10、【挿話・フラヴィオ視点】
例えば太陽に照らされた海の波。水平線にしずむ太陽。夕焼けに赤く染まる空。
俺が初めて見たラヴィーニアは、そんな『色』を纏っていた。
きれいで、どこか懐かしくて。眩しくて、目を細めてしまう。だけど、いつまでも見ていたい。そんな『色』。
俺の持つ《魔道》はその人間が持つ感情が『色』として見えるというものだ。
だから、物心ついた時から色々な人間の色々な『色』が見えてきた。
口では俺のことを褒めたたえておきながら、真っ黒で歪な『色』を纏う者。
笑顔を浮かべながらも、どろどろの汚水のような気持ち悪い『色』を纏う者。
心が読めるわけではないが、その『色』を見れば、笑顔の裏で何を考えているかはなんとなくわかる。
だから、ラヴィーニアに初めて会った時は感動した。こんなにもきれいな『色』を纏える人間がいるということに。
だから、思わず興奮して「うわあ……っ!すっごいきれい!こんなにきれいなの、今まで見たことが無いよっ!」と言ったのに、周りの護衛たちは笑うし、当の本人も口では嬉しいですありがとうなどと言いながらも俺の「きれい」という言葉を全く信じていなかった。
悔しくて、不貞腐れた。誰にも見せてやらないぞ、と思った。まあ……コドモだったしな。
……まあ、すぐに、あんなにきれいなものがそこにあると黙っていられなくて、リリーシアにはこっそりラヴィーニアの『色』を見せてやったけど。
ラヴィーニアのことをゴリラだのなんだの貶める言葉を言っていたけれど、長身で、かなりの筋肉量を誇るっていうだけで、可愛い女性だと思った。『色』だけじゃなくて。護衛の仕事は真面目にするし、俺とリリーシアの遊び相手もしてくれるしで。ホント、子どもの思いだけど、俺は、俺たちはラヴィーニアが大好きだった。
それが、俺達を守って、ラヴィーニアは死んだ。
母が失言をして、イラレア前王妃が母を刺して。
まあ、それは、薄情かもしれないけど、仕方がない。刺されるだけの発言を、母は、した。イラレア前王妃に肉体を剣で斬られた結果死んだけど、母だって、言葉というナイフで、イラレア前王妃をズタズタにしたのだ。
『色』が見える俺には、それがすぐに分かった。母が、イラレア王妃の心を殺したってことが。
だけど、俺は……母はともかく、ラヴィーニアを結果的に殺したイラレア前王妃が許せなかった。息子としては薄情かもしれない。だけど、初恋の女が自分を守って死んだんだ。悔しくて仕方がない。
ラヴィーニアの最期。唇に受けた《炎》の感触。
あれから十四年。俺はラヴィーニアのことを忘れたことがなかった。
時折無意味に《炎》を燃やし、ラヴィーニアの『色』を思い出して。
あの時、ラヴィーニアが死んだ時、逃げるしか出来ないで、死んだラヴィーニアの遺体もそのまま野ざらしにした。そんな非力が悔しくて、力をつけた。
そうして今、ラヴィーニアと全く同じ『色』を纏った少女を見た。
白いドレスを返り血で真っ赤に染めて、剣を構えてこちらを見上げて。俺と目が合った瞬間に、その剣をカランと床に落として。信じられないと目を見開いて。
ああ……。お前、俺に再び会うために、生まれ変わってきてくれたのか?
直ぐに、わかった。ラウラと名乗った少女が、ラヴィーニアの生まれ変わりだと。あんな『色』二人といるはずはないからな。
なら、俺のすることは一つだ。
覚悟しておけラヴィーニア、いや、ラウラ。もう俺は、お前に守られていただけの子どもじゃない。
待っていろ、絶対に、今度こそ。この手に閉じ込めて、もう離さない。
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