第6話「魔眼の千尋、王都を沈黙させる」
――王都・レギア。
剣と魔法が支配するこの世界でも、ここは秩序の象徴とされた。
煌びやかな城、商人たちの賑わい、衛兵の整列。全てが完璧に機能していた。
……ある男が来るまでは。
「よう、道あけろ。目ぇ合わせたくねぇならな」
その声は静かだったが、通り全体に響いたように感じた。
ゆっくりと歩くその男を、誰一人として止められない。
衛兵は目を逸らし、商人は店をたたみ、貴族すらも肩をすくめて道を譲った。
――彼の名は、真堂 千尋。
町の不良連中の中でも、“最も目つきが悪い”と恐れられた睨み屋。
その視線には、かつて“犬が吠えるのをやめる”という都市伝説すらあった。
そして彼は今、異世界で覚醒していた。
【真堂 千尋】
種族:デモンアイ(魔眼族)
スキル:魔眼・威圧(対象の意識を削る)、魔眼・拒絶(攻撃無効化)、視線支配(全体デバフ)
「まさか“魔眼族”なんて種族があるとはな。ぴったりすぎて笑えるわ」
千尋の“睨み”は、転生によりスキル化されていた。
ただ睨むだけで、敵は行動不能。雑魚モンスターなら、近づくことすらできない。
その強さが証明されたのは、王都の西門前――。
賞金首となった千尋を取り囲んだ、王都騎士団50名。
「包囲完了! 覚悟を決めろ、異世界人!」
――その瞬間だった。
「見たな」
千尋が、たった一言つぶやく。
そして、ゆっくりと顔を上げた。
次の瞬間、騎士たちは――全員その場にうずくまった。
「目が……! 目が合っただけで……!」
「なんだあの視線……脳が震える……!」
千尋の魔眼スキル《魔眼・威圧》は、レベル差を無視して意識を直接削る。
彼が本気を出せば、王都の防衛機構など形だけだ。
「なぁに、やる気ない奴にまで絡む気はねぇ。……ただ、一つだけ覚えとけよ」
――睨みだけで、戦争は止まる。
彼がそう言い残し、王都をあとにした時。街は――丸一日、誰も声を出せなかったという。
次回予告
第7話「電脳のアキラ、異世界ネットワークを掌握す」
ハッキングと情報戦のスペシャリスト・アキラが参戦! なんと魔導装置を解析し、異世界インターネットを立ち上げる!?