第4話「喧嘩上等! 異世界バイクとレディース魂」
――その音は、異世界には存在しないはずだった。
ブロロロロロロロォ――ッ!!!
乾いた爆音が峡谷を突き抜け、草原を震わせ、遠くの村人が耳をふさぐ。
「……おいおい、あれってまさか……!」
神堂龍也が振り返る。黒崎タケシも目を見開く。
――そう、それは誰がどう見ても、バイクだった。
ただし、普通のじゃない。
車体は紅蓮のように赤く燃え、タイヤには火のような魔力のオーラがほとばしっている。排気口から魔力の蒸気を噴き出しながら、爆音とともに滑走するその姿は、まさに異世界に現れた“魔獣”。
そして、そのバイクを乗りこなすのはもちろん――
「どきな、バカ共ォ!!」
革ジャンのような紅のローブ、風になびく長髪、腰には鉄パイプのような巨大な火炎魔杖を携え――
花園レン、爆走。
その名も、《魔炎召喚式・爆走紅蓮号》。
「どういう原理だ、あれ……!?」
「魔力と喧嘩根性でバイク呼び出すとか、発想がぶっ飛んでんだろ……」
レンは言う。
「村で拾った《召喚魔法・乗騎カテゴリ》の魔導書があったのよ。だから“最強の乗り物”をイメージして召喚してみたら――」
「――バイク出てきたってか」
「当たり前でしょ。あたしの魂には、あの音が刻まれてんのよ!」
そう言いながら、レンは紅蓮号を急旋回。
背後から襲い来るスケルトン兵たちを、火柱をまとったタイヤで一掃する。
――ゴォォォォン!
「うおおお! バイクで火炎スライドターンとか、バトル漫画超えてんぞコレ!」
「いいねぇ、バイク乗ったレンってのはやっぱ最強だわ!」
レンは満面の笑みを浮かべ、バイクを一旦停車させる。
「じゃ、あたし先に走るわよ。アイツら探しに行くんでしょ?」
「おう、頼んだ!」
「無線ねーのが不便だけど、どうせまた会えるでしょ。地響きのする方行けば、アンタらの喧嘩の音聞こえそうだし!」
ブオォォン!
紅蓮号が咆哮とともに走り出す。
魔力の火花を撒き散らしながら、異世界の大地を突き進むレディース――その背中は、誰よりも自由で、誰よりも熱かった。
――
その日の夜。近くの村ではこう語られたという。
「……夕暮れに、炎のバイクに乗った女の騎士が通ったんだ」
「空を裂くような音と、焼けた風だけ残してな」
その伝説が、本物になるまで――あとわずか。
次回予告
第5話「風神・颯斗、盗賊団を単騎で壊滅す」
かつてのスピード狂・風間颯斗が登場! 足技と疾風ステップで盗賊団を翻弄! “最速”の男が異世界に風穴を開ける!