あの日の、なかまたち。~1~
電車に揺られ、2時間。今のぼくには途方もなく長い時間だった。その昔は、もっと時間が長かったのかと思うと、すごいなって思う。
あの頃の記憶は曖昧だが、断片的に覚えていることはあった。
曖昧と言うのも、ぼくは10年前からここに来ていないのだ。それも、父の出張生活にもピリオドが打たれたから、である。あの日の約束は果たせなかった。・・・そのことを曖昧である理由にはしたくなかったが。
潮の香りを纏った風が、ぼくに吹いた。少し伸びた髪の毛がなびく。その匂いを、体で感じながらぼくは物思いにふけっていた。
それもそのはず、だ。10年間だ。10年間も会っていないのだ。もうほとんど他人である。あの頃のアイツらでなはいのだ。それなのに、どうやって会えばいい?どんな顔をして会えばいいのだ。
そんなことを、思っていた。
そんなぼくの、曖昧な記憶は着々と戻りつつあった。
神社の場所、民宿の位置、海岸への行き方。
バラバラになったパズルのピースが、一つになっていく。そんな、感じだった。
けれども、それがこの止まってしまった足を動かすきっかけにはなるはずもなかった。
みんな変わってしまった。会ってはいないけれど、情報は入っていた。関係が途絶されたわけではない。
孝弘は高校球児だった。キャッチャーだったろうか、去年はレギュラーになったと父から聞いた。しかし、足に怪我を負ってしまい、部活をやめてしまったらしい。
一年生でレギュラーだぞ?すごい才能があったに違いない。
それなのに、冬人の情報は何一つ入ってこなかった。何か、あったのだろうかとも思ったが、連絡はしなかった。
友貴は、有名な高校に受かり今、都会の高校に通っている。都内の寮へ入寮し、勉学に励んでいるそうだ。ぼくとは、大違いだ。
友華、姉ちゃんはたぶん27歳。アラウンド30である。初恋の相手、というべきなのだろうか。聞いたところによると、都内のアパレル会社を立ち上げ大成功、とまでは行かなかったがそれなりにうまく行っているらしい。
嫉妬、なのだろうか。
そんな情報が入ってきても、会いたいとは思わなかった。会えるんならまぁ、会えればいいかなぐらいだ。
それなのに、なぜ今になって会おうと思ったのかと言うと、それは約1ヶ月前までさかのぼる。




