抜ける剣 抜けない剣
「全く一体なんだったんだ…ちゃんと説明してくれよ!さっきの光はなんだったんだ!」
俺は空に向かって叫んだ
もちろん返事なんてものは返ってくるはずもなかった
「イノシシ狩り所じゃなくなったじゃないか。はぁ…仕方ない…帰るか…」
そう言って空しく俺はリエット村に帰ることにした
村に着くとすっかり日も暮れ始めていた
色々なことが有りすぎて疲れた俺は家までまっすぐ帰ろうとしたが、途中でクレイと会い森であった事について話すことにした
「セイン、夢でも見たんじゃないか?イノシシに飛ばされて夢でも見たんだろう、そうに違いない。じゃなきゃ説明がつかないだろ」
そういってクレイは俺のあった出来事を理解できないような態度を取り否定してきた
そりゃそうだ俺も人から聞いたんだったら俺もそう思う
だが、それが夢じゃないことはこの剣が証明している
「そりゃ俺もそう思いたいけど、この剣が今日の出来事全てが夢じゃない事を証明してんだよな」
「まぁ、それを見たら否定できなくなるけどよ、そんなにすげぇ剣なのか?確かに見たことない程、綺麗な鞘だが…刀身はどんな感じちょっと見せてくれよ?」
「いいけど、気をつけろよ、イノシシの牙すら簡単に切れるらしいからな」
そういってクレイに剣を渡し、クレイは鞘から抜き確かめようとする
「ん?おい、セイン全然抜けねぇぞ、どうなってんだ?ふん!ぐぬぬ!くそ!全然抜けねぇ!!!!なんだこれ、何か抜くのにコツでも要るのか?」
そんなはずはない、俺は普通に抜けたぞ?俺はクレイから剣を返してもらい柄を握り抜くことにした
「ほら、抜けるぞ?クレイもしかして剣の抜き方もわからないのか?お前まさか俺をおかしいやつに仕立てあげる為に、わざとやってたのか?
「いやいや、俺はまじめに抜こうとしたんだ、びくともしなかったよ。それ、お前にしか抜けないとかないよな?そんな剣があるなんて聞いたことないぞ。もしかして魔剣とかじゃないよな?抜いて大丈夫なものなのか?身体に異変とかないか?」
クレイの顔は真剣そのものだった、普段軽いやつだが、こういう時のこいつは適当なことは言わない
本当に抜けなかったのだろう。じゃあ俺だけにしか…いや、リグレットも同じ剣を使っていた。何か条件があるのか?異変と言えば
「そういや初めて抜いた時に身体が軽くなって何か力が湧く感じがしたんだよ。今はそんな感じはなかったが、なんだったんだろうな?」
クレイは俺の身体をまじまじ見て不思議そうな顔をしている
俺だって何が起きたんだかわからないし、確かめることもできなかった、それ以上にその後の出来事が大きすぎてそれどころじゃなかった
そんな事を話していたらすっかり日も暮れあたりが暗くなってきたので、クレイと別れ家に帰ってきた
ドアを開けリビングを抜け、台所にいる人物に声を掛ける
「ただいま、母さん」
台所で料理をしていた母さんはこっちを見て優しく微笑み言葉を返してくれた
「お帰り、セイン。遅かったわね?もしかして狩りが上手く行き過ぎて時間を忘れたのかしら?丁度ご飯できるから準備手伝ってくれる?今日の狩りについてどうだったかご飯食べながら教えて頂戴?」
アンナ・フレッド
俺の母さんだ、俺は父さんの顔を知らない。俺が小さな頃に病気で亡くなり。それ以降ずっと一人で俺を育ててくれた。正直息子のひいき目無しで見ても母さんはどう見ても若々しく見える。物腰やわらかで、綺麗な黒髪、スタイルも良く村の中でもトップレベルで綺麗なために、町から村にやってくる商人やら、旅人やら色々な人に声を掛けられては交際を持ち掛けられている。毎回やんわり断っているのだが
これで4〇歳なんだから世の中わからないものだ
夕食を食べながら森であった事を母さんに伝えた
やはり母さんも夢でもみたんじゃないかと笑っている
「まぁ確かに夢のような出来事だったよ。そうだ母さん、俺の父さんって俺と同じ青い髪をしていたんだよな?その森であったリグレットも青い髪をしていたんだ。俺の髪色はどこ行っても珍しいって言われていたんだけどさ。まさか自分と同じ青い髪をした人に会うとは思わなかったよ。世界は広いもんだね」
すると母さんはかなり驚いた顔をして俺の顔を見つめていた
「ねぇセイン、その子、どこから来たとか言っていた?」
「確かフレイド聖王国って言ってたよ、そっち方面じゃ珍しくもないのかな?父さんの出身ってフレイド聖王国だったっけ?そういえば聞いたことなかったな」
「いえ、あなたのお父さんもこの国出身よ。私と生まれも育ちも同じこの国、そしてこのリエット村よ…他に何か言ってなかった?」
母さんの顔は真剣そのもので、初めて見る母さんの顔に俺も驚きを隠せなくなっていた
「未来を見る魔法とか、災厄が起こるとか不吉なことも言ってたよ、そうだこの剣もリグレットから渡されたんだ」
俺は帰ってきてすぐ自分の部屋に置いていた剣を持ってきて母さんに見せた
「そう、これが……」
母さんは少し暗い顔をしたが、すぐに明るく振舞った
「まぁ、お父さんの髪色についてはもしかしたらおじいちゃんとかがフレイド聖王国の出身とかだったかもしれないわね。さっ、今日は色々あって疲れたでしょ?お風呂に入って早く寝なさいな!また明日ゆっくり教えて頂戴!」
そういって母さんは食器を片付けて部屋に戻っていった
何か知っているような気がするが、明日また聞いてみよう
そうして俺は風呂に入り部屋に戻り寝ることにした
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