有名税
次の惑星に降り立った時、ラルフは人だかりしている建物の前を通った。
「やあ、ここでなにがあってるんだい?」
手近な子どもに聞いてみた。
「1日のパンとお水を配っているんだよ」
「災害か何かあったのかい?」
「ううん」
「じゃあなんで配ってるの?」
「ありがたいお方が他の星からいらっしゃって、僕らにもう働かなくていいって言ってくださったんだ」
「なんやそれ?宗教の布教かなんかか?」
「ちがわい。おじちゃんバチが当たるかんな!」
子どもはそう言ってラルフに背を向けた。
「おじちゃん……」
ラルフは、老けて見えたが、まだ銀河標準時間で生まれてから25年目だった。
気を取り直して、別の人に声をかける。
みんなの言うには、惑星ルチノで飢餓が流行った時に賢者が一年分の食糧を配って、人々が救われた。今ここにその賢者が来ている、とのこと。
「惑星ルチノ?賢者?」
ラルフはその惑星を知っていた。ついでにたった一回だが、仕事にあぶれていたみすぼらしい青年にパンと飲み物をくれてやった。
「賢者の名前は?」
「ラルフ様です」
ずこっ。俺じゃないか。
だーれが、俺の名を騙ってなにしてやがる。
人垣をかき分けて賢者とやらの近くまで行ってみたら、あの時パンと飲み物をやった青年が、仰々しく人々に食糧を配っていた。
「おい、お前何してる!」
「あっ!あなたはあの時の!」
偽ラルフは嬉しそうにラルフの手を取った。
「残り配っておいて」
おつきの女性に指図して、偽ラルフはラルフと別室にこもった。
「あの時のご恩を忘れまいと行く先々で食糧を配ってます」
「お前なぁ、よく考えてみろ。一年、みんなが働かなかったら、その後どうなると思ってるんだ」
「はて?」
「はて?……みんな立ち直れないぞ。復興に3倍は働かないと」
「そんなはずないじゃないですか」
「アホか!今すぐやめろ!中止!」
「……あのう、僕どうしたら」
「自分で考えろ」
とにかく、ここはやばい。ラルフは窓を全開にして外へ飛び出した。
☆
次の惑星で、税関で呼び止められた。
「ラルフ?」
「はい」
「お前は立ち入り禁止」
「なんで?」
「いたずらに人心を惑わして混乱を招くから」
「違うー、あれは偽ラルフがー」
ずるずる引っ張っていかれてポイと宇宙船に投げ込まれた。
「どうしたんですか?」宇宙船のAIが抑揚のある声で精一杯びっくりしてみせた。
「俺の名前、悪評が立ってるんだよ!」
「わかりました。有名税ですね!」
「ちゃうわい!」
いや、違わんか。ラルフは雑魚寝して、どんな偽名に変えようかと頭をひねった。




