斎藤勇太
ここは日本冒険者学校中等部2年生の教室。この教室には、27人の生徒がいる。ここにいる全員がすでにD級冒険者以上の実力を持っている。
ガラガラガラ
担任の先生が教室に入って来た。そこまではいつも通りなのだが、今日は先生の後ろにもう1人いたのだ。
ガヤガヤガヤ、ガヤガヤガヤ
生徒たちが騒ぎ出した。
「はい、みんな静かに!えー、みんな気付いてると思うが、今日からこの学校に通う事になった転校生だ。さあ、自己紹介よろしく」
「はい」
その転校生は黒板に名前をスラスラと書く。
「えー、皆さんどうもはじめまして。今日からこの学校に通う事になりました、斎藤勇太です。これからの1年半よろしくお願いします」
ひそひそひそ、ひそひそひそ
生徒達がざわついている。それもそのはず、日本冒険者学校に転校生が来るなんて前代未聞だからだ。日本冒険者学校中等部は推薦制かスカウト制のみ。転校制度があるなんて聞いたことがない。生徒達はそう思いこの状況に混乱していた。
「こら、静かに!混乱するのも分かるが、とりあえず落ち着いてくれ。先生も昨日この話を聞いて混乱しているんだがね。ここにいる斎藤勇太くんは実は中学1年生の頃からスカウトを受けていたんだ。でも、何故かこの子はそれを拒否してね、なのに夏休みの終わりになって急に連絡して来たそうだ。それで、スカウトされてた事もあり、今回はこういう形になったのだ。それじゃあ、勇太君の席は1番後ろの空いてる所だから。分からないことがあったら周りの子に聞くと良いよ。」
「はい」
「それじゃあ、ホームルームはこれでおしまい」
そう言って、先生は教室を出て行った。勇太はすぐに自分の席に着こうとしたが、ひとつ前の席の大柄で短髪な男の子に止められてしまった。
「おい、前に進めないだろ。そこどけよ」
「おいおい、転校生が何偉そうなこと言ってんだよ。スカウトされたかどうか知らねーけどよ、ここでは俺が先輩なんだ。ちょうどいい少し力試しをしてやろう。これでも俺は、C級冒険者なんだぜ」
「はあ、めんどくさいな。おい、そこの飴舐めてる人。あんたの命令だろ、こんなくだらないことやめさせろよ」
と勇太は、その大柄な男の後ろに座っているちょうど勇太の隣の席のいる制服を着崩し、坊主頭に剃り込みが入っている男に声をかけた。
「あはは、バレちゃったか。大塚もう座っていいよ。いやー、ごめんごめんちょっと試してみたかったんだ。僕と同じスカウトされた人をね」
大塚と言われた男はすぐに自分の席に戻り、先程の威勢とは打って変わって読書を始めた。
「お前、気持ち悪いぞ。自分より弱いやつをこき使って何が楽しいんだ?こんな奴がスカウトされるとはこの学校は大したことがないのか?」
「言ってくれるじゃん。まあいいや、僕の名前は遠藤俊。ちなみにB級冒険者だよ。よろしくね、ゆうちん」
「ああ、勝手に言っとけ。俺はお前みたいなやつと仲良くなりたいとは思わない」
そう言って勇太は自分の席についた。
「なんだよつれないなー。初めて対等に話せる友達ができると思ったのにー。このクラスのみんな僕のこと怖がるんだよねー。それって僕が強いからかな?」
そう言って、俊はクラス中に睨みを利かせる。
「お前、本当につまらないぞ。このクラスのみんなが怖がってるのはお前の強さじゃなくてその気持ち悪い性格の事なんじゃないか?クラスを支配するような学校生活は楽しいか?」
「言ってくれるねーゆうちん。ちょっとカチンと来ちゃった」
そう言うと、俊は徐に立ち上がり、勇太の胸ぐらを掴んだ。
「あんま舐めたこと言ってると、君の冒険者生命終わらせちゃうよ?」
「出来るもんならな」
その2人のピリピリした空気感に他の生徒は教室の空気が、どっと重くなったように感じた。今にも喧嘩が始まろうとしたその時
ガラガラガラ
「はーい、それでは授業始めますよー。ほらそこ、席につきなさい」
そう言われ、俊は自分の席についた。そして、席についた後、俊は自分の手が手汗でビショビショになっている事に気づいた。俊は自分では気づかないうちに勇太相手にビビっていたようだ。
一方勇太は、拓也のことを考えていた。なぜここまで勇太は拓也に思い入れがあるのかというと、小さい頃2人が野良の魔物に襲われた時、拓也はステータスがないにもかかわらずその魔物に立ち向かったのだ。勇太はその時ただびびって腰を抜かしていただけだったのにもかかわらず。その日から勇太にとって拓也はヒーローであり、目標とするところであった。
だが、ステータスが与えられた時勇太がユニークスキルを3つ受け取ったにもかかわらず、拓也が教えてくれたステータスには鑑定のスキルしかなかった。
しかし、勇太は拓也が何か隠しているに違いないと考え一緒の中学校に入り、スキルを探ろうとしていた。そして、拓也が冒険者資格を取ったことを知って勇太は、やはり拓也はスキルを隠している、それもとびきりに強いやつを。それを確信して、勇太は本当に行きたかった日本冒険者学校に転校し、拓也も日本冒険者学校を目指してくれると考えたのだった。
それを知らないレンは、裏切られたと感じ日本冒険者学校に行くことをより強く意識するようになった。
しかし、拓也はまだ日本冒険者学校に行こうとはちっとも考えていないのであった。
これからは、ちょくちょく勇太側の話も出していきます。