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37、未来 【最終回】

最終回です。


「お前の捻じれた執着心にエルネストやサーラ嬢を巻き込むな」


フラヴィオ陛下のそんな声もドルフィーニ伯爵には全く聞こえていないみたい。

がっくりと膝を付いたまま、身動き一つしない。

うーん、イラレア元王妃様からの『迷惑』の言葉に、心が折れたかしらね。

わたしとしてはドルフィーニ伯爵たちイラレア派の人たちがこれで大人しくしてくれれば万々歳。

リリーシア様とお茶したり、フラヴィオ陛下の側に立てるくらいに立ち居振る舞いを優雅にって教師でも付けてもらっていろいろ勉強したり、淑女教育に重点を置いていってもいいかもしれない。


うん、そんな暮らしが出来ればいいな。


でも、また、フラヴィオ陛下に反するような者たちが出てくるのなら。

今みたいに拳を握って、相手をぶん殴るわ。



「……さ、もうここには用は無いな。行くぞラウラ、エルネスト」

「そうだね異母兄上。あー……、サーラ嬢にイヴォン、君ら今後どうするか、自分たちで話し合いなね。エドアルド君もね。ちなみにボクはもう表舞台に立つ気はないからね。王太子エルネストはとっくに死んでる。ここに居るのは身分なんてなーんにもないただの男だ」


フラヴィオ陛下がイラレア王妃派の皆様を放置して、さくさくと帰っていく。わたしはちらりとエドアルド様を見た。

そうしたら、何故だかエドアルド様と目線があって……、そうしてエドアルド様はわたしに向かって深々と頭を下げて来た。


ありがとうという感謝の意なのか。

それとも謝罪なのか。


分からないけれど……。


「わたしは、フラヴィオ様と幸せになるつもりだけど。エドアルド様はどうなさるの?」


元婚約者として、一応聞いてみる。エドアルド様は何故だかちょっと泣きそうな顔になって「さあな」とだけ、返事をした。




そうして、その後どうなったかと言えば。

イラレア派の皆様はそれぞれに降格だの罰金刑だの軽い処分にされたそうだ。というのも皆様ショックが大きいのか野望が消えたのか、というよりもイラレア派の中心にいたギド・デ・ドルフィーニ伯爵がね、エドアルド様からの話によれば、なんかこう……急速に老けたようになったそうだ。

屋敷の奥で、ぼんやりと空ばかりを見て過ごしているとか。妄執がごとき求心力を無くして、親イラレア派は自然瓦解のようね。フラヴィオ様に文句はあっても、対抗するほどの熱意はない。ま、一生発展性もなく愚痴愚痴言ってればいいわ。わたしのお婆様のようにね。そうそうウチのお婆様は……誰も、侍女にすら相手にされなくて、今では飼い猫相手に愚痴ってるのよ。哀れを通り越していっそ微笑ましいくらい。

イヴォン様は近衛隊に復帰した。北翼の一角には家族で住みたいと思う隊員のための、家族寮的な宿舎があって、そこにサーラ様と共に入居された。ようやくの新婚生活……ってカンジ?エドアルド様に弟か妹が出来る日も近いかも。

それで、エドアルド様がギド・デ・ドルフィーニ伯爵を引退させ、ご自分がドルフィーニ伯爵の当主となられたそうです。


何度かお会いして、立ち話的に話して。で、やっぱり、婚約していた時のつんけんした態度は、ギド・デ・ドルフィーニ伯爵の野望にわたしが巻き込まれないように遠ざけていたとのこと。

うーん。当時は嫌っていてごめんねと、エドアルド様に告げたら苦笑していた。

それから、フラヴィオ陛下とのことも、聞かれた。いきなり愛妾になんて抜擢されて、嫌じゃないかとかなんとか。


「エドアルド様。わたしは……ホントはずっとコンプレックスを持っていたんです。こんな容姿の女、好きになってくれる人なんているはずがないって。だから、力をつけて自立しようって」


前世のラヴィーニアのことをそのままいう訳にも行かないから、多少ぼかして話す。


「でも、そんなわたしにフラヴィオ様は綺麗だって言ってくださったんです。それ嘘とか口説き文句とかじゃなくて、本当にわたしにそれを納得させてくださった。……わたしは、フラヴィオ様の隣に立つには相応しくないと、ホントは思ってる。だけど、綺麗だってフラヴィオ様が言ってくださったから……、だから本当に綺麗になるように頑張るの。リリーシア様の立ち居振る舞いとか習って優雅に動けるようにとか、国情とか政治とかも理解できるようにって。今は無理でも十年後は誰からも認められる愛妾になるぞって」


自分自身への呪縛。身分が違うとか相手に釣り合わないくらい不細工だとか。仕方がないとあきらめて、痛む心は見ないふりをして、たいしたことではないと思い込んでいたこれまでの自分はもう捨てる。

綺麗になりたいの。

フラヴィオ様に釣り合うくらいに。

フラヴィオ様はそんなことしなくてもわたしのことを好いては下さる。だけど、誰も彼もから、フラヴィオ様の隣に立つのはこのわたし、ラウラ・ディ・ロベルティしかないと思われるように。


凄い野望よね。

無謀かもしれないけれど。


だけど、護衛が出来れば、お傍に居られればいいなんてふうに気持ちを誤魔化さない。

唯一無二の存在ってものになってみせる。


そう言ったらエドアルド様は苦笑された。


「幸せそうだなお前」って……。


わたしは胸を張って「もちろん」と答える。


「エドアルド様はどうですか?お幸せですか?大変ですか?」


ご縁は無かったけど、一応元婚約者だし。

嫌ってばかりいて、エドアルド様の本質ってやつを見ないでいたようだし。

お友達……ってのはおかしいけれど、被害者友の会って程度にはお付き合いが出来そうだ。

なら、エドアルド様にもわたしは幸せになって欲しい。

エドアルド様の人生を縛っていたギド・デ・ドルフィーニ伯爵はもう腑抜けて立ち上がれないようだろうしね。


「伯爵位を継いだばかりで、その上お爺様も呆けているし。まあ大変は大変だが……、幸せねぇ……。そうだな、状況が落ち着いて、ついでに失恋の傷が癒えた頃に、私も幸せになるよう前を向いて生きていこうか」

「失恋?どなたか好いた方がいらっしゃったのですか?」


きょとんと首を傾げたわたし。

エドアルド様はわたしを睨んで「ばーか」と言って去って行かれた。

……馬鹿だと?ちょっとは和解したかと思ったけど、やっぱアイツムカつくわー。


……ということを、西の離宮でお茶をしながらエルネスト殿下やリリーシア様に言ってみたら。


エルネスト様は「ラウラ嬢、そりゃあちょっと酷いんじゃない?婚約破棄された『ざまぁ』とか言うヤツのつもり……じゃないよね。天然?」とお笑いになり、リリーシア様は「恋愛感情に疎いのは、ラヴィーニアの頃からですものね。仕方ありませんけれど、ヴィオ兄様、今後大変ですわね……」とため息をつかれた。

大変だと言われたフラヴィオ様は、わたしのお腹をそっと撫ぜながら「別に。問題ない」と言った。


「それよりも、まだ動かんのか?」

「何を言っていますかヴィオ兄様。三ヶ月で動くわけないでしょう」


そう、イラレア王妃様の幽霊が昇天されたあの日から。

というか、その後の諸々を色々とフラヴィオ陛下が片付けて……、まあ詳しいところはわたしにはわからないのだけれど……、愛妾としてのお役目というか、前世からの想いを受け止めろ的に……、その……、毎晩のようにその……あの、ええと……の結果、わたしは妊娠した。今三ヶ月。お腹もまだ目立たないけど、つわりはピークです。超ツライ。


なので、長椅子に座り、しかもフラヴィオ陛下に寄り掛かり、上げ膳据え膳で大事にしてもらっております……。今も、目の前には適度に冷やされたレモン水。吐いてしまいがちだけど、栄養が取れるようにと、食べやすくカットされた果物がテーブルには並んでいる。


「生まれてくる子が女の子ならいいわね!そうしたらジーノかルシアンの婚約者にちょうどいいわ!」


リリーシア様は微笑みながら、赤子の産着を縫ってくださっています……。ものすごい上手。わたし、出来ないことはないけれど、裁縫とか刺繍とかあまりうまくないから、つわりが治まったらリリーシア様に手ほどきうけよう……。ラウラ綺麗化計画は……ううう、やるべきことが多すぎてどれから手を付けたらいいのか……って、ちょっと待ってシア姫。


「あの、シア姫様?ルシアン様はともかくジーノ様ではちょっとお年が離れているのでは……」


自分が産むのが女の子で、ジーノ様の婚約者になったら……、ひいっ!後の王妃になるじゃないっ!うわっ!恐れ多いいいいいいいいいいっ!


「んん?来年出産を迎える時に、えっと、ジーノは9歳だし、ルシアンだって7才よ。王族の婚姻なのだから、そのくらいの年の差なんて普通よ」


えーとあのそのー……。

困ってフラヴィオ様を見る。


「シア。俺とラウラの子と、お前の子を娶せたいのは分かるが……、ジーノやルシアンの希望をきちんと聞けよ。それに俺らの子の意見もな。……あんまり暴走してギド・デ・ドルフィーニみたいになるなよ」


ギド・デ・ドルフィーニの名を出されたシア姫様は「ううー……」と口をすぼめてしまわれた。ああ、なんかお可愛らしい。


「自由に生きればいいんだよ。心のままに。俺だってなあ、ラヴィーニアが死んでもう誰も愛さないとか思っていたのに、こうやってラウラに生まれなおしてきてくれたんだから。俺とラウラの子なんだから、きっと、思い込んだら一途に、好きな相手の元に行くと思うぞ」

「そう……ね、ならばヴィオ兄様とラウラの子どもがめっちゃくちゃ惚れるくらいウチのジーノとルシアンをカッコいい男に育てればいいのねふっふっふ……」


不敵にお笑いになっておりますが、ええとシア姫様。それ、わたしの子が女の子だったらの話ですよね。男が生まれてきたらどうすんですか……?


わたしは困ってフラヴィオ様を見る。


「まあ、何か問題が起こったら、またラウラが拳で殴って解決すればいーんじゃねえか?」

「ちょ、ちょっとフラヴィオ様何を仰るのっ!」

「大丈夫。ラウラは思ったまま動けよ。それで問題ないし、問題が起こったら……俺はこれでも一国の王だ。何でも解決してやるよ」


フラヴィオ様ったら男前すぎるわ。

惚れ直した。

ちょっと百倍くらい惚れ直した。


そうしてわたしたちは微笑み合う。


呪縛、呪い、過度な期待……、そんなものすべて乗り越えて、諦めないで、そうして一緒に幸せになりましょう!







終わり













お読みいただきましてありがとうございます。


これにて完結。


また次のお話でお会いできればうれしいですm(__)m



誤字多くてすみませんm(__)m 報告くださった皆様に感謝を! ありがとうございますm(__)mm(__)m



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




2022年11月24日、日間異世界〔恋愛〕ランキング76位、11月25日66位にランクイン!

ありがとうございますm(__)m感謝☆


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