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「ところで、今、気付いたけど、お前、何て呼べばいいんだ?」

 僕の憧れだった人は……僕にそう訊いた……。

「好きな名前で呼んで……」

「いや……本当の名前は何?」

「僕、自分の名前嫌いなんだよ……」

「キラキラネームとか?」

「違う」

「じゃあ、何て名前だよ?」

「堀田隼人……この前、ボケて寝た切りになって誤嚥性肺炎で死んだ僕の祖父(じい)ちゃんが付けた名前だよ……」

「え? 格好いい名前だと思うけどな……」

「うん、祖父(じい)ちゃん、時代劇マニアでさ……ある時代劇の主人公の名前を僕に付けたんだ」

「どんなキャラ?」

「ニヒルでイケメンで強くて女にモテモテ」

「いや、なら、何で、その名前嫌いなんだ?」

「小学校高学年か……中学校の初めごろに、初めてインターネット使った時にWikiで調べたんだ……僕の名前の由来になったキャラを……」

「え〜、Wikiに項目立つほどの有名なキャラだったのか?」

「うん……で、近くの公立図書館で……その時代劇の原作小説借りて……読んでみた」

「どうだったんだ?」

「昔の小説なんで、読みにくい上に……文庫で上下巻合せて一〇〇〇ページ以上だったんで、読み終るまでに何度も何度も借りなおした」

「あ……大変だったんだな……。でも、そんな『なろう系』の主人公みたいなキャラだから……きっと、俺がモデルになった某超有名ラノベの主人公みたいに……」

「違うッ‼ ()()()()()()()()()()()()()ッ‼」

「はぁ?」

「オタクでも良く居るだろ、ネットで拾ったマンガのコマをSNSに貼り付けて、誰かを論破した気になってるマヌケが……。でも、元のマンガを良く読んだら……そのコマだけ見たら正論だと思ってた台詞が、実は、大間違いだったとか……。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ‼」

「ごめん……俺も、それやった」

「そうだよ……僕も同じ事やって、論破したつもりになった相手から、馬鹿として晒しモノにされたんだよッ‼ ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ‼」

「で……結局、お前の祖父さん、何やったの?」

「だから、文庫で一〇〇〇ページ以上で判らない?」

「判らない」

「その小説、何度も映画やドラマになってるけど……小説全体じゃなくて、一部だけなんだよ……。で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っ‼」

「だから、お前の名前の元になった『なろう系』の主人公みたいな時代劇のキャラって……どんな奴だったんだ?」

「『(笑)(かっこわらい)』が付くタイプの主人公」

「……今、何て言った? なろう系の典型パターンみたいな……『イケメンで強くて女にモテモテ』の奴が……何で、そうなる?」

「主人公って言ってるだけの……単なるナレーター‼ 単なる説明役‼ その『主人公』が居ても居なくても……話の大きな流れは変んないよ〜な奴ッ‼」

「あ……なるほど……」

「最後は、夢も希望も全部無くして自殺した、ってオチっ‼ あの糞ジジイ……僕に……よりにもよって……元祖『主人公(笑)』の名前を付けやがったんだッ‼ クソっ‼ クソっ‼ クソっ‼ クソっ‼」

 ちくしょう……ボケて寝た切りになって……僕の一家を無茶苦茶にしただけじゃなくて……ああああああ……あの世に行ったら、まずは、あの糞ジジイを殺してやるぅ〜ッ‼

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