表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/21

第二章:パズルのピース

-1-


「あ、男子も部活終わったんだ?」

放課後部活が終わって帰宅しようと昇降口を出たところで

声をかけられる。


美月だ。

数人の女子たちと話しこんでいる中昇降口から出てきた俺に気付き

美月が俺に声をかけたのだ。


入学してから1週間。

午後の授業も始まり部活も少しずつ慣れ始めた。

あとは…。


「お、美月じゃん。今日は女子上がるの早かったな?」

「たまたまよ。あら?」

俺の背後に目をやる。


「ん?どうした?」

美月につられて後ろを振り向く。


昇降口から出てきたクラスメイトを見つける。


「紫苑じゃん。」

「紫苑君!」

美月が声をかける。


すると紫苑は目を丸くして驚いた顔を作って見せた。


「あれ…美月さんと日向…こんなところでどうしたの?」

「部活が終わってみんなでおしゃべりしてたの。

紫苑君こそこんな時間まで何してたの?」


「僕?

図書室で本借りて読んでたんだ。」

「本?へぇ…読書が趣味なの?」

「うん。特にファンタジー小説!

ここの図書室は本の数が多いね。

当分本には困らなくて済みそうだよ。」


「あら、そんなに本が好きなの?

なら中等部の本に飽きたら大学の図書館の本も借りられるのよ?

これで卒業まで本には困らないわね」

そういいながら美月はニコリと微笑んで見せた。


その笑顔を目を細めて受け止める紫苑。


「そういえば紫苑って部活には入らないの?」

二人の間に割ってはいる。


「え?ああ…今のところ帰宅部かなぁ…

日向と美月さんはバスケ部?」


「そ。と言ってもまだ入学したばかりだから借り入部扱いで

球拾いばかりだけどな。」

「紫苑君なら文芸部とかどう?」

「うーん…この前顔出したら女子ばかりでなんとなく入りにくくて…

文芸部も男子と女子分けたら男子部員の数も増えると思うのにね。」


「あら女子がたくさんいた方が花があっていいじゃない?」

「そうだよ、ハーレム状態でいいじゃないか?」

すると紫苑は少し顔を赤らめて見せる。

意外にシャイなんだな。


「日向、おまたせ…って何やってんだ?」

昇降口の中から男子たちがぞろぞろと湧き出てきた。

男子バスケ部の生徒たちだ。


「あ!日ノ出、早く帰ろうぜ。俺腹減ったよ」

そういいながらおなかをさするマネをしてみせる。


「悪い悪い。先輩と話し込んじゃってさ。」

「あ、日向君また明日ね。」

美月だ。

「また明日」

紫苑も手を振る代わりにニコリと微笑む。


「おう。」

そう言って手を振ると背を向け日ノ出たちと駅へと向かった。


「あれ…」

「ん?どうした日ノ出…」


「いやさぁ…今の女子…とよく似た生徒がうちのクラスにいたから…」

「え?」

「うーん…良く分らない。ま、いっか。」


「?」


-2-


「あれ、日向君」

応船駅に出て丁度日ノ出と分かれたところで声をかけられた。


「あ、羽鳥さん」

大勢の人たちが行きかう中

金髪緑眼の白人がにこにこと微笑みながら立っていた。

両手には相変らずの大荷物。


「部活の帰り?」

「はい。羽鳥さんは?」

「買い物の帰りだよ。これから金倉へ帰るところ。

日向君の中等部の制服姿初めてみるけど似合ってるね」

「あ、有難うございます。」

「どう?学校は慣れた?」

「はい…えーと…まぁまぁ…ですかね。

あ!そうだ!!羽鳥さんにお話したい事があったんです」

「ん?なに?」

「あの…蠍座によく似た人を見つけたんです。」

「え?」

羽鳥さんの目がキラリと光る。


「中等部の新しいクラスの中に外部生として入ってきた男子生徒がいるんですけど

そいつが蠍座そっくりで…」

「ああ…なるほど…。それで、向こうはどんな感じだった?」

「俺の顔を見てもなんの反応も示さないというか…まだ覚醒してないっぽかったです。

もしかしたら…蠍座じゃない…っていうか…

人違いかもしれないけど…でも凄く似てて…」

「そう…でもまぁ…学園に入ったのなら覚醒も時間の問題だね。

何しろ十二星座じゃそれも必然だろう。」

「………」

「色々と大変だと思うけど何か動きがあったら教えてね」

「はい…」

そう言いつつなんとなく白人から軽く視線を逸らして見せた。


相変らず多くの人が行きかう駅構内。


俺は羽鳥さんと別れた後、一人佇みながら暫く人の波の中にいた。

その間に脳裏に浮かぶは、

あの夢の景色…。


また電車の中、夜の街が流れる窓を眺めながら

羽鳥翼は誰にも聞こえないくらい小さな声で

ボソリとつぶやいていた。


「今度は蠍、か。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ