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13、恥も外聞も投げ捨てて


しどろもどろになってそんなことを言ってみれば、フラヴィオ陛下はさわやかにお笑いになるし。

お父様もお兄様も未だに混乱で固まっている状態だし。

ジュリアちゃんは、唖然状態から復活したかと思えば、何故か瞳をキラキラしているし。あああああ誰か助けてー。


「まあ、言われていきなりじゃあ返事も無理か。とにかく、まずはランベルト・ディ・ロベルティ伯爵、婚約破棄の書類をさっさと用意しろ。で、そっちの元婚約者、それにさっさとサインして提出しろ。俺の権限で、最速の処理をしてやる。その後ラウラは俺の愛妾として西の離宮に迎えるから。領地には戻らずしばらく南翼にて過ごすように」


返事も何も、断るという選択肢は無いのですね?当然承諾一択なのですかそうですか嫌ではないですもちろん嬉しいというかご褒美が大きすぎて怖いというなんといえばいいのかええと混乱。

とにかくもう陛下のお心の中ではわたしが愛妾となる未来が決定コースなのですね?


「ああもちろん。返事は『はい』か『かしこまりました』か『喜んで』の三択だけだ」


待って、そんなことを言いにわざわざこの南翼までいらっしゃったのですか陛下。というかわたしに愛妾になれという命令など行っている場合ですか陛下。先ほどの襲撃者の対応はどうなったのですか!?え?もう対応は終わって、各部署に指示を出したから、後は結果の報告待ち?で、待ち時間にこの南翼まで来て、王城でのデビュタントは延期、今回王城まで来た皆様の旅費だのなんだのは王家から補填すると指示を出しに来たついでにわたしに求婚しに来たですか!合理的!仕事早い!じゃなくてっ!


わわわわたしはどうすればいいの!とりあえず、周囲の皆様からの視線が痛い!


「だから、『はい』と言えばいいと思うぞラウラ」


そう言ってお笑いになって、フラヴィオ陛下はわたしの顎にそっと手をかけた。


「え?」


ぐいっと陛下の方に顔を向かせた。

近いっ!ちかー――――――――いっ!陛下のお顔が至近距離いいいいいいいいっ!

ああ……翡翠色の瞳が!ああ!目元に小さなほくろがある!いやああああ十五歳のころと違って男っぽい色気が増し増しっ!なのですがっ!直視できないほどの強い視線に押されそう。ああ……薄い唇が好印象。その唇が、わたしに近づいてきて……え!?


すっと、掠めるみたいに。

ふんわりとした羽根みたいに。


わたしの頬に、何かが触れた。



い、い、い、今の何っ!


フラヴィオ陛下の顔が離れて、わたしの顎に添えられていたフラヴィオ陛下の指も離れて。


「ラヴィーニアが俺に残していったのほど情熱的ではないが。まあ、まだお前にも婚約者がいるのだし、今はここまでだな」


いや、あれは情熱的とかではなく《魔道の継承》ですがっ!

わたしは思わず陛下が触れた頬を押えてしまった。

き、きす、された。頬にだけど。だけど……。


「へ、へへへへ陛下っ!な、なにをなさいま……」

「何とはなんだ。今のお前はキスも知らないのか?」

「ちちちち知識としては、ししししししし知ってはおりますが何故わたしにっ!」

「頬にキスなど挨拶のようなものだろう。正式にお前が俺の愛妾になれば、唇どころか頭の先からつま先まで体中、余すところなく行うが?それからそれ以上も当然な」


ふんぞり返っておりますが陛下っ!それ以上ってナニいいいいいいっ!!わたしのそうぞうをぜっするみちのせかいがあるありあ……。


「け、経験豊富な陛下におかれましては、その、キ、キスなど大したことはないかもしれませんがっ!わたしは、はじめてで……」


初めて、とわたしが真っ赤になりながら言ったら、フラディオ陛下はものすごおおおおおおおく嬉しそうな顔をした。なぜっ!


「そうか、ラウラでは初めてか」

「そそそそそそそそうでございますよっ!」

「そこにいる婚約者とは経験はないのか?」


は?エドアルド様?


「手を繋いだこともございませんっ!!」


ましてやキスなど!


「そうか、なら、ラウラとは一から順に、お互い初めて同士ということで進めて行けるわけか。それは嬉しいな」


うんうん、と自分一人でうなずいていらっしゃいますが。え?お互い初めて同士?何か?ってナニがですかっ!?まさかっ!


「そ、そ、そんなわけございませんでしょうっ!」

「うん?何がだ?」

「貴方は国王陛下でいらっしゃるんですよ?」

「そうだが?」


陛下はわたしが何を言っているのかわからないとばかりに首をかしげます。


「一国のっ!国王陛下がっ!閨教育をされていないわけないでしょうっ!それに妃候補に婚約者に、そうじゃなくても侍女だとか、高級娼婦の皆様とかっ!より取り見取りでいらっしゃるでしょうッ!キスどころかそれ以上も当然色々アレコレこなしていらっしゃらないのはおかしいじゃないですかっ!?それに貴方様は二十九歳にもなる健康な男性でしょう?キヨラカな訳はないじゃないですよねっ!」


わたしは、恥も外聞も投げ捨てて怒鳴ってしまった。



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