第5話「風神・颯斗、盗賊団を単騎で壊滅す」
――砂塵舞う荒野。
その中央に、倒れた盗賊たちが山のように転がっていた。金属製の鎧が歪み、木製の武器がバラバラに砕けている。
「な、なんなんだアイツ……!」
「見えねぇ……!」
盗賊団の幹部が震えながらつぶやく。彼らの視界には、ただ風の残像しか映らない。
そして――次の瞬間、背後に「カッ」という音がした。
「おう。背中ガラ空きだぜ?」
ドゴッ!
脳天にかかと落としが決まった瞬間、盗賊団のボスが白目を剥いて崩れ落ちた。
現れたのは、細身で中性的なシルエット。
だが、その目には一切の容赦がなかった。
「ふぅ……まぁ、ウォーミングアップにはちょうどよかったな」
その名は――風間 颯斗。
元町の暴走族で、喧嘩よりもスピード勝負を愛した“風神”。
50メートルを5秒切る脚力と、誰にも追いつけないフットワークは異世界に転生しても健在だった。
いや――むしろ強化されていた。
【風間 颯斗】
種族:ウィンドエルフ
スキル:疾風脚、風神ステップ、残像発動、加速結界
「……脚が勝手に加速してんの、慣れねぇわ」
風属性特化のエルフ族に転生した彼は、風の加護を受けて“音速寸前”の移動速度を持つ。
特に必殺技《風神ステップ》は、数メートル先に“残像”を残しながら瞬間移動する超加速戦法。
「まぁ、盗賊なんてやってる時点で、因果応報だろ」
盗賊団の本拠地をひとりで壊滅させた彼は、周囲を見渡す。
その時――空に、見慣れた文字が浮かぶ。
【再会イベント進行中】
《神堂龍也・花園レン・黒崎タケシとの接近を確認》
接触まで残り:3キロ
「……やっと会えるか。バカども」
風に乗り、その姿はまた掻き消える。
そう、彼にとって仲間とは――
「走る速度に、やっと追いついてきた連中だ」
爆風と共に砂漠を抜け、草原を越え、風神・風間颯斗が、再びその伝説に合流する。
次回予告
第6話「魔眼の千尋、王都を沈黙させる」
かつて“見ただけで相手を黙らせた”伝説の睨み屋・千尋が登場! 異世界で覚醒したのは、全てを支配する“魔眼”だった――!