No.1ホスト、違和感を暴露する
「ふぃい〜!!終わったぁ…。マゼンタ、服脱ぐの手伝ってくれる?」
「はいお嬢様。」
コンコンッ!
「俺だ、カーマインだ。今ちょっといいか?」
「分かった。ちょっと待って」
突然兄貴が来やがったので、俺はドレスを着たまま兄貴と話すことになった。
「じゃあマゼンタ、また呼ぶわ。」
「はい、お嬢様。」
パタンっ…。
ったく〜せっかく人が疲れてる所に…何の用なんだ?こいつ。
「おい、兄貴。何なんだ?いきなり」
「おぉっ…流石はNo.1ホスト。ドレスアップすごいじゃん…」
兄貴は上から下まで俺の格好をまじまじと見て感心するかのように言った。
「分かってるじゃん?王子も多分、俺にイチコロだぜ?って言いたい所だったけど…」
「なに?やっぱなんかあったの?」
兄貴は不安げに俺の顔を覗き込んできた。
「…?やっぱってなに?もしかしてなんか知ってるの?」
「う〜ん。事前に言うよりも、実際会った方が分かると思って言わなかったんだけど…」
そう言って俺は兄貴に違和感を暴露した。
そう、俺の違和感はスカーレットがゲームと違ってシアンに嫌われていない事だった。むしろかなり好意的だったのだ。
そして極め付けはシアンの性格だ。冷静沈着でクールな氷の王子と聞いていたが…全然違った。もちろん、ある程度冷静沈着で頭の回転も良いのだろうとは思ったが、氷の王子というほど他を寄せ付けない雰囲気でもなかった。
「兄貴は何か知ってるから、敢えて言わなかったんだろ?」
「まぁね…。これは推測の域を出ないけど、シアンも…もしかしたら私達と同じ転生者かもしれない。」
「えっっ…」
シアンが転生者…?まぁ、確かしそう考えれば全て辻褄が合う。ゲームとは異なる性格、スカーレットに対する態度…。
だけど‥そんな事あるのか?そりゃ、俺も兄貴も転生者だけどさ。
「なんか思い当たる事ない?もしかしたら前世で何かしら関わりがあるとか‥」
「‥‥あかね。」
「え?」
「だから、会って初めの一言があかね、だった。」
‥本当はずっと気にしてた。シアンに会った時、あかねと一言言われて思わず俺は‥。シアンは俺のこのドレスの事を褒めたと言っていたけど、何となく嘘くさいと思った。俺は人の嘘には敏感なんだ。だって俺は嘘で、No. 1になったようなものだから。
「なんでそんな大事な事最初に言ってくれなかったの?」
兄貴はかなり怒っているようだった‥。俺を睨みつけて静かに言った。
「でも‥確証はまだ持てないし、それに別に転生者だったとしてなんか不都合でもあるの?‥痛っ」
急に兄貴が俺の肩を強く掴んだ。そんな兄貴の手は、震えていた。
「もし、もしそれがっ!‥‥お前を前世で殺した犯人だったとしたら?」
「な、何言ってんの?そんな訳、ないじゃん。そもそも俺を殺した犯人って死んでるの‥?何の確証もないのにそんな怒る事ないじゃん。」
思わず俺は兄貴から目を逸らしてしまった。怖かった。もしかしたら‥心のどこかではそう思ってたのかもしれない。
「確実じゃないけど、これだけは言っとく。あの日、あんたを殺したと思われる容疑者は‥死んだのよ。全員ね。」
「‥は?んな話ある訳‥だってミステリー小説じゃないんだから。」
俺は自分で自分の言葉を納得しようとするかのように言った。
だって‥もしこの世界にまた犯人が転生してるなら俺はまた殺されるじゃんか。そんなの、俺がこの世界で足掻いたって相手に俺が、美玲朱音だってバレたらお終いじゃないか。
そんなの、悲劇だ。