表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

出会い

 夜まで近くのダンジョンで依頼をこなし続けた俺は、順調にレベルアップしていた。


「よし、なんとかレベル10まで上がったぞ。でも今日はもうキツイな…続きは明日にでもするか」


 そう決めて町を散策していると、妙な建物が目に止まった。


「あそこ…なんか人の笑い声が聞こえる」


 もしかしてこの手のゲームにありがちな酒場か?大体酒場と言えば情報が多く集まることで有名だ。

 お金もあるしちょっと行ってみるか。



 

「は?カジノ?」


 そこに着いたとき、俺が予想していたものとは全く違うことに気づいた。

 目の前の建物は、至る所にトランプやルーレットの絵看板が置いてあり、おんぼろで今にも壊れそうな木製の開き扉の上には、『CASINO』と堂々と記されていた。


「はぁ、なしだなし。俺はこんなことをするほど、余裕はないんだ」


 正直に言うと、カジノという言葉には悪いイメージしかない。 

 人生終了させた人が内臓売買に手を出す漫画をどこかで見たことがあるからか、それとも学校様の教育の賜物か。

 そのため期待外れな展開に思いっきり落胆して、そのまま俺は立ち去ろうとした。

 その時、カジノの扉のすぐ向こう側から俺を呼び止める声がした。


「…おい、そこの坊主。ちょっと待ちな」


「え?俺?」


「ああ、そうだ。…坊主、ここまできてシッポ巻いて逃げるなんて、まだまだ尻の青いガキだな。」


 はじめましてでいきなりなんだこいつ。

 困惑で顔をしかめるが、そいつは姿も見せないまま話を続ける。


「まぁ、むすっとすんな。なに、せっかくここまでやってきたんだ。やってみるのが男ってもんだろ」


 入り口の扉がギギィと開き、声の正体がとうとう姿を現す。

 こいつを見てすぐに理解した。俺は大人への理解が甘かったことに。


「…あの、なんで服着てないんですか?」


 そのパンツ一丁の男は自分の緑の髪をぐしゃっと掴んで言った。


「ん?負けて身ぐるみをはがされたんだ。」


 俺は数刻前の自分を殴りたくなった。




 結局、この男の服の購入に付き合った。ちなみに本当に一文無しだったので、俺が服を買わされるはめになった。

 むかついたので、一番安いのを適当に買ってぶん投げてやった。

 それを着た男は、まるで奴隷みたいな服装になっていた。


「いや悪いな。お金はちゃんと…いや倍で返すからよ」


 あの姿を見せられた後で、その言葉に期待できる人は多分脳がない。


「いや、それはもういいですよ…。てか、もうギャンブルなんてやらないでください」


「そいつは無理だな。ギャンブルは俺の人生だからな」


 いやかっこつけてるけど無理あるからなお前。


 ベンチに座る男は服装こそ終わっているのに、絶妙にキザな振る舞いをしてくるからむかつく。気分晴らしにまたダンジョンでも行くか。

 離れようとする俺を、そいつは慌てたように引き留めてきた。


「おいちょっと待て、お前名前は?」


「は、はぁ…レイルです」


「いい名前だな。俺はダレン。ちょっと付き合え」


 そう言って無理やり俺の首をヘッドロックして、そのまま引きずっていく。

 ゲームだから力に特段の差はないはずなのに抜け出せない。

 そうしてもがきながら連れてこられたのは…


「いや、さっきのカジノ!」


「いいだろ、ギャンブルは楽しいぞ。お前には素質があると見た」


「そんな素質いらないけど!?」


 あ、これもう無理だ。適当に済ませて帰ろう。



 

 いや、堕ちたよ。即落ち二コマしちゃったよ。

 エ〇漫画の導入もびっくりの超速展開だった。

 正直、初めてギャンブルしたけどすげー楽しかった。

 ダレンが口うるさく色々教えてきたけど、最後には彼に尊敬を感じちゃって、後で我に返って絶望で頭を抱えた。

 ちなみに結果は負け。財産の半分を溶かした。

 何よりも怖いのが、頭では終わったと思っても、心では一切の後悔も感じずに晴れやかになっていることだ。つまり、俺は限界ギャンカスの素質が本当にあったらしい。


 ダレンとフレンド交換をして、ゲームを終了した俺はベッドの上で考えこんでいた。

 ギャンブルの楽しさはよくわかった。てか沼った。


 だがのめりこむことで、起きることが破滅であるのも分かる。

 ダレンみたいに金を使い込んで追いはぎされれば、女の子からは全く黄色くない悲鳴が上げられ、ある意味スーパースターの仲間入り。

 最終的には堕ちるところまで堕ちて、臓器売買もあるかもしれない。

 俺はダレンみたいに臓器とバイバイしたくない(してない)。売買だけに。


 …俺は一人でむなしくなった。



 その時、俺の脳に電流が走る。

 使い込んでしまうならば、お金をそれ以上に稼げばいい。

 すぐに攻略サイトを開き、必死に調べる。


 答えはすぐに見つかった。特殊ステータス「獲得」だ。この値が高いと、敵を倒したときのアイテムドロップ量が増える。

 つまり、落ちるお金が増える。


「これならお金がたくさん手に入る!明日から早速装備をそろえるか!」


 はたから見れば、短絡的なアホかもしれない。だが、今の熱意は完全にお金稼ぎとギャンブルに向いているのだ。

 それで何が悪い。


 そして、このズレにズレた熱意が俺のVRライフを大きく変貌させることになる。



みんなは不審者に絡まれたら110しようね

☆—―――――――――――――――――――――☆

ここまで読んでくれて本当にありがとうございました。

誤字脱字や辛口評価等も大歓迎です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ