No.1ホスト、容疑者を知る
「…手紙?なにこれ…」
「それは、先程カーマイン様がいらっしゃって預かったのです。お嬢様。」
「お兄様が…?」
「きっと、直接仲直りするのが気恥ずかしかったのではないでしょうか?早く、仲直りできるといいですね。」
そう言ってクスッと笑いながらマゼンタは俺の部屋から出ていった。
さて、この手紙をどうするか…。何となく読むのが気乗りしないんだよなぁ〜。でも、兄貴がこうして喧嘩状態でも手紙を寄越すとは…余程のこと、なのか?
手紙を開けるとまずそこには、夕方の件について俺への謝罪の言葉が並べてあった。
「本当にごめん、朱音…ね。スカーレットじゃなくてちゃんと俺、朱音自身に謝りたいって訳ね…。」
謝罪の言葉の下にはみっちりと文字が並べられていた。それを読めば、後戻りできない気もしたがどうする事もできないので俺はそれを読んだ。
(隠しておいて何だけど、早く知った方がいいから手紙で伝える事にする。お前を殺した容疑者は全部で3人いる。そのうち2人はお前の客、1人はお前のホスクラの後輩だ。)
「えっ…な、なんなのこれ…」
読みながら手が震えた…怖くて目眩もした。けど読まずにはいられない内容だった。
(1人目はお前の1番の常連客だった、瀬戸青子。2人目はたまにホスクラに来ては、大量の金をお前に落としていた黄原結。そして3人目は、お前の後輩でお前の働くホスクラのNo.2の翠川薫だ。そして、私が知ってるのは、瀬戸青子はあんたと同じ場所で死んでいて、黄原結と翠川薫は同じ崖で死んでるということだけ。同じ日にあんたと関係のある人がこんなに死んだから警察も不審がってた。…私が持ってる前世の情報はこれだけ。今世、つまりこの世界に関する事については、また話す。……だから、お前が私を許せる時が来たら私の部屋に来て欲しい。)
ドサっ…あまりに、信じられない内容に俺は腰を抜かして床にへたり込んでしまった。兄貴からの手紙を握りつぶして…。分かってる、手紙を握りつぶしたところで真実は変わらないし、俺は前世の世界に戻って生き還る訳でもない。でも…容疑者が俺が知ってる、いや俺が前世でもかなり密接に接してきた人だったっていうのは何よりもキた…心にまるで二度と抜けない剣でも刺さったみたいだ。
仮にその3人のうちの誰かが俺を本当に殺していたとしたら、俺はどうすれば…受け止め切れるのかな。