第1話「転生ってのはよ、まず喧嘩がねぇと始まらねぇ」
目を覚ました神堂龍也の視界には、ありえない光景が広がっていた。
草原。空には二つの月。近くには巨大なウサギのような化け物――って、あれ牙生えてねぇか?
「……あー、これは確実に死んだな、俺」
龍也は立ち上がり、自分の身体を確認する。服はどこかの農民みたいなボロ布。だが体は軽く、妙に力が漲っている。
そこへ「ピコーン」というSEみたいな音とともに、目の前に文字が浮かぶ。
【ようこそ異世界へ、勇者候補・神堂龍也様】
・職業:不明(再選択可能)
・スキル:[喧嘩魂][根性MAX][悪童のカリスマ]
・称号:「町の頂点」「喧嘩神候補」
・ステータス:チート級
「……何コレ、ゲームか? いや、現実だな……リアルに頭おかしくなりそうだわ」
そこに現れたのは、凶悪な顔の狼型モンスター。
「グルルル……」
普通の奴なら逃げ出す。だが龍也は違った。
「――そうか。喧嘩売りてぇのか? 上等だ……!」
足に力を込め、地面を蹴る。拳を振り抜く。何のスキルも呪文もない、ただの一発――
だがそれが、地面を割り、狼を一撃で吹き飛ばす。
静まり返る草原。己の拳を見下ろし、龍也はニッと笑った。
「やっぱ喧嘩だよなァ、世界が変わってもよォ!!」
そして彼は思い出す。
(アイツら……他の連中も、もしかしてこの世界に?)
拳を握る。探さなければならない。あの誇り高きバカども――かつての「愚連隊」の仲間たちを。
異世界に、また伝説が生まれようとしていた。