(1)
「うらぁ〜ッ‼」
「うらぁ〜ッ‼」
「うらぁ〜ッ‼」
有色人種しか居ない文明人っぽい一行に次々と襲いかかる白人にしか見えない蛮族達。
見た限りでは……あれ? 僕、視力が両方とも〇・二ぐらいなのに、やたらはっきり見える。
思わず、自分の顔を撫でてみるけど……眼鏡は無い。
ともかく、結構離れてるのに、1人1人の顔がやたらはっきり見える。
白人っぽい蛮族は、ご丁寧に、金髪碧眼ばっかりだ。
そして……。
ドゴォっ‼
え……えっと、これは「文明の利器」って呼んでいいんだろうか?
肌の白い蛮族達は、文明人らしい有色人種達が乗ってた馬の足に蹴られる。
更に倒れた所を馬の足で踏み付けられる。
踏み付けられる。
踏み付けられる。
踏み付けられる。
ゲシゲシ踏み付けられる。
死体が原型をとどめないまでに踏み付けられる。
あ……何か、こんなシーン、前世で観た覚えが……。
軍の元・特殊部隊員が主人公のアクション映画の戦闘シーンだ。
大量の敵をドン引きさせる為に、まずは、最初の相手を見せ付けるように、わざとエグい方法で殺し……。
「う……うら……?」
「う……うら……?」
「うら⁉ うら⁉ うら⁉」
最初に突撃した仲間が死体蹴りならぬ死体踏みされて、ドン引きしてる肌の白い蛮族達。
そして……。
何て言うか……「あいつら」版の僕みたいな感じの……一番、体が貧弱で、一番、トロそうな奴が、他の奴に「お前が行け」と身振り手振りで命令されてるけど……。
「うらぁ〜ッ‼」
最後に「(泣)」を付けた方が良さそうな絶叫と共に……。
ドテンっ‼
走り出そうとしたけど、膝がガクガクになってたみたいで、あっさりコケた。
もうやだ。
思い出したくもない前世の事が次々と脳裏に蘇える。
前世の僕の……自分でも一番嫌だった面を見せられてるような……いや、まんかか。
ともかく、吐きそうなほどに嫌な気分だ。
「うきゃぁ〜ッ‼」
その絶叫が誰のモノか、最初は判らなかった。
そして……絶叫をあげているのが僕自身だと気付いた時……。
わからない。
怒り。
怒り。
怒り怒り怒り怒り怒り……。
何故だろうか?
面倒事に関わりたくない……そう思ってたのに……。
安っぽい正義感なんだろうか?
ともかく、僕は……。
「うきゃぁ〜ッ‼」
どうなってんだよ?
こんな鎧着たまま、何で、こんなにバカ高くジャンプが出来るんだ?
ドゴォっ‼
白い蛮族の1人の顔面に僕のドロップ・キックが命中。
蛮族の中ではイケメンっぽい方だった、そいつの顔は、一瞬にしてグロもここまで来ると逆に笑えるような代物に変った。
そして、僕は大剣を抜いて一回転……おい……。
威力は有るみたいだけど……切れ味は酷い剣だったようだ……。
剣で斬ったと言うよりも、鈍器か何かで叩き潰したような死体が、瞬時に大量生産される。
「な……何者だ?」
文明人一行のリーダーらしい黒人が、僕に、そう訊いた。
まぁ、ナーロッパ転生モノの御約束で言葉は通じるようだ。
「あひゃひゃひゃひゃッ‼」
僕は意味不明な笑い声をあげながら……。
「な……何を……?」
僕は大剣を高く振り上げ……。
しかし、その隙に、黒人も剣を構え……。
ドゲシっ‼
しかし、僕の大剣を自分の剣で防ごうとした黒人は、自分の剣ごと体を砕かれた。
ついでに、乗ってた馬も真っ二つ。
「しぃねぇ〜〜ッッッッ‼」
「なっ?」
「おいっ?」
轟ぉっ‼
僕は……残りの2人も一瞬で真っ二つ……と言うか、真っ八つにした。
馬の首が2つ。
首を失なった馬の胴体が2つ。
上半身を失なった人間の下半身と、下半身を失なった人間の上半身が2つづつ。
それら合計8つが地面に転がっていた。