↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
73/81

 ◇


 ——どうしてこうなった?


『アタシだってねぇ、ギャルキャラなんてキツいと思ってるんだよ!』

「はい……」


 あのあと、何をするか具体的なアイデアが出てこなかったので、各々考えることにして解散した。

 その後、あらためてゆら先輩から通話が来て、今に至る。

 ……完全に年齢のこと気にしてるじゃん。


『マホロくん?』

「はい!」

『……アタシだって、ソロしてた頃はまだ学生だったから、ギャルっぽい感じもイケイケで楽しかったんだけど……』

「イケイケ……」

『ン?』

「なんでもないです」


 同年代くらいだと思ってたけど、実は意外と——


『マーホーローくーん?』

「はい、ごめんなさい」

『最初の頃に『あ、これは無理だな』って方向性変えて、ゆらママとか呼ばれるようになって、やっと大人の魅力がわかってくれるようになったと思ったのに! 最近のゆら人、『ゆらママ最近甘えたになったね』とか『後輩にめっちゃ甘えてる』とか!』

「それは事実じゃ……」

『ン?』

「……なんでもないでーす」


 うちの人たちみんな俺の解像度が高すぎるんだよ……。

 俺何も言ってないんだけど……いや、今回は口が滑ったけど。


『別に、甘えたさんになったとかは別にいいんだけど……なんかねぇ』

「……それだけ、肩の力を抜けるようになった、ってことじゃないですか?」

『どゆこと?』

「今までのゆら先輩は、ひとりで頑張って……頑張りすぎたんですよ」


 実際ソロの時代を含めて長い間VTuberを支えたひとりだ。

 世間的に有名な四天王と呼ばれる人たちほどじゃないが、この人だってVTuberの歴史を支えてきた。

 俺たち2期生が入るまで、APをひとりで支えてきた実績もある。

 だからきっと——抱え込みすぎたんだ。

 

「俺は嬉しいですよ、先輩がちゃんと俺たちを頼りにしてくれてるってわかるから」

『……マホロくん』


 以前俺が倒れた時、ゆら先輩が最初に駆けつけてくれたのを覚えている。

 あとから聞いた話だが、その時のゆら先輩はボロボロに泣き崩れていたらしい。

 ……そういえば、病院で目が覚めた時にも、泣いていたっけ。

 ……きっとこの人は、本来甘えたがりだったんだと思う。

 それなのに『自分が頑張らないと』って、抱え込んでしまったんだろう。


『……ありがとう、マホロくん』

「どういたしまして?」

『抱え込むなって……マホロくんにそう言ったのに、アタシがやっちゃってたんだね……』

「俺の時とは状況が違う気もしますけどね」


 俺の時は『倒れるほどの無理を抱えた』ことが問題だった。

 先輩は『みんなの求める理想の自分で居続けること』に疲れてしまっただけ。

 ……今の俺ならわかる、リスナーは『素の自分』を見せても離れないって。

 だから——。


「先輩も、もっと自分に素直になればいいんですよ」

『自分に、素直に……』

「無意識のうちに『リスナーがこう求めてる』って、考えてませんか?」

『それは……みんなそうじゃないの?』

「そうですね……『月見里マホロ』っていうアバターを着ている以上、どこか作ってるところはあると思います……でも」


 ……でも、その中でも『自分』を出すことはできるって。

 この1年で、教えてもらったから。


「それでもまだ、自分を出すのが怖いなら——『新しい獅童ゆらの一面』として、ゆっくりと……ゆっくりと、積み上げて行きませんか?」

『——』


 長くやってきた先輩と比べて、俺はたった1年だ。

 ……それでも、言える事はあると思うから。


『うん……うん、そうだね……うん!』


 しばらく黙っていた先輩が、顔を上げた——ような気がする。


『ギャルも、ママも……甘えたがりなアタシも……全部、『獅童ゆら』なんだよね』

「……はい」

『ありがとうマホロくん、アタシ——頑張ってみる!』

「……はい!」


 ……頑張らなくても良いとか、そう言うのは簡単だろうけど。

 それじゃきっと、何も変えられないから。

 これもまた、俺の1年の成長の証なのかもしれない——。


『それはそれとして、マホロくん?』

「はい?」

『け・い・ご』

「……はぁーっ……」


 結局いつも通りに戻るのが、俺たち()()()んだろうな。


 ◆


 それは、かつてのアーカイブ。


「おはよ~っ! イケイケギャルVTuber、獅童ゆらだゾっ!」


 あの頃は、どういうのがウケるのかよくわからなくて。

 とりあえず若そうに見えたほうがいいよねって、安易にギャルを選んで、失敗して。

 ……うぅん、マホロくんの言うように、あの頃のアタシも、アタシだから。

 失敗だったとは……言いたくないな。


「こんガオ~! 迷える君たちをゆらゆら導く指導者ライオン、獅童ゆらだよ!」


 ちょっとお姉さんキャラをやってみたら、『ゆらママ』って呼ばれるようになって。

 そこから順調に伸びていって……あぁ、これで正しかったんだって……。


「こんガオ~! アナザーパンデミック1期生、迷える君たちをゆらゆら導く指導者ライオン、獅童ゆらだよ!」


 それからは本当に順調で、気付けばアタシは事務所に所属していて。

 小さな事務所だったけど、社長もスタッフもいい人で、配信も楽しくて。

 アタシが頑張れば頑張るほど、事務所の名前も売れていって。

『アタシが頑張らなきゃ』って……この時からすでに、ハマってたんだね。


 ……そして。


『は、はじめましてじゃみなのもの! あなざぁぱんでみっく2期生、月見里マホロなのじゃ!』

『にゃーん、AP2期生、猫野タマだよー』

『きっ……気を! 取り直しまして……あ、改めまして、『波亭しえる』……です!』


 あの子たちが、やってきた。

 ……なんかここだけ聞くと、後輩が来たことを妬んでるみたいだけど。

 後輩ちゃんが増えて、本当に嬉しかった。

 これもまた『頑張って事務所の知名度が上がったから』だって、本当にそう思ってたから。

 ……うぅん、実際その通りだったんだと思う。

 マホロくんはアタシが誘ったから別口だけど、タマちゃんとしえるちゃんは違うから。

 ……あれ、でもしえるちゃんは社長の妹だし。

 そう考えると、タマちゃんだけかも?

 ……まぁ、細かいことはいっか!


 ◆


 それから色々あって……マホロくんが倒れた。

 先輩なのに……アタシが誘ったから、ここに来てくれたのに。

 ……アタシが、もっと気を配っていればって、ずっと自分を責めてた。

 でも……目覚めたマホロくんは、以前よりしっかりするようになった。

 ……うぅん、ちょっと違うかな……『自分を見つめ直した』って言うのかな?

 あぁ、この子はもう『アタシが面倒見てあげなくてもいい』んだって。

 そう思ったら……うん、確かに『肩の力が抜けた』んだね。

 ふふっ……いい表現するじゃん、マホロくん。


 ◆


「……そっか、これがアタシなんだね……」


 アーカイブを見終わって、一言目がそれだった。

 ギャルも、ママも、AP1期生だったことも。

 全部、アタシ——『獅童ゆら』。

 それに気付かせてくれたのは……マホロくん。


「……うもー! ……しえるちゃん、ごめんね」


 でも、この気持ちにはそっと蓋をするから。

 ……こぼれたらごめんね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「これアレだね?」 「天然マホロ!」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。