32、事前準備
愛妾として、愛玩されるためにわたしはフラヴィオ様のお傍にあがったのではない。あー……いや、それもちょっとあるけど。うん、ありありだけど。
というか、イラレア前王妃様関連のごちゃごちゃが収まったら、もう、フラヴィオ陛下だけ見て生きていきたい所存だけど。
だけど今やるべきことは、イチャイチャではないの。
わたしは、今世こそフラヴィオ様を最後までお守りする。もちろんリリーシア様もね。
ラヴィーニアの時のように、危険な状況で途中リタイアなんて、もう二度としたくはない。
護衛気質と言うなら言え。
だけど、愛する男を守りたいというのはわたしにとっては当然の事。
それにわたしは決意したのだ。わたしは、フラヴィオ様の隣で生きていく。フラヴィオ様に相応しいわたしになる……と。
ならば、離宮の奥でのんびりとリリーシア様とお茶を飲んで過ごしているだけで良いはずはない。
あ、いや、それも楽しいんだけど。愛妾としてはね、そういうご令嬢やご婦人方との交流も大事。
だけど、それは状況がもっと安定してからでもいい話。
内乱になるのか、ギド伯爵との話し合いで終わるのかはわからないけれど、またフラヴィオ様のお命が脅かされるような状況にさせてなるものか。
じゃあ、守るために、わたしには何が出来る?
今のわたしは単なる伯爵令嬢に過ぎず、そこに愛妾という肩書が加わっただけ。
さっさと騎士団の入団試験でも受けていれば……とも思ったけど、そんなことを悠長にしている時間はない。
なら、裏口入学的な感じでも構わないから、フラヴィオ様の護衛の位置を勝ち取るべし。
わたしはフラヴィオ陛下に許可を取り、近衛隊の訓練に参加させてもらうことにした。
フラヴィオ陛下はすぐに承諾して下さったけれど、近衛隊の隊長たちには反対された。
まあ、当然よね。
愛妾っていうのは文字通り、愛されていればいいわけで、傷の一つも付けるわけにはいかないでしょうし。
まあ勝手知ったる近衛隊なので、わたしは練兵場に勝手に入り込み、わたしという侵入者を排除しようとする近衛兵たちを殴って蹴って張り飛ばして……と、勝手に訓練に参加した。訓練というよりも、押し込み強盗的な?勝手な試合申し込み?やったもん勝ちってカンジかしらね。
「わたしはフラヴィオ陛下の愛妾ですけれど、それはベッドや個室の中でも陛下を護衛できるようにとその愛妾という立場を獲得しただけよ。守るために愛妾になった。ただそれだけよっ!」
なんて叫びながら、近衛兵を次々と倒していった。
で、結果。
わたしはいつでも近衛隊の訓練に参加してよしっ!と近衛隊の皆様のお墨付きを頂いた。
まあ、脳みそまで筋肉みたいな部署だからね。
強いものが正義だし、強ければその意見も通りやすい。
実力主義と言えばいいのかしらね。
で、愛妾兼護衛ということで、近衛兵には話が通った。
これでとりあえず、立場は確保。
それでもって、わたしはフラヴィオ陛下に提案をした。
「では、その会場を、室内ではなくイラレア前王妃の墓所で行うのはいかがでしょう?」
墓とはいえイラレア前王妃の前でギド・デ・ドルフィーニ伯爵が「エドアルド様がイラレア前王妃の孫」などという嘘を言えるのかどうか、それを試したい。
わたしのその提案はフラヴィオ陛下だけではなくカルーゾ侯爵達もこぞって賛同してくれた。
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完結まであともう少し……の予定。
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