろごろと転がっていた。

すまないカファ。

後でポーラさんにアレとやらをたらふく買ってもらってくれ。

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