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3話 俺がモデルに?え?ほんとに?

第一話から読んでもらえるとありがたいです!

白坂家から帰宅してから柚と一悶着ありつつも俺たちは今母の帰りを待ちながら食事を作っていた。仕事で忙しいうちの母親はたいてい夜も会社に泊まっているとかで帰って来ない。今日は珍しく帰ってくるとかで、そのため俺たちは出迎えの準備をしているというわけだ。


「でも珍しいね、お母さん一週間前に帰ってきたから次はもっと先だと思ってたのに。そういえばお母さんの話だとお兄ちゃんに少し用があるとかって言ってたような…?」


「あーそうなの?俺なんも聞いてないや。」


「お兄ちゃんはね、話聞いてないんだよ…私の話も時々聞いてないの、私分かってるからね?」


じとっとした目で俺の方を見てくるがそんなことはない。確かに母さんの話は聞いてない時があるけど、柚の話はいつだって真剣に聞いている。俺もそれを目線で必死に伝える。


「…いやそんな顔で見てきてもダメだよ。クラスの女の子たちは許してくれるかもしれないけど私は妹だからね、もう散々見てるんだから。いまさらそんな子犬みたいな表情で見てきても絆されないよ!」


日に日に俺へのあたりが強くなっている気がする…。とはいえ俺たちはほとんど二人暮らしに近いわけで、柚に見放されたら俺は生きていけなくなる。


「柚の話はちゃんと聞いてるよ。それから全然話変わるんだけどさ、今日雪ちゃんと久々に話せたよ。お前にもいろいろと迷惑と心配をかけたなって、ごめんね。」


改めて面と向かっては言えないだろうけど、二人で料理をしている時だけは意外と素直に話せる気がする。俺たちは喧嘩なんかをしてもこうやって仲直りをしてきた。喧嘩の原因は基本的に俺が悪いんだけどね…。


「別に二人だけが悪いって問題でもなかったからね。でもよかったー!私二人には仲良くしてて欲しいもん!雪ちゃんも喜んでるだろうなー!」


「雪も今度柚にちゃんと会いたいってさ。家にでも連れてくるよ。…味どう?今日のやつなかなか良い出来だと思わない?」


俺は少しだけ皿に取って柚に味見をしてもらう。昔から柚に美味しいと言わせるために頑張ってきたから意外と料理には自信がある。


「うん!美味しいよ!やっぱりビーフシチューは家のが一番美味しいと思うもん、なんでなんだろうね。最高級とかは別かもだけど下手なお店で食べるより美味しく感じる。」


「それは俺の腕がいいからだろ…。俺もだいぶ腕上がってきたと思うんだけど…。てかそろそろ帰ってくるんじゃない?どうする?先に風呂にでも入ってきたら?」


そんなことを話しながらバタバタと準備をして、母さんが帰ってくるのを待つばかりになった。


そしてそこから少し待つと母さんも帰ってきて席につく。俺たちはようやく食事をしながらゆっくりと会話をすることができた。


ただしずっと柚が話していてゆっくりとした会話とは言い難いけどね…。


「それでねえ、お兄ちゃんってば私との約束も平気ですっぽかすんだからー!お母さん今日は泊まっていくんでしょ?一緒に寝てもいーい?」


「そうねえ、明日朝早いけどそれでもいいならいいわよ。」


二人でいる時が別に暗いというわけでもないが、やっぱり柚は母さんがいると嬉しそうだ。俺もそんな妹の姿を見て思わず微笑みがこぼれる。だけど俺は別にすっぽかしてないからな、寝坊しただけ。


俺たちは食事を終えて柚が食器を洗ってくれている。俺も手伝おうとしたら母さんから大事な相談があると言われ先につくよう言われた。真剣な母の表情に俺も背筋が伸びる。


「それで…話って?俺別にそんな怒られるような心当たりないんだけど…。別に親に言えないようなこともないっていうか…いやないこともないけどさ…!」


親からの大事な話がある、これより怖いことを俺はまだ知らない。


「えーっと…あのさ、モデル…興味ない?」


全く想定していなかった母の答えに俺も拍子抜けしてしまう。


「え?モデル?別に興味ないけど…。どうしたの急に、俺初めてされるタイプの質問でびっくりしたんだけど…。」


母さんは気まずそうな顔をした後に意を決したように口を開いた。


「実は…会社が潰れそうなの…!。契約してた子が引き抜かれてね、もともと小さな会社だからそれで一気に仕事無くなっちゃって…。自分の子どもにこんなこと頼むのは申し訳ないんだけどさ、葵の顔とスタイルなら間違いなく人気出るから!お願い一回だけ!ほんとに一回だけだから!」


こんなナンパが口説く時みたいな言葉を母親から並べられるとは思ってもみなかった。柚は嬉しそうに頷いているけど、何が嬉しいのか全くわからん。母親の勤める会社の経営危機だぞ…?


「えっと…まぁそういうことならダメとは言えないけど…。でもいつから?普通に学校もあるからそんなにはできないよ?」


「大丈夫!全然大丈夫!来週の週末あたりでどう!」


俺の人生でこんなに母親から圧を感じたことはないというほどの圧がある。俺は予定も確認しないまま頷くことしかできなかった。


「でも売れなくても文句言わないでよ?そりゃまぁ自分に自信がないとは言わないけど…そんなに売れるとは思わないし…。男が少ないとはいえなんの努力もしてないのにいきなり売れると思うほどほど甘くないよ。」


「いや自分の息子にこんなこと言いたくないけど、あんた顔面とスタイルだけはマジでいいから。調子には乗らないで欲しいんだけど、これはマジで。私も結構な数見てきたけどピカイチだよ。」


え、嬉しいなあ!あんまりストレートに褒められたことないからついニヤニヤしてちゃうよ。柚も頷いてるし、なんだよ俺がナルシストなのかと思ってたよ…!


「勘違いしないで欲しいけど、性格まで含めたら微妙だからね。うじうじしててヘタレだし、顔面とのギャップでなおさらヘタレに見えるから。」


この人俺に頼み事しにきたこと忘れてないか?いやいいんだよ?あなたの会社が潰れても。いやよくないけど!


「私もね!お兄ちゃんは外見で生きていくしかないと思ってたの!優しくて私は好きだけどさ、社会の競争で生きていけるか不安っていうか…。」


それは別に褒め言葉じゃないんだよ?あんまり実の兄とか息子にこんなに言うかな…。自信を持つべきかそうじゃないのか分からなくなるよ。


その後俺の話で二人は盛り上がっていた、ほんとに寝るまで。


俺はやっとベッドに入りふと考える。今日は本当にいろいろあった。雪と仲直りしたこともそうだけど、病気のこととかいろいろと。そして最後は俺のモデル話だ。このまま寝て明日になったら全て夢でした、なんてことにならないよう祈りながら俺は眠りについた。



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