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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

詰みゲーだけどチートを目指しますーなんか別のゲーム始めちゃいました?ー

作者: 智遊

「よし、ダイブしよう」


あたしはリクライニングにもたれかかって機器をオンにする。

ベッドに横になって使用するタイプの機器もあるが、長時間横になって起き上がると体調が悪くなるのでリクライニングチェアタイプがあたしは好きだ。

たまに取り外してベッドに持って行くけど。


なんの話?なんの話って言われたらゲームの話なんだけどね。

両手でリモコン握る家庭用ゲーム機からVR型ゲーム機にハード移行して数十年。

今やフルダイブ型の体験ゲーム機が世の流行りである。


One and Only Online


通称サンオー。文字で書くと3O。

今からやるソフトが目の前に出てきたのでそれを選択する。

もう既にVRでのmmoは安定販売されており、今現在あたしは自分に合うmmoを探していた。

3Oのキャッチコピーは「第二のあなたの故郷」だそうで。

冒険するもよし、現実でできない趣味をするもよし、箱庭をつくるもよし。

という趣旨のゲームなんだそうだ。

それを見つけたあたしは悩んだ末に購入を決定した。

実は、数年来続いているオンラインシミュレーションゲームがあるのだが、あれの息抜きになるのではないか。というのが大きな理由だった。

あのゲームが楽しいか楽しくないかと言われると悩みどころなんだけど、そこで出会った人たちとどうも別れ難くて辞めれないでいるのだ。

なので息抜き息抜き。

今日の正午が配信開始なのだが、現在10時。

流石にキャラ作成くらいはできるだろ。

できるだろう…?


『配信開始は12時です。12時までお待ちください』


嘘だろ…キャラ作成くらいさせてくれよ…運営。

つーか、ログイン重なってキャラ作成で鯖落ちさせない自信がある運営は素敵だとおもうけど、無謀なんだよ!

本当に鯖落ちさせないでほしい。


はぁー。と一息ついて画面をスライドさせた。


「しゃーない。いつものインするか」


ここ数年ずっとログインし続けてるシミュレーションゲームを選択してダイブの準備をする。

一度深呼吸して。


「ダイブ」


あたしの意識はゲームの中に吸い込まれていった。

そしてあたしは知らなかった。

この数分だけのログイン通知だったのにも関わらず、大急ぎで3Oを購入ダウンロードした馬鹿たちがいたことを。


※※※※




正午になり、即ログインしたあたしは宇宙風空間に身を投げ出していた。

あ、これ気持ちいい。けーどー。

目の前に透かし黄緑の妖精さん掌サイズが現れたので、体勢を腹這い状態にして妖精さんの真前に顔を置いた。


「こんにちわ、妖精さん」

『こんにちわ、わたしは管理AI3605号です。あなたのお名前を教えてください』

「フィーアっていうの、3605さん、よろしく」


妖精さんってそのまま呼んでもいいけど本人が名乗ったからそっちで呼ぶべきだろう。


「ねえ、3605さん。とりあえず触ってもいい?」

『ええ、どうぞ。その間にキャラ作成のため体系をトレースします』

「はーい」


3605にはかなり精度のいいAIを積んであるのだろう。考えるそぶりすら見せず流された。

許可が出たのでそーっと3605に触ってみる。

指先に触れたのは少しひんやりとした水のような感覚。


「3605さんは何でできてるの?」

『わたしは情報の塊でできています』

「そうじゃない」


いやそうだけど。そうだけども。

設定ってあるじゃん?水の妖精を象ってる、とか風の妖精なんだ、とか。

肉感のない妖精を指先で突っついたり撫でたりしていると『終わりました』と妖精さんが言った。

視線をずらすとそこにはゲームの世界に落とし込まれたあたしが立っていた。


「ちょっと肩幅減らして横幅減らして」


すかさず真っ先に注文をつける。


「背はかえられないんだよね?」

『初期は誤差の範囲から変更することはできません。尚、設定解除の認定を受けられてる方のみ大幅な変更ができます』

「はいはーい、解除認定受けてる受けてる」

『確認します』


通常、フルダイブ型のゲームは現実と仮想で頭が混乱しないようにリアル体系でプレイすることが推奨されている。

ただし例外があり、仕事や健康上の都合などで解除されることがあった。

もちろん、講習と適正訓練、試験を経て解除だけども。

あたしは仕事上必要でかなり早い段階で解除認定を受けていた。

仮想世界で大きくなったり小さくなったりはお手の物です。

だからベッドごろんしながらダイブするとログアウトした時に身体が誤作動おこすんだ。


『確認が取れました。設定解除を行います。身長はどのくらいにしますか』

「ハードに入ってるデータの5番使える?」

『ご利用できます。こちらのアバターをダウンロードします』


ハードに登録してあるアバターが利用できるなら、あまり使ってない背の小さいアバターを使うことにする。

120ない背でショートカットの白い髪、褐色の肌。

琥珀の瞳。

ロリ魔法使いにするか、ロリ剣士にするか、いや、ロリ鍛治師でもいいなぁ。

え、迷う。なににしよ。


『あなたの名前を教えてください』

「フィーアよ」


いつもの名前を答えてビルドをどうするかを考える。魔法使いで行くなら光と闇メインにするか、それなら治癒のほうにいくか。

いや、今回は一人でプレイするつもりなのでパーティよりソロができるビルドを組むべきだ。

ならやはり、剣士?

STR、つまり力極振りにするべきか。


『フィーア様種族を選択してください』


種族とな。

スライドして見てみるとなるほど。

人間、亜人、獣人、魔人がありその中でも色々種類があった。

もちろん種族ごとにステータスが違う。


『種族ごとに初期ステータスが違いますが、さらに取得できるスキルポイントが違うこと、スキル取得ができない場合があります。ご注意ください』

「例えば?」

『尾の長い獣人で取れます「尻尾行動」ですが、尾のない人間には取ることができません』

「当然だわ」


ウンウンと頷いて気になることを聞いて見た。


「その「尻尾行動」ってなにができるの?」

『体のバランスが取りやすくなり、高所からの落下に耐えられたりレベルが上がれば尻尾だけで木からぶら下がれるようになります』


獣人に凄まじく傾いた。


「獣人のデメリットは?」

『魔法や治癒系が使いにくくなります。どの種族になるかにもよりますが、たとえば狼は治癒系の魔法が使えません』

「他の人が使った場合は?」

『それは大丈夫です』


効果はあるけれど、ソロプレイで回復できないのはつらい。いや、まあでもポーションはあるだろうし。


「え、まよう」

『迷う場合は人間を選択することをお勧めします』

「ん?なんで?」

『人間は他の種族に比べてステータスの爆発的な伸びはありませんが、デメリットもありません。例えば獣人はINTが自動的に伸びませんが、人間は伸びないステータスがありません。なので、迷う方はは人間をお薦めしています』

「人間か…他のがいいなぁ。どうしよう」


と呟きながらスッと視線を逸らすと一つのボタンが離れたところにあった。


【オールランダム】


「え、これなにこれなに」

『オールランダムボタンです。種族からステータス、初期スキルまで全てランダムで決まります』

「え、面白そう」

『ご注意ください。全てランダムで決まりますので冒険ができないいわゆる「詰みスキル」になることがあります』

「え、そんなことになることがあるの。その場合どうするの?」

『アカウントリセットはリアル時間で48時間、新規でアカウント取得ができません』

「あ、はい。アカウントをリセットしろとな」


えーどうしよう。

ふふふふふふふ。


『尚、オールランダムは「えい。」オールランダムボタンが使用されました。大体詰みスキルになりますが本当に大丈夫ですか?』

「はい、ダメだったらリセットするんで大丈夫です」

『それではOnlyOneOnlineをお楽しみくださいませ』

「はーぃ、いってきまーす」


そうしてあたしはゲームの中に潜り込んだ。


※※※※



オープニングが終わってあたしは、草原の中にいた。


【チュートリアル 今の身体に慣れよう】


目の前にテロップが流れてあたしは体を揺らした。

周りの背が高いはずなのに、リアル体系の目線が変わらない…のは身体が浮いてるせいか。

上下左右、前後に動いて徐々に身体を馴染ませて行く。


【チュートリアル ステータスの確認をしよう】


下の方に書かれているアナウンスに従って、手をスライドさせてステータスを開け閉じる。

そして今度は「ステータスオープン」と声をかけてステータスを開けた。


名前:フィーア

種族:シルキー(妖精) Lv.1

職業:メイド Lv.1

HP:1/1

MP:15/15

STR:1

VIT:1

AGI:5

DEX:14

INT:8

MND:1

スキル:攻撃無効 物理無効 魔法無効 状態異常無効 重量装備不可 浮遊 生活魔法Lv.1 料理Lv.1 採取Lv.1 調薬Lv.1

称号:天下無敵の大博打


お、自分が妖精さんになってる。

なってる…けど待って?待って?

なんかステータスおかしくない?

まあいい。これは多分レベルアップごとに振り分けしたらいい。

でも、スキルがぱっと見めっちゃいい!

武具のスキルがないけれどこれはやばくない?

スキルの確認してみよう。


【攻撃無効】

パッシブスキル。敵に物理、魔法でダメージを与えることができない


待って待って待って待って待って。

詰みスキルゥゥゥゥ!

ま…まぁいい。生産したらいいんだ生産。

レベルは生産とかで上げたらいいんだ。


【物理無効】

パッシブスキル。敵から物理攻撃を与えられることがない

【魔法無効】

パッシブスキル。敵から魔法攻撃を与えられることがない

【状態異常無効】

パッシブスキル。状態異常にかかることがない

【浮遊】

パッシブスキル。飛ぶことができる。そして地に足がつくことはない。


え、なんてチートスキルオンパレード。

やばない?


【重量装備不可】

パッシブスキル。合計重量20以上の装備不可


物作りも鍛冶屋はできないことが判明。

なにしろ、装備欄は手、頭、服、ズボン、足、カバン、アクセが4の10コだ。

鍛治で使うハンマーとか重量がないと仕事できないってあたし知ってる。

でも待って。あたしなんの装備できるの。


【生活魔法】Lv.1

アクティブスキル。生活魔法が使える。

Lv.1クリーン


【料理】Lv.1

アクティブスキル。料理ができる。

Lv.1焼く料理に補正


【採取】Lv.1

アクティブスキル。採取に補正がかかる。

レベルが上がるごとに補正率アップ。


【採掘】Lv.1

アクティブスキル。採掘に補正がかかる。

レベルが上がるごとに補正率アップ。


【調薬】Lv.1

アクティブスキル。調薬ができる。

Lv.1蒸留水に補正


これであたしの生産方針は決まった。

調薬と料理だな。

というところで称号を見た。


【天下無敵の大博打】

キャラ設定でオールランダムを初めて使用した人に贈られる称号。

一度だけならすぐにキャラの作り直しできますよ。


運営がキャラリセット勧めてくるぅぅぅ!


内心号泣しながら次へスライドすると、どこかのお屋敷に場面が変わった。



【装備をセットしよう】

メニューを開いて装備を見てみる。


手:木の箒

頭:布の三角巾

服:布のワンピース

ズボン:なし

靴:布の靴

アクセ:なし


木の箒をセットすると次の指示が出て来た。


【この部屋の掃除をしよう】


そう…じ?

しょうがないので天井付近からポスポス埃を落として行く。

そういえば掃除スキルないぞ、おい。

浮遊が便利ー。ポスポス埃を落として落としてふと気づいた。

なんか魔法欄が光ってる。

生活魔法ぉぉぉぉ!


「クリーン!」


差した方向一画が綺麗になる。

お前かァァァ!


「クリーン!」


差した方向が一画が綺麗になる。

ところでこのミッション、どこに冒険要素があるんでしょうか。

MPが途中切れたので回復するまで休み、時間をかけてクリーンを連発するとミッションをクリアしました。の文字が流れた。


【チュートリアルをクリアしました。ギルド登録をしましょう】


場所が変わって建物の前に来た。

冒険者登録は物語の始まり。

とりあえずミッションをこなしてレベルを上げよう。

そしてスキルポイントで新しいスキルを取ればまた色々やりやすくなるだろう。

どうにかこうにかして冒険者にさえなればきっと何とかなるはず。


自動的に建物の中に入るとそこは厳つい男たちがたくさん…いなかった。

メイド服を着たウサギ娘。タキシードを来た羊男。

ワンピースを着た花の妖精。

…。とーっても嫌な予感がするんです。

そして窓口に行くとニッコリの受付のお姉さんが微笑んだ。


「いらっしゃいませ、メイドギルドにようこそ。登録ですか?」


冒険者ギルドですらなかったァァァー。


「…はい、お願いします」

「はい。それでは説明します。メイドギルドは、家政婦をご依頼者の元に送るギルドになります。メイドギルドのランクはSが一番上でA〜Fランクでクエストをクリアしていってランクを上げていきます。クエストボードからクエストを受けてランクを上げていってくださいね」


ギルド証をゲットした。

その流れでクエストボードを確認するとどうやら料理の登録やら掃除のクエストがあるようで…。

そしてチュートリアルは終了した。


なお、冒険者ギルドに行ったところ、登録できなかったことをお伝えする。


※※※※


始まりの街。

そこは全ての始まりの街。

チュートリアルがおわれば全ての人がそこにおくられる。

そしてあたしはそこのベンチでひたすら項垂れていた。

攻撃スキルは全て取れない。

当然防御スキルも取れない。

なんなら注目を集めるような補助スキルも取れない。

ということはあれだ。

固定パーティどころか野良パーティすら入れてもらえない。

入れてもらえないということはレベルアップしないし、スキル治癒魔法とることすらできない。

治癒魔法とれたとして、よく考えてみるがいい。

パーティに入れるなら神官のほうがいいだろう。なにしろ回復の幅がそもそも違う。

寄生先が許してくれるかどうか。


てことは、まず所謂街クエをしてレベルを上げるべきか。

しかしFランクの街クエでレベルが上がるほど稼げるかどうか。

詰んだ。

本当に詰んだ。

あたし本当になんのゲームするつもりなんだろ。


「…で、なに「うっひゃぁぁ!」


隣から男の人の声がしてリアルに飛び上がって驚いた。


「あ…ぱ、パリスさんだぁ」


隣にいつものアバターで初心者服を着たパリスさんがいた。

パリスさんは、他のシミュレーションゲームで一緒にグループを組んでる人だ。


「あれ?パリスさんなんであたしがわかったの?」


いつもと違うアバターなのになぜだ。そしてなぜそこにいる。


「いや、偶然みつけて。で、何やらかしたんスか」


フレンド登録が飛んできたので即了承してパーティを組む。

パーティ会話にするためだ。

全方向の会話なぞ不用心にも程がある。


『んー…まあとりあえずこれを見て』


パーティメンバーにステータスを見せる、にチェックを入れてパリスさんにステータスをスライドする。


「おい、パーティ飛ばせ」


低い声がして身体に震えが走る。

口が渇いてきた。

頭が固定されそして強制的に向かされる。


「クリオネットさん…こんにちわ」

「はよしろ」

「ウィス」


クリオネットさんにパーティを飛ばすと秒でインがくる。そしてフレンド登録。

ステータスを見ていたパリスさんに指だけで寄越せと指示。


『これはヤバい』


苦笑してパリスがスライドして渡した。

クリオネットさんもシミュレーションで同じグループというか、あたしがリーダーで彼がサブリーダーというか。

ほぼ彼がグループを運営している。

ので。

あたしはこのゲームをすることを彼にバレないように内緒で始めたはずなのだ。

別ゲー始めるなんて怒られる怒られる絶対怒られる。


『パリスさんもう出れんの?』

『あ、私は大丈夫ですよ』

『んじゃ、行くか』

『待ってどこに』


パリスさんとクリオネットさんがさ、行くか。と踵を返した。のを止めた。


『レベル上げでしょう』

「ちゃー。ここ?ここでいい?フィーアさんパーティください」


女の子が走り込んできてあたしに抱きつく。

メロディさんだ。女の子だけどこれまたシミュレーションの同じグループの子だ。

パーティと共にフレンド登録も送る。


『すみませんあの、あたしが入ると寄生になるんですけど』

『フィーアさん寄生?寄生なの⁈』

『いや今更じゃないすか』

『あんたが寄生だろうがなんだろうが、うちのボスなんだから堂々といりゃいいんだよ』


最後のクリオネットさんの言葉にメロディさんもパリスさんもそうそう、と頷く。

いや、それじゃダメだと思うんです。

パーティ枠一つ潰すことになるんだぜ?


「きました!」


振り返ると数人の男女がニコニコと集まってきていた。待て待て。


「え、何でこの場所が皆わかるの」


そもそも、このゲームやるって言ってた?君ら。

グループを作ってたシミュレーションゲーム。それのメンバーたちが集まっていた。


ポンとパリスさんがあたしの肩を叩く。


「あのねフィーアさん。あんたのハード、フレンド登録してるからどこにいるかわかるんです。皆」

「そうそう。集まってるところに行けばいいんだよね」


全体チャットだろうが何だろうが構わない。


「嘘でしょォォォォォ!」


大絶叫が響き渡ったのだった。

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