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初めに。

久しぶりの一次です。本来は短編の予定だった上に勢いで書いているので大幅にご容赦ください。

「おーいもりしたー来いよー!!」


なかもりくんが落ちてた枝をぶんぶんふっている。


「う、うん……」


わたしはすぐ行こうと思うんだけどなんだか恥ずかしくて走っていけない。でもなかもりくんは察してくれなくて先に走って行ってしまっている。でもその姿がとてもかっこよかった。


「なかもり待てよ! ゆっくり行こうぜ。もりしたさんおいてけぼりにするのかよ」


かみもりくんが言うとなかもりくんは枝をすててこっちに走ってくると私の手をとってむりやり走り出した。


「はやく行こうぜ!!」


「ちょっ……」


私はとまどいながら必死に足を動かして頑張って付いて行く。


「おいなかもり!!」


そんな私の様子を見てかかみもりくんが咎めるように叫びながら追いかけてくる。


中傅が強引に前を行って、私は成すがままに引っ張られて、上守が後ろから後片付けとかフォローとかする


小さい頃はそんな感じで無理やりだったり自分からだったりとりあえず私達は三人ずっと一緒にいた。いつから一緒にいたかもわからないくらいに小さい頃からだったから気が付いたらそれが当たり前になっていてずっとそういう感じなのだと思っていた。


高学年になってもその関係性はあまり変わらず、相変わらず私は中傅に引っ張られないと引っ込み思案で、頑張って何かやろうとしても途中で恥ずかしくなったりとか不安になって上守のフォローが無いとやりぬけなかった。


でもみんなそれぞれに変わっていっているのはよくわかって、中傅は手当たり次第にスポーツとかやり始めて私からも少しづつ離れていったし上守はコケとかシダとかキノコとかに興味を持ち出して一人で地面に座り込んでコケを触っているのはなんだか悲しげで近寄りづらかった。だけど中傅は私を色々と引っ張ってくれてたし上守は私が何かしようとしていたら気が付いたらフォローしてくれていた。


私自身も変わっていかなくちゃとは思ったけど結局女子の間でも友達はほとんど作れずいつも中傅の後ろにいるか上守に後か横にいてもらったいた。


中学校に入って、少し中傅を意識するようになった。いつも自信満々でやることに迷いが無くて直球な中傅は私と対極の存在のように思えてヒマワリが太陽を追うように当たり前のように中傅をずっと目で追っていた。


中傅に直接言うのは恥ずかしいから上守にさりげなく他の話題と織り交ぜてどこがすごいとかなにがかっこいいとか言ってみたりすると上守は少し悲しそうにではあるけれど笑ってずっと聞いていてくれた。上守も中傅が徐々に離れて行ってることを悲しく思っているのかなとか思った。


一年、二年、三年と年を重ねるごとに中傅に対しての思いは大きく膨らんでいって、誰にということは言わずにクラスメイトの女子に相談したらそれは恋だよと断言されてさらに気持ちが大きくなっていった。


けれど告白する勇気は無くて、積極的に一緒にいようとする勇気も無くて、上守に泣きつくような形で中傅とさりげなく会えるようにしてもらっていた。上守は文化祭のクラスの出し物とか事あるごとに私と中傅をペアになるように捻じ込んでくれた。


上守は私が中傅を好きなのを気づいているようで何度か背中を押してくれていたにも関わらず私は何もできなかった。卒業アルバムの自由写真で一人一枚は撮らなきゃいけない時にも自分が一人になって一人ぼっちの子みたいな感じになることも気にせずに私と中傅が二人で撮るように仕向けてくれたのに恥ずかしすぎて上守の厚意を無駄にして上守を無理やり引っ張ってきて三人で撮った。


高校をもっといいところに行けたのに中傅と同じところを選んだのは今思うと精神的にも独り立ち仕様とすらできていなかったからなのだと思う。


上守も同じ高校に来てくれたのは私がそういう危うい感じを心配してくれたのと、中傅も一緒にいるからという理由だったのかなと思う。


とりあえずまた三人仲良くできると思ったし三人一緒にいれるのだと思うと嬉しくて楽しくて入学式前日は子供みたいにワクワクして寝つきが悪かった。


でもそう私の想像通りにはいかなかった。まず中傅と違うクラスになった。上守は一緒にいたけれど上守と中傅は違う。上守に中傅の代わりはできないし中傅に上守の代わりはできない。


上守に相談したらせっかくの機会だし私達以外にも仲のいい友達を作るように頑張ろうと言われた。そう言った割りには上守はあまり人と関わろうとせず一人でふらりとどこかに行ったりするようになった。上守のメアドも私しか持っていなかったし意図的に遠ざけているように思えた。


私はなんとか友達を作りはしたけれど何か寂しい感じが拭えなかった。なんでも一緒にやってきた上守と中傅と違ってこの人達は私を知らないのだということが当たり前なのに怖く感じる時があった。


しかし気がつくと中傅の周りにはかわいいし頭もいい、さらには社交的でほとんど非の打ち所のない女の子達が集まるようになっていた。その女の子の周りに上守みたいに時折悲しげな表情をするそれなりに優秀そうに見える男子が集まって中傅はまるで雲の上の人のようになってしまった。


あそこは私と上守の場所の筈なのにとても遠く感じられて、なんだか黒い気持ちが溢れ出てくるのがわかった。多分嫉妬と言われるものなんだと思う。でももともとあの場所は私のいる場所なんだから土足で踏み荒らされて不愉快になるのは当たり前のことだと思う。


私の方が中傅のことをよく知ってるし中傅がいた場所のことも知ってるしあんな奴らなんかよりよっぽど中傅を理解できるしずっとずっと中傅のことを思ってる。


体育祭や文化祭、ありとあらゆるところでひっついてたりとかしないで欲しい。


中傅はあんな奴らには理解しきれない、きっと理解できるのは私だけ。だから私のことを理解できるのも中傅だけ。


誰にも渡したくないし傍にいたい、絶対に中傅はあんな奴らの中にいるべきじゃない。百歩譲って赦されるのは上守までだ。


でも今中傅は幸せそうだしそれを壊すのは駄目。私は中傅と一緒に幸せになりたいだけ、そのために中傅の今の幸せを壊すなんてことはできない。


だったら中傅の幸せを陰から見守っていたい。静かにでもできれば中傅にもわかるように通学路でも学校の中でもできれば中傅の家の中までずっとずっとずっとずーっとずっと見守っていたい。


上守に相談したら実現してくれそうな気もするけどあまり上守に頼りすぎちゃいけないとも思う。中傅に引っ張ってもらわないと行動できなかったから起こったことだし上守に甘えてきたから起こったことだと思うから自分で頑張らなきゃいけないんだと思う。


そう誓ったのが高校一年生の九月。


でも二年になる前から私は結局上守に甘えることになった。十二月には中傅へのクリスマスプレゼント選びに付き合ってもらったし正月には初詣に代わりに中傅を誘ってもらった。二月にはバレンタインチョコを作る時に手伝ってもらった。実際にはバレンタインチョコは自分だけで作れたけど他の人に味見してもらって大丈夫だと言われるとただ自分だけで作って味見するのとは安心感が違う。


頼むと進んで協力してくれるのに決まって上守はふとした時に何故か悲しい表情をする。


その度に協力してもらうのはやめようとも思うけれど困るとついつい上守に頼ってしまう。でもそれでも中傅のことが好きなことは上守に相談するのはやめていた。


それからさらに経って高校二年生の五月。クラスに忘れものをして中傅の教室の前を通り過ぎると中傅の机の上に水筒があるのに気付いた。


それを見て私は……

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