青髪の少女
ゆっくり歩いて俺の横を通り過ぎて俺とイノシシの間に割り込んできた声の主
はっとして通り過ぎたローブのフードを深く被った彼女?に声を掛けた
「おい、あんた危ない!あいつは俺のせいで興奮している!すぐに襲い掛かってくるぞ!」
だが、忠告も空しく彼女?は歩みを止めない
「大丈夫、あいつは動けない、それにあの程度…いやそもそもに普通の動物に遅れは取らないです」
そう言ってこっちを振り向いた。
青…髪…?自分と同じ青髪を俺は今まで見たことが無かった。亡くなった親父も青かったと母さんが言ってたが、町に行っても見たことが無く、他にも見たことが無いと言われる程である
彼女の顔立ちは整っていて綺麗より可愛く可憐という言葉がピッタリだろう。平時に村で見かけたら見とれてしまう程の容姿である
だがそれよりどう見ても若い、俺より若い可能性もあるくらいだ
そして普通の動物?どういう事だ?まるで普通の動物がいるみたいな言い方だな
「それは一体どういうことだ?」
「先ずはあいつの相手をしてから。話は…それからしますね。そこで見ていて下さい」
そう微笑みかけてきた少女は腰の剣の柄に手をかけてイノシシに向かって構えた
その瞬間脅威が跳ね上がったのか、イノシシが更に興奮し、怯え、一心不乱に少女に突進を仕掛けてきた
大きく息を吸った少女は低い姿勢を取ったと思ったら一瞬のうちにイノシシの首を切り落としていた
なんだ今のは?少女が目の前から消えた?消える瞬間に彼女がブレたと思えばイノシシの左右にほぼ同時に現れて左右から切りつけたように見えた
いやそんな事ができるのか?断面をみる限り片側から綺麗に切り落としたと言っても遜色ないくらいである
「なぁ、いま…今の一瞬で左右から切りつけたように見えたんだが気のせいか?」
少女は剣に付着した血を払い鞘に納め、問いに答えてくれた
「えぇ、見えていたのですね、流石です。眼がいいんですね。そういえば最初のイノシシの突進もちゃんと見て回避してましたね」
「最初?まさか俺があいつの牙で剣を弾かれていた所から見てたのか?」
「はい、狩りの邪魔をしてはいけないと気配を消して見ていました。ただ見ていられず出てきてしまいました。すいません邪魔をしてしまって」
そういって彼女は申し訳なさそうに頭を下げたのだ
「いやいや、顔をあげてくれ!あんたが居なきゃ俺は死んでたかもしれないんだ!こちらがお礼を言う立場であって謝罪をされる事はないよ!助かった!」
そう言って改めて頭を下げ感謝の意を現した
「いえ、あのまま私が出なくても何とかしたのでしょう、そういう空気を感じました。ただ、私が見ていられない…そう思ってしまった時に気配が漏れ出てイノシシに私の存在がバレてしまったようです」
(見ていられなかった?何とかしたと思っていたのに?変な事をいう子だな?まぁ飛ばされたときにそう思ってしまったのか)
「そうか…でも助けられたのは確かだ、ありがとう!」
そういって再度頭を下げた
そうすると彼女はくすくすと口元に手を当て笑っている
「貴方は誠実な方なんですね。」
あははと笑いあって、話を戻すことにした
「そう言えばあの同時に見えたのは、あれは何かの技なんですか?あんな動き初めて見ました。あの身のこなし…もしかして貴方は騎士様なのですか?」
そういって率直に疑問をぶつけた
「いえ、私は騎士ではありませんよ。まだ16で騎士にはなれない歳ですし」
まいった、この子は俺より年下だったのか、それで圧倒的な強さ、天才ってやつなのか?
「すごいな、その歳であの実力…誰かの元で師事を受けているのか?」
「はい…私の場合はとう…父に教えを受けておりました。」
何かを言い淀んだように感じたが、なるほどやはり剣の師が居るというのはこんなにも差が出るのか…自己流で努力している俺とは全く違うようだ。やはり騎士にはまだなれないのかもしれない
「なるほど、やっぱり素晴らしい師が居たのか納得したよ」
「いえいえ、私などはまだまだ…それにさっきの技は私の魔法に寄るものですし…魔法についてはご存知ですか?」
「魔法…聞いたことはあるが初めて見た。あれが魔法なんだな」
「はい、私の魔法《ミラー》です魔力によって全く同じ動きを鏡合わせのように動く分身をだす魔法。だから私が左右同時に見えたのでしょう」
「そうか、ちなみに一瞬にしてイノシシの横に移動したのも何かの魔法か?」
「いえ、そちらは身体能力と技術です」
なんだと、魔法って言われた方がまだ納得できたのに、あれが身体能力だなんて、どれだけ差があるんだ…
そう思い内心かなり落ち込んだセインだった
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