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five days time travel  作者: たまねぎねぎお
12/16

7月16日(4回目)


 目覚ましの音で目が覚めた。ベッドの上でゴロゴロとしながら手探りで枕元にあるスマホを探す。スマホを手に取り、画面を見ると一気に意識が覚醒した。7時40分だったのだ。完全なる寝坊である。結衣からは何回かラインと電話がきていた。


『おはよ。昨日一緒に学校行くって言ってたけど、何時に集まる?(7:03)』

『もしかしてまだ寝てる? もう7時20分だよ(7:20)』

『ごめん! これ以上待つと私も遅刻しちゃうから先行くね。ほんとごめん!(7:35)』


 結衣はかなりギリギリまで俺のことを待っててくれていたらしい。彼女が電話までしてくれていたというのに、俺はそんなこと全く気が付かずに今の今まで爆睡していたというわけだ。本当に申し訳ない。


『今起きました。電話までしてくれたのに起きなくてごめんなさい』


 俺は結衣に謝罪のラインを送った。少しでも誠意が伝わるように敬語を使っておいた。彼女に返信したあと、俺は急いで制服に着替えて洗面所へと向かった。冷たい水で顔を洗い、鏡を見て寝ぐせを直す。本当だったら軽く髪の毛をセットしたいのだが、あいにく俺には髪の毛をセットする技術はなかった。


「行ってきまーす」

 リビングにいる母親に声をかけ、俺は履きすぎて少しぼろくなってしまったスニーカ―に足を突っ込んで家を飛び出した。


 今から走って行けばギリギリ間に合うだろうか。もう少し起きるのが遅かったら完全に諦めて歩いて行ったのだが、今ならわんちゃん間に合う可能性もある。このような間に合うか間に合わないか分からないギリギリの時間がいちばん焦るような気がするのは俺だけだろうか。


 結衣からの返信はない。もしかして俺が寝坊したことに怒って返信していないのだろうか。いや優しい結衣に限ってそんなことはないだろう。単に気付いていないだけだろう。俺は結局、走るとも歩きとも言えない微妙な速度の早歩きで学校へと向かった。


 学校に向かいながら、俺はポケットに入っていたスマホを取り出した。写真フォルダの中には昨日撮ったプリクラがある。美鈴さんが送ってくれたのだ。俺は今までプリクラを撮ったことがなかったので知らなかったのだが、プリクラの写真をスマホに入れたかったらプリクラ会員にならなければならないらしい。正直、俺は今後の人生でもう一度プリクラを撮ることがあるか分からないので、会員になるのには少し抵抗があったが、美鈴さんは既に会員だったらしく俺たちが撮ったプリクラをライングループに送ってくれた。さすが現役女子高生である。


 プリクラに映っている俺はこれでもかというほどに美化されている。肌はなんかすごい透明感があるし、目も大きくなっている。正直、今まではプリクラを撮りに行く女子たちの心が全く理解できなかった。どうして写真を撮るためだけにお金を払わなければならないのか、それだったらスマホで撮ればいいじゃないかと思っていた。だが、こうして実際に撮ってみると、この写真には400円の価値があるように思える。確かに、たった400円でこれだけ可愛くなれるならば女子たちはみんな撮りたがるだろう。


 基本的にはすべて4人で写真を撮ったが、美鈴さんの好意(?)で俺は一枚だけ結衣と2ショットを撮った。私たちは3年組として一枚撮るから、結衣ちゃんたちも2年組として一枚撮ろうよ、と上手い具合に結衣を納得させたのだ。4人で撮るときは特に何も思わなかったのに、結衣と2ショットとなると途端にめちゃくちゃ緊張した。ただでさえ写真を撮るのは苦手なのに、尚更笑顔がぎこちなくなってしまう。だが、そんな俺のぎこちない笑顔もプリクラの手にかかればあまり気にならなくなっていた。プリクラ様万歳である。俺はその2ショット写真を眺めながら一人で気持ち悪くニヤニヤする。


 運動不足なせいか、少し早歩きをしただけで軽く息が上がっている。我ながら情けない。そのとき、後ろから救急車のサイレンが聞こえた。俺の横を通り過ぎ、目の前の交差点を右に曲がっていく。すると、その救急車のサイレンが急に止まった。どうやらすぐそこが目的地だったらしい。俺も学校へ行くためにはその交差点を右に曲がる必要がある。


 救急車が赤いサイレンを回しながら道路に止まっている。周りには少しだけ野次馬らしき人がいた。野次馬の横を通り過ぎながら、横目で軽く救急車が止まっている場所を見た。   

そこには血まみれになった結衣の姿があった。



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